これって痴漢?と悩む人へ「手が3回触れたら…それは痴漢」 鉄道会社が学生に向けた初企画…電車でいったいどうすればいいの?

宮前 晶子 宮前 晶子

電車内や駅構内での痴漢行為は季節を問わず、1年中。特に「泣き寝入り」を見越して試験に遅れないようする学生を狙う痴漢もいるなど、被害の声を挙げる人は、実際の被害のごく一部だと考えられています。

福岡県警察が令和3年2月・3月中にインターネット上でおこなったアンケート「痴漢被害の実態等に関するアンケート」では(総数3038人(女性2079人、男性960人)から回答、うち高校生・大学生は計1981人)、女性の35.1%、男性の4.8%が痴漢の被害に。痴漢被害者のうち、6割以上が列車内で被害に。列車内の痴漢被害後に「誰にも相談していない」は42.7%、列車内の痴漢被害後「警察に届け出た」はたったの7.1%なのです(福岡県警察ホームページより)

それほどまでに、知られざる痴漢被害が多いのが現状。鉄道会社側も痴漢行為の撲滅をめざし、関西の鉄道各社では痴漢行為への注意喚起ポスターを車内や駅構内に貼り出しています。そんななか、さらなる対策として全国的にも珍しい「痴漢犯罪防犯講座 講演会」が、近鉄グループホールディングス株式会社(以下近鉄で表記)の提供で近畿大学附属中学校(以下近大附中で表記)の1年生を対象に行われました。

今回は、その講演のなかから生徒たちに伝えられた「痴漢対策」を紹介します。

未然に防ぐためにできることは? 被害にあったときは?

痴漢抑止バッジを身につけることで痴漢を未然に防ぐ活動を行っている一般社団法人痴漢抑止活動センターの代表理事松永弥生さんは、「痴漢対策では“痴漢に遭わないように気をつけなさい。痴漢に遭ったら、逃げなさい”など具体性に乏しいものが多いです」。そこで未然に防ぐための対策、また被害にあった後はどのような行動を取るべきなのか松永さんに教えてもらいました。

“ドア付近や連結部分・先頭車両の端には近づかないようにしましょう”

「電車内は痴漢が好む場所があります。ドア付近に痴漢が多いのは、人が滞留して混雑している・駅に着いた時に逃げやすいからです。連続して開かない側のドア横の座席際や車両連結部分、先頭車両の運転室の後ろなどは、隅に被害者を追いつめることが可能です。周囲の乗客からは死角になることも多く、痴漢行為がバレにくいとされています。特に、この場所はひどい被害が多くなります」

”背筋を伸ばす、目線をしっかり定めるなど、常に堂々としましょう”

「姿勢や表情など自信のない様子をしていると、狙われやすい傾向にあります。加害者は、「痴漢行為を働いても反抗しないだろう」「痴漢です!と声をあげないだろう」と思われる人に狙いをつけます。“痴漢抑止バッジをバッグなどに付けることも有効です。痴漢は被害を受けても我慢しそうな相手を選びますが、このバッジを付けることで「痴漢を許さない」という強い意志を表明している、と捉えます。実際、埼玉県の高校の女子生徒70名に、このバッジを付けて登校してもらったところ、94.3%が「効果があった」とアンケートに答えています」

初めて遭遇したときは「これ、痴漢なのかわからない、被害妄想かも」と戸惑ってしまうかもしれません。そんなときの基準はこちらです。

“3回触れてきたら、それは痴漢だと思いましょう”

「混んでいる電車であれば胸や下半身などに偶然触れてしまうことがあるかもしれません。手が触れた場合、偶然なのかわざとなのか判別に苦しみますが、良識を持っている人であれば、今の時代だからこそ痴漢だと勘違いされないように、触れないように対処するはずです。それをそのままにする、あえて二度、三度と当たってくる手や指があったら、それは偶然ではありません。意図があると考えて良いでしょう」

また、盗撮被害の増加も増加しています。からだに触れずとも、不自然な行動に気づいたら、すぐにその場を離れ、通報するなど行動を起こすことが大事です。その画像がどのように拡散されるか、デジタルタトゥーになりうる可能性を忘れてはいけません。

痴漢にあったときの対策は?

