「障がい者雇用で採用したパートさんと、挨拶まわりに行った時、突然『失礼だな、イヤホン外しなさい』って他の部のおエライさんに怒鳴られた。難聴で補聴器を常につけてるんだけど、ワイヤレスイヤホンが普及してからよく言われることだと彼女は笑って話す。けど私たち、笑って済ませちゃいけないよね。」
障がいのある方に対しての職場対応について問題提起した、うらりんさん(@urarin_acc)のツイートが話題になっています。
2021年3月より障がい者雇用促進法が改正され、民間企業の障がい者の法定雇用率は2.3%となり、従業員数43.5人以上の企業は障がい者の採用を義務付けられています。ですが、社会の障がいに対する理解は深まっているとは言えません。
難聴のため常に補聴器をつけているといううらりんさんの同僚。しかし、ワイヤレスイヤホンの普及によって、補聴器だと気づかれないことが多くなったとのことです。今回、その「誤解」によって、上司から怒鳴られてしまいました。
この出来事を紹介したうらりんさんのツイートには、多くの人からの反響が。リプ欄には以下のようなコメントが寄せられています。
「私の娘が難聴です。コロナ禍でマスク社会になり本当に困っています。そしてどうにならずに、諦めることも…」
「確かに昔からある耳掛け式と違って、耳穴式はパッと見で区別し辛いですよね。これを機に企業にもこの場の人にも知識の共有がされると良いですね」
「理解する姿勢や寄り添いが大切だと思います」
「私も、障害者と関わる仕事をしていますので、そのようなシチュエーションはよくわかります。社会にはいろんな感覚を持つ人がいます」
「補聴器しながら自転車乗って、警察に注意されるって事案もありましたね」
障がいの「情報共有」は必要?課題も…
リプ欄には、「そういうのって事前に情報共有されてるんじゃないの…」といった声も。確かに、事前に相手が難聴であると知っていれば、上司もこのような対応はしなかったのではないかとも思います。
しかし、実際のところ、障がいについての情報の共有は、プライバシー保護の観点もあり、難しい問題です。
障がい者の就労には、予め周囲に障がいについて開示する「オープン就労」、障がい者であることを職場には伝えずに働く「クローズ就労」、一部の部内や上司にのみ障がいがあることを知らせる「セミクローズ就労」があります。
どのような形態のもとで働くかは、本人の意志が尊重されるべきでしょう。
今回のケースも、その女性の障がいについては、あえて他の部署には共有していなかったとのことです。
障がいに関する話は非常にデリケートであり、開示の有無については本人の希望が何よりも優先されるべきです。しかし、だからこそ、障がいがあることを知らない人から辛い対応をされる可能性もあり、個々の事情に合わせた環境づくりは難しいという側面もあります。もっと、配慮ができる組織体制づくりや社員教育を行っていくことが必要なのでしょう。
「笑って済ませてしまう」現実に問題が…
今回のうらりんさんのツイートに寄せられた声の中には、「何の事情も知らず、考えようともせずに初対面の人を怒鳴りつけた」他部署の上司の対応を疑問視するものも多くありました。
しかし、うらりんさんが本当に伝えたかったことはそのことではなく、その難聴の女性が補聴器を誤解されたことについて、「笑って話してしまっているところ」だといいます。
「同じ人間としてこの世に生まれてきたにも関わらず、『障がい者であるが故に我慢をして生きている事が普通』という諦めを抱かせてしまっている現実を見過ごしてはいけない――そのことを分かっていただきたいです」(うらりんさん)
聴覚障がいの方は、日々「音が聞こえない・聞こえづらい」というハンディキャップを抱えています。そのうえ、コロナ禍でマスク生活が当たり前になってしまい、口の動きから相手の言葉を読み取ることもできなくなってしまいました。
そのような状況で、社会人としてコミュニケーションをとるのは大変なことです。
そんな苦労を重ねながら暮らしているにもかかわらず、誤解されて上から怒鳴りつけられてしまった――。もちろん、相手も知らなかったが故の対応ではありますが、だからといって納得できるものではありません。悲しみはどれほどのものだったでしょう。
にもかかわらず、その女性が自分の本当の感情を押し殺して、無理に笑って過ごしているのだとしたら、それはあまりに悲しいことです。
障がいのあるなしにかかわらず、一方的だったりどちらかが我慢を強いられるような関係性は歪みを生みます。ましてや、その原因が「障がい」にあるのだとすれば、許容できることではありません。
「ホントの笑顔が見られるように、私達もちゃんと考えないといけないですね」(うらりんさん)
ちなみに、今回怒鳴った上司は、女性が耳に付けているのが補聴器だと分かった時、女性に失礼な態度をとってしまったことを謝り、自分が無知であったことを認めつつこれから知識を深めることを約束されたそうです。
これを機会に、もっと職場での理解が深まると良いですね。
うらりんさんにお話をうかがいました
――今回ツイートで紹介されていた方以外にも、障がいがある方が職場で働かれているのでしょうか?
うらりんさん:他にも身体障がいや精神障がいの方がいます。
――障がいのある同僚さんが苦労されていたり、周囲の障がいに対する理解のなさを痛感したりする場面はありますか?
うらりんさん:精神障がいのある方は、仕事や対人関係に不安に襲われた時、眼振が起こったり言葉が出なくなる等の症状が出ることがあります。また、その方は特例として別室での休憩が認められているのですが、その際に周囲から、「サボり中」「いいなぁ」など心無い言葉が聞こえてくる時があります。
――うらりんさんは障がいのある方と接する時、どのような配慮・対応を心がけていますか?
うらりんさん:相手が不安になったり、話の内容が理解できなかったりしないように、相手の目を見てゆっくり話すようにしています。また、分かっているという前提ではなく、細かいところでも一緒に確認しながら仕事を進めるように心がけています。タイミングを見計らって世間話などの会話をしたりもしています。
――ツイートでは、障がいの「開示」や「共有」についての話もありましたが、難しい問題ですよね。一筋縄ではいかない事情もあるなかで、よりよい職場環境を作るにはどのようなことが必要だと思われますか?
うらりんさん:私たちが、研修などを通じて障がいを正しく理解し、特別な人種・健常者とは違う人という意識をもたないことだと思います。また、自分たちの生活の中に障がいのある人たちが、同じように生活をしているという当たり前を意識することも大切だと思います。
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うらりんさんは、「うららか(麗)で、りん(凛)とした人生」を目標に、未来が楽しくなる言葉を日々発信されています。
うらりんさんは、障がいのあるなしにかかわらず、人同士が生きやすくなるために大切な要素について、このように話されます。
「相手に興味を抱く。いかに人の話を聞くか。自分が機嫌よくいること。正直でいること」
■うらりんさんのTwitterはこちら→https://twitter.com/urarin_acc