ハート形♡フラミンゴの「奇跡の一枚」 2カ月も狙い続けた、渾身ショットの裏側を聞いた

山陰中央新報社 山陰中央新報社

 4月、松江フォーゲルパーク(島根県松江市)がSNSに上げた1枚の写真に1万件近い「いいね」がついた。向き合った2羽のフラミンゴが首で「ハートマーク」をつくった“奇跡の1枚”。フォーゲルパークがバズったのは、初めてではない。これまでも鏡餅に見立てたアヒルやマシンガンのような鳴き声をするハシビロコウの写真や動画がSNSを賑わせた。「またか」と思ったが、ツイートには「ようやく撮れました」と。狙っているのは明らかだが、この1枚に至るには人知れぬ苦労があったのかもしれない。現地に向かい、担当者を直撃した。

 

 松江フォーゲルパークは32万平方メートルの敷地に、約90種類、400羽の鳥が飼育されている。フラミンゴは全部で10羽。入り口の建物から長いエスカレーターで移動した場所にある温室の中に、9羽が群れで過ごす。体長120~140㎝の大型で、ピンクがかった白い羽の「オオフラミンゴ」が6羽、同じく大型で鮮やかな紅色の羽を持つ「ベニイロフラミンゴ」が2羽、小型で生息数が最も多い「コフラミンゴ」が1羽。写真に写っていた2羽はどちらもオオフラミンゴだ。元々は、別の温室でオオフラミンゴ1羽だけを個室で飼育しており、昨年9月にまとめて9羽が仲間入りした。

 

 現場で話を聞いたのは、ツイッターの管理者で、例の写真を投稿した広報の山田篤さん(42)。早速、写真について聞くと「実はバレンタインデーの時にハート形で投稿したいなと思っていたのですが…」。予想外の答えが返ってきた。首の形が特徴的なフラミンゴ。1羽では無理だが、数が増えたことで「ハート」が作れると、2月14日のバレンタインデーを前に狙っていたようだ。しかし、結局間に合わず、当日は単体のフラミンゴの写真と反転させたものを合わせた”なんちゃってハート形“でごまかした。

 2カ月も前から狙っていたとは。素人には、2羽がエサなどを食べている時、首を上げた瞬間を狙えば、すぐに撮影できそうな気もするが、そんなに難しいのか。温室エリアの飼育スタッフ・峠田(たおだ)優子さん(43)にフラミンゴの生態を尋ねると「午前中はまったりしていることが多い」とのこと。たしかに取材した午前中は、ほとんどが丸まって休んでいた。昼を過ぎて午後1~2時にはよく水浴びをし、動き始めるという。群れで活動するのでつられて同じ行動をすることは多いものの、活発に動く時間は限られ、シャッターチャンスは少ないようだ。

 

 山田さんはバレンタインデーを逃した悔しさを忘れず、ならば「ホワイトデー(3月14日)までには」と意気込んだが、撮影できず…。飼育スタッフから「夕方に首を上げていることが多いよ」とアドバイスをもらったがうまくいかなかったという。

 バレンタインデーから約2カ月が経った4月11日、ついに決定的瞬間が訪れた。時間帯は、フラミンゴがまったりしているはずの午前中。山田さんが、たまたま通りかかった時に、2羽が向かい合っていた。「いけるかも」と4月に新調したばかりのデジタルカメラを構え、そのまま約1時間。粘って角度も工夫し、40〜50枚撮ってついに狙い通りの一枚が撮影できたという。山田さんは「ツイート通り『ようやく撮れた』という喜びでした」と胸をなで下ろした。ツイートのリプライ(返信)欄には、理想に届かずボツにした写真もアップしており、山田さんの苦労が分かる。

 

 山田さんには既に、次のターゲットがあるという。それは「ワライカワセミ」。昨年10月にパークに入ってきたニューフェースだ。その名の通り笑うように鳴くのだが、普通の鳥と同じように「クククク」という声を上げることも多く、いまだ納得できる声を収められていない。「ワハハハハという笑い声を撮りたいんですよね」。狙い澄ました動画がいつ出るのか、今後はバズる前にいち早く取材させてもらいたい。

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