「妊娠中、つわりが酷くてバスの優先席に座っていたら“座ってないで立ったらどうだ!”と中年男性に怒鳴られたことがある。“もっと座る人がいるだろ!この人とか!あの人とか!”と、立っている中年女性を指すと、“この人”と言われた女性がガチギレ。“失礼ね!彼女だって何か障害があるのかもしれないでしょう!”」と、周囲の女性たちが加勢しはじめ…。
「まるでTV番組『スカッとジャパン!』」とのコメントもついたエピソードを披露したのはあずさ兎さん(@azusausagi)。「妊娠中で…」とマタニティマークを車内で示したところ、男性を問い詰めてくれた女性もいたそう。結果、男性は捨て台詞を残して、バスを降りていったそうです。
「他人の主張のために、自分の存在を利用されるのっていい気がしないよな、と感じた出来事。おばちゃんたち、強かった」とツイートするあずさ兎さん。生きづらさを感じる話題が多い昨今にも通じるできごとではないかと考え、投稿したと話します。当時の詳しい状況や今思うことを聞きました。
女性たちの反撃にタジタジになるも、反省なしの捨て台詞
複数回に分けての投稿は述べ約7万超のいいね!がつき、「隣に座っていたおば様に“デブだね〜邪魔”と小声で睨まれた事があります」「男子高校生に聞こえよがしに“俺も優先席座りてぇ~”と」「妊娠初期、肩を叩かれて“若いんだから立て”とバスを降りて行く中年男性に捨て台詞言われました」など、妊娠中で体調不良に苦しむなか、優先座席での辛い経験を明かす声が相次ぎました。また、「妊婦に限らず、見た目で分からない疾患もあるよね。例えば心臓病だったり、腰痛だったり、貧血だったりすることもあるわけだよね。よく偉そうに立てとか言えるよね」という声も。
中には、「“優先席なんて座って”と言い放った男に、“妊娠初期が一番流産の危険があんの知らんの?何もしらねぇのによくそんなん言えるな?”と、その男の腕を掴んで言ったら、拍手起きた」と言い返した人もいましたが、反撃や逆恨みを考えるとみんなが言えるわけではありません。実際に、あずさ兎さんは「わたしだけだったら席立って終わらせてたと思うんだよね、怖いし」とコメント欄で打ち明けています。
そのときの状況については、「前方の席は埋まっていましたが、後方は空席でした。立っている方は2、3名ほどだったでしょうか。平日の日中でしたので、街中を走るバスにしては空いていたと思います」と説明してくれたあずさ兎さん。
例の中年男性は、あずさ兎さんが優先席に座っている状態の時にバスに乗車。「空いている席もありましたが、ひとり掛けの席が埋まっていたためか、男性は座らずに優先席の前に立ちました」。そして、あずさ兎さんへ「座ってないで立ったらどうだ!もっと座る人がいるだろ!この人とか!あの人とか!」と言い放ったそう。
座れないことへの苛立ちを「自分のためではなく、みんなのために言っている」という大義名分のもと、自分(あずさ兎さん)に向けたのだと感じた瞬間、 女性が「失礼ね!」と猛反撃したので、「ものすごい瞬発力での反論だったので、わたしも驚きました」。
妊娠中だとあずさ兎さんが告げるや、女性陣からの反撃はエスカレート。もうひとりの女性も加わり、「なんてことを言うんだ、言い方があるんじゃないのか」と非難したため、男性は逃げるように移動。最後列に座ったそうですが、あずさ兎さんに非礼を詫びる言葉はなく、それどころか「なんだよ!中学生かと思ったよ!」との捨て台詞を残していきました。「降り際に言われましたし、バスを降りてからも、こちらに向かって何か怒鳴っていました」。
そんなエピソードに対して、「“自分が座れてない”事を、『他人を盾にして』文句を言ってやろうとしてるんだろうなぁと感じるな」「妙な正義感はあるのに、“バス車内で怒鳴って、周りに迷惑をかけている”という自覚は無いんだな…」「男性ってすぐ怒鳴る、声聞こえてるのに」と、弱者に対して強く出る態度についての非難の声も続出しました。
「弱い立場にある人が苦しい思いをしているな」
あずさ兎さんは、女性たちからその後も気遣う言葉をかけてもらい、終点で一緒に降車。「お礼を言って、しばらく話をしたのですが、どんな話をしたのかは記憶があいまいです」。
「つわりで痩せこけ、妊婦健診の帰りで化粧もしてなかったからそう見えたんだと思うんだけど、大人に言ったならまだしも、中学生だと思って怒鳴ったの…?と、数年後の今もふと思い出しては考えさせられる」と、何年経っても忘れられない心の傷になっていることをTwitterで伝えたあずさ兎さん。
数年前のできごとをツイートしたのは、渋谷区の公衆トイレのことや車椅子を利用する人がエレベーターに乗れないことが話題になっていたことから。「どちらも、弱い立場にある人が苦しい思いをしているな」と考えたときに、この出来事を思い出したそうです。
また、「この時の男性のように、弱い相手を攻撃したり、利用したりする人に出会うと、この人はどうしてこの行為に至ったんだろうか、と考えることがあるんです。嫌な人、悪い人って思うのは簡単なんですけど、本当にそうかな?って。そのような言動をこれまで咎める人はいなかったのかな?いなかったとしたら、それはなぜだろう?って。誰かの心や身体を傷つけて成り立つ価値観を“当たり前”としてはいけないし、相手を尊重しない“多様性の押しつけ”があってもいけない」と話します。
「今は2人の男の子を育てており、子育てって、子ども本人を育てるだけじゃなく、未来の社会の価値観を育てていくことでもあるんですよね。わたしが経験した出来事を、子育てにどう生かしていけるか。どうやって子どもたちに伝えたらいいか。わたしたち親世代が感じてきた、いろいろな立場での“生きづらさ”を、少しずつでも解いていけたら、と思っています」。
■あずさ兎さんTwitter @azusausagi