「企業努力に涙出る」…卵を使わない「ほぼタマゴ」開発に反響、アレルギーの人らから歓迎の声 開発担当者を取材

小森 有喜 小森 有喜

「企業努力に涙がでるわ…!ありがとうキユーピー…!」卵アレルギーの娘のためにと、卵を使わず植物由来の成分で液卵を再現した商品を購入し、その完成度の高さに感激するツイートが反響を呼んでいます。販売するキユーピー(東京)の開発者2人もツイートを目にして喜んだといい、社内でも話題になっているそう。「どうすれば卵のふわとろ感、火の通り方を再現できるか」。成功までの道のりは平たんではなく、幾度にも及ぶ試作の末に完成まで2年を要したそうです。 

昔食べた「湯葉丼」にインスピレーション

商品は「HOBOTAMA」。スクランブルエッグ風と液卵風の2種類があります。スクランブルエッグを担当したのは、同社研究開発本部の梶聡美さん。2019年夏から研究を始めました。開発の過程でふと思い出したのが、以前京都の飲食店で食べた「湯葉丼」。丼の上に卵黄がのっており、湯葉と一緒に口に運んだ時の食感がスクランブルエッグに近かったのです。

そこで大豆を原材料にし、豆乳に油を混ぜることで「乳化」というマヨネーズと同じ現象を起こすアイデアを思いつきました。この乳化の具合を調整しながら固体化させ、スクランブルエッグに近づけようというのです。

「半熟ふわとろ」を目指し…試作139回

しかしここからが大変でした。ちょうどよい「半熟のふわとろ感」を再現することが予想以上に難しく、長年培った卵加工品の技術を生かしても、柔らかすぎたり、パサパサになりすぎたり…。139回目の試作でようやく納得のいく食感が得られたといい、その瞬間は「信じられないぐらい嬉しかった」。研究開始から苦節1年半、販売までの準備期間も含めると計2年かかりました。

より幅広いメニューで使ってもらうためにと、開発が始まったのが液卵風の商品。こちらは大豆ではなく、アーモンドパウダーを原料としました。担当した同社研究開発本部の磯部和宏さんによると、卵が持つ「加熱したら固まる力」を実現させるのに苦心したとか。火を通す前はサラサラと流れるような液体なのに、少し加熱するだけでほどよく固まる。普段卵焼きを作るときに何気なく眺めているこの光景も、他の材料で再現するのは容易ではなかったようです。こちらも試行錯誤の末、アーモンドのタンパク質と、液体の物をゼリー状に固める作用がある「ゲル化剤」を活用することで、ほどよく固まるようにすることができました。

話題になっているツイートには「俺は飲食業を長くやってるんやけど、味や食感だけでなく火の入り方もほぼ卵」とあります。この一言がうれしかった、と磯部さん。「火の入り方には本当にこだわったので、飲食業の方に認めていただけたのが光栄でした」

同社は国内で流通している鶏卵の約1割を扱い、メーカーとしてのシェアはトップ。卵に精通している、と自負する同社ですらこれだけ開発に時間を要したということで「なかなか真似できないと思います」と2人とも胸を張ります。

 チーズ不使用のシーザーサラダドレッシングも

HOBOTAMAは幼稚園で卵アレルギーの子どものための給食として採用されたり、サルモネラへの対策として病院食で導入されたりしています。「卵アレルギーの方にも口にしてもらえる。家族で食卓を囲むとき、同じものを口にして喜んでもらえるのはうれしい」と2人は話します。同社はこうした植物由来の食品開発に力を入れており、今月新たなブランド「GREEN KEWPIE」を立ち上げました。第1弾商品として、チーズの代わりに豆乳やみそを使用したシーザーサラダドレッシングなどを16日に発売するそうです。今後もどんな代替原材料の食品が生み出されるのか楽しみですね。

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