食物アレルギーの5歳息子とバイキングへ→食べられるデザートがない…と思ったら ホテルの対応に感動「優しさに涙が」「次も行きたくなる」

谷町 邦子 谷町 邦子

ホテルのバイキング(ブッフェ)で子どもへのアレルギー対応に感動したというツイッターへの投稿が話題に。食材が限られるために外食は難しい…そんななか奮闘する母親の思いを伺いました。

7歳と5歳の兄弟を子育て中のあずさ兎(@azusausagi)さんは、長野県に家族旅行へ。食物アレルギーがあり、ブッフェ台では自由に選べない次男のために対応プレートを事前に注文して家族全員で満喫。

食事を終えて、長男がデザートを楽しんでいたところで、次男用がないことに気づいたあずさ兎さん。フルーツなら食べられるかも…と、席を立とうとすると、ホテルのスタッフが「今日は楽にしてください」と、フルーツや和菓子、ゼリーなど次男が食べられるものを盛り付けたプレートを持って来てくれたのです。

「泣いた」というほど心動かされたあずさ兎さん。次男にもできるだけ食事を楽しんでもらいたいという願いや、ホテル側の心づかいに助けられほっとした思いが投稿から伝わってきました。

そんな体験談に、「人の心に寄り添える対応ができる方がいらっしゃるのですね 素晴らしい」「お店の機転が利くというか親切…優しさに涙が 何より美味しそうに食べてる雰囲気で更に追加涙」「今日は楽にしてくださいの言葉がセンスあるわ」など、ホテル側のあずさ兎さんや次男に寄り添った対応への感動の声が多数寄せられていました。

それと同時に、「旅館によって責任持てませんのでと嫌な顔されたりめんどくさがられたり嫌な思いしかしたことありません。星や口コミのいい施設でもそんな対応かと残念だった時もあります」と宿泊施設によって、対応が全く異なることも指摘されました。

また、「私の娘もたまごボーロ2粒でアナフィラキシーになってしまいそれから卵がダメです。外食など気を遣いますが お店側からのその一言、対応はとても感激しますよね。良いところに巡り会えましたね」「私も息子2人ともアレルギーなので気持ち分かります。旅先で対応してくれるとまた次も行きたくなりますよね」など、同じようにアレルギーの子どもを持つ人からの共感のコメントも多くありました。

外食にはリスクが…それでも「食事の楽しさ」を知ってほしい

次男のアレルゲン(アレルギー原因物質)は乳製品、卵、小麦。特に乳・卵は少量でも摂取すると命に関わるショック症状が起こるため、もしもの時のためのアドレナリン注射を常備しているあずさ兎さん。心掛けていること、食品や飲食店に求めたいことなどをたずねました。

――ホテルでデザートのプレートが運ばれてきた時の、お子さんの様子は?

「まず、食べられることに驚いていました。普段の外食で『自分で選んで好きなものを食べる』ということは不可能なので。嬉しそうに迷いながら食べていました」

――家庭、飲食店、それぞれでの食事で、食物アレルギーに対して、どのように気を付けていますか。

「外食ではみんなで同じものが食べられないことが多いので、家庭では、なるべく家族みんなで食べられるものを手作りしています。

アレルギー対応ができないという情報を公開されているお店、コミュニケーションを取った上で安心できないと私が判断したお店は、利用を見合わせることが多いです。家族以外での食事会やイベントなど、お店を変更できない場合は、食品の持ち込みが可能かどうかを相談しています」

――外食の度に、大変気を使われているのですね。

「外食自体を諦める、という選択が1番安全です。とはいえ、親のわたしにとっては『子育て』であり、次男本人にとっては『人生』。アレルギーがあるからこそ、『食事って楽しい!』と思える時間を作ることを心がけています。

アレルギーに限らず、社会生活を送るうえで、完全にリスクを排除した生活をすることは困難です。できる限りリスクへの対策をしながらも、『自分の身を守ること』を教えていきたいと思っています。本人だけでなく、他の家族が我慢することで解決しないことも気をつけています。長く続く『暮らし』ですから」

――お子さんは自身のアレルギーについてどのように受けとめていますか。

「本人はアレルギーを持っていることについて、重大な危険があることを理解していて、今のところは『そういうもの』として受け入れているようです」

――どんな食べ物が好きですか。

「好きな食べ物は、豆乳のアイスクリームです。普段はどうしても和食、和菓子が中心になってしまうので、乳製品や卵を使っていないデザートの存在は本当に貴重でありがたいです」

――食物アレルギーがあっても食事が楽しめるよう、食品や飲食店の配慮にどのようなものがあればいいと思いますか。

「個別包装された食品については、食品表示法で定められている『食物アレルギー表示』のおかげで、安全な選択ができるようになりました。

飲食店の場合、『アレルギー対応』が何を指すのか、食物アレルギーについて国で定められている基準や義務がありません。『アレルギー表示をしている』レベルから、『個別にヒアリングしてアレルゲンを完全に除去した食事の提供している』レベルまで、全て『アレルギー対応』と言えてしまうのです。外食の場合、食品と違って『アレルギー表示』すら、だれでも理解できるよう定められた表示方法がなく、実際に当事者ですら誤解してしまいそうなものもありました」

――そんな状況で、お店にお願いしたいことは?

「とはいえ、個別包装食品のように、正確なアレルギー表示ができることは安全面で理想ですが、飲食店に正確な情報提供を求めるのは現実的ではありません。

なので、飲食店の方にお願いしたいのは、分からないことや曖昧なことがあれば、『分からない』と言っていただくこと、対応が難しい場合は断っていただくことです。これなら食べられるかも、と提案してくださる気持ちはとても嬉しいですが、誤食事故が起きてしまったら取り返しがつきません」

――食物アレルギーのある人が外食をしようにも、かなり厳しい状況なんですね。

「アレルギーがある人の安全だけでなく、お店を守る意味でも『アレルギー対応』という言葉の扱いや、表示の正確さについて国の基準があれば、利用する人も提供する人も安心できるようになるのではないでしょうか。具体的には、アレルギー対応可能店の認定や、アレルギー対応管理者のような資格があれば、提供する側にとってもされる側にとってもメリットがあるのでは、と思っています」

 ◇  ◇

家族みんなで食べられる食事を作ったり、飲食店とコミュニケーションをとったり、あずさ兎さんは次男に食物アレルギーがあっても食事が楽しめるよう、日々心を砕いているようです。同時に外食に関しては、「完全にリスクを排除することはできない」「飲食店に正確な情報提供を求めるのは現実的ではない」と折り合いをつけようともしています。

とはいえ、外食の「アレルギー対応」「アレルギー表示」などが一定の基準を持ったものであれば、当事者やあずさ兎さんのような家族が、もう少し安心して外食ができるようになるのではないかと思いました。

厚生労働省の発表によると、平成17年の時点ではアレルギーは3人に1人と言われていましたが、平成23年時の調査結果によると、食物アレルギー・花粉などを含むと「我が国全人口の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患に罹患を示している」(出典:厚生労働省の「リウマチ・アレルギー対策委員会 報告書」より)と増加傾向です。そんな身近な問題である状況を考えると、より多くの人が安心して食事を楽しむためにも、何かしらの対策が打たれること、また飲食店の理解も願わずにはいられません。

■あずさ兎(@azusausagi)さんのTwitterアカウント https://twitter.com/azusausagi
■あずさ兎さんのnote https://note.com/noteusagi/
■消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/
■リウマチ・アレルギー対策委員会報告書 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001066090.pdf

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