細く長い首をだらりと水辺に投げ出した、一羽のフラミンゴ…。
連日の猛暑が続く中、衝撃の写真がネット上で話題になりました。フラミンゴの体調を心配する人、「これ私だ…」と思いを寄せる人など、さまざまな声が飛び交いましたが、果たして真相は? ということで、撮影された神戸市立王子動物園で詳しく聞いてみました。
同園には、体の色が濃く大型のベニイロフラミンゴと、白っぽいヨーロッパフラミンゴの2種を飼育しています。今はちょうど7、8月に生まれたかわいい赤ちゃんフラミンゴたちがヨチヨチと歩く姿が見られます。
…と、いました!だらりのフラミンゴ!首が長いからか、本当に倒れているようにも見えなくはないですが…。担当の女性飼育員さんに聞きました。
―ネットで話題になっていましたが、あれは、大丈夫なんでしょうか?
「ええ、見ました(笑)。でもこれは倒れているんじゃなくて、座っているんです。脚の『逆くの字』に曲がっている部分は膝のように見えますが、実は人間で言う『かかと』なんです。こうやって座っている姿はいつも普通に見られるんですが、おそらくオスで、首が長いから目立ったのかもしれませんね」
―座って…何をしているんですか?
「水の中のエサを食べています。もしかしたら立つのが面倒だったのかも?(笑)」
―暑さでへばってるわけではなかったんですね。
「ええ、違うと思います(笑)フラミンゴは元々暑さに強い動物ですし、特に対策もしていません。それに、暑ければプールの水の中にいる方が涼しいはずですよ」
と答えてくれました。他にも一本足でたたずむ印象が強いせいか、二本足で歩いてるとびっくりする人もいるそうです。
フラミンゴの特徴でもある長~い首は、とってもしなやか。普通の鳥なら寝るときも頭を後ろに向け羽の間に入れて休みますが、フラミンゴだと、同じようにしていてもまるで絡まったひものよう…。求愛行動ではこの長い首をまっすぐ上に伸ばして羽を広げたり、左右に振ったり、互いに絡ませてアピールし合うこともあります。
そんなフラミンゴの一番の面白ポイントは「なんといっても、ミルクで子育てすることです。オスメスともに!」と飼育員さん。実は家族愛がとても強く、オスとメスが交代で卵を温め、口から「フラミンゴミルク」という栄養豊富な真っ赤な分泌液をヒナに与えます。ヒナは生まれた時は灰色や白色なのですが、このミルクやエサのオキアミを食べて赤く色がついていきます。鳥類で他にミルクで子育てするのはハトぐらい。なんとも不思議な生態です。
さらに、ペアは基本的にずっと同じで、浮気しないそう。名前だけのオシドリとは違うのです!いつも観察しているおじさんによると、浮気しそうになると周りのフラミンゴからすごく攻撃されるとか(笑)。子どもは大事にしますが、ご近所のいざこざは多くて、あの長い首を伸ばしてお隣のお家の巣材を取ったり、ヒナをつついたりすることもあるそう。美しい見た目と裏腹に…なんだか、人間社会以上にシビアです。
動物園では狭いところにたくさんいるので「かわいそう」と言われてしまうこともあるそうですが、実は「たくさんなのがいいんです。今は約200羽いますが、もっと多くてもいいと思います」と飼育員さん。ウィズコロナの時代、人間界ではありえない「密」ですが、「密」でないと繁殖率が上がらないそうで、数がたくさんに思われるよう、周りに鏡を置いてたくさんいると誤解させる園もあるそうです。
ジャイアントパンダやゾウ、ライオンなどのアイドルたちと違い、さらっと眺めて通り過ぎるお客さんも多そうですが、実はとっても奥が深~い、フラミンゴの世界。今回話題になったことで「今回の写真は暑さは関係ないとは思いますが、フラミンゴに興味を持ってもらうきっかけになればうれしいです」と飼育員さん。「今は7、8月に生まれたヒナたちがいるので、ぜひ見てほしい。かわいいけど足がすごく太いです。性格も違って面白いと思います」とアピールしてくれました。