痴漢被害にあった場合は、「痴漢かな?」と不安な時もあると思いますが、なるべく早い対処が望ましいです。怖くて、何もできずにいると、加害がエスカレートすることもあります。そんなときに松永さんが伝える対策は…。

「いちばん良いのは、痴漢から離れることですが、満員電車で身動きが取れないことも。
そのような場合は
・手で振り払う
・舌打ちをする
・相手をにらみつける
が有効です。
また、声を出しづらいかもしれませんが、周りの乗客に伝えるように「手があたってますよ」と言うのも良いでしょう」

スマホでできる対策もあります

まいどなニュースでは、以前、電車内での痴漢対策を『「スマホで前髪直すふり」でチカン撃退 アプリでSOS、逮捕も…スマホでの痴漢対策「使える」と話題』の記事で紹介しましたが、警視庁の防犯アプリ「Digi Police」(デジポリス)の活用もおすすめです。同アプリには、痴漢撃退機能もあり、画面表示や音声で助けを求めることができます。実際に、痴漢に遭った女性が、防犯アプリで周囲の乗客に被害を訴え、犯人を取り押さえた事例も報告されています。

また、電車内などで痴漢被害にあって困っている人がいたら、声を出さなくても被害者にスマホの画面を見せることで助けが必要か確認できるようになっています。

初めての電車通学で痴漢被害に遭わないように

ポスターの掲出や、車内防犯カメラの全車両設置の推進や乗務員と通話ができる車内通報装置の設置拡大に取り組み、痴漢行為の撲滅をめざしている近鉄。「ポスターなどの掲出はターゲットは広範囲ですが、一瞬の啓発活動。講座なら、男女問わず、対象となりやすい方にダイレクトに痴漢被害の抑制につながる取組みを訴えることができます。受講することで快適で安心できる通学時間を過ごして欲しいと考えました」と、同社の担当者の思いから今回の企画が実現。

近大附中の志船教頭補佐も「通学中、痴漢にあったと訴える生徒は毎年います。学校として被害に遭う前に対策を取れないかと検討してきたなかで、1年生は4月から電車通学を始めたばかりです。電車利用に慣れないことも多々あります。初めての電車通学で痴漢への不安を失くすために」との思いを語ってくれました。

実際、講座に参加した生徒からは、「痴漢にあった際の対策が具体的でわかりやすかった」「対策は複数あるのだなと思った」「悪いのは加害者。これからは声を出したい」といった声があり、痴漢被害に対して意識に変化があったそう。内容を動画録画し、希望のクラスは学年を問わず、視聴可能にしたとのことです。

これまでも痴漢抑止活動として学校などに出向き、講座をおこなってきた松永さんですが、JR西日本や近鉄と連携しての講座提供は初めてだったそうで、「今後、全国各地の他の鉄道会社にもこのような講座開催の動きが広がって欲しい」と、学校、鉄道会社とタッグを組んでの啓発活動に期待を寄せます。

「痴漢は誰でも遭遇しうる身近な犯罪」と松永さんが訴えるように…決して泣き寝入りしてはいけません。

自分自身が痴漢被害に遭わないように気をつけることに加え、痴漢被害を見かけたら、被害者を守るための行動を起こすことも心がけてください。被害に遭っている人に、友達のふりをして声をかけるのもおすすめです。ひとりではなく、大勢で、痴漢という犯罪を阻止しましょう。

■一般社団法人痴漢抑止活動センター Twitter @scbaction
■学生に知ってほしい痴漢の真実特設サイトhttps://scbaction.org/contents_229.html
■近鉄グループホールディングス株式会社新型一般車両導入プレスリリース
https://www.kintetsu.co.jp/all_news/news_info/sinngatasyaryou.pdf
■警視庁デジポリスhttps://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/tokushu/furikome/digipolice.html

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