兵庫県の瀬戸内海側を走る私鉄、山陽電車の車内にひときわ目を引く中吊りポスターがあります。全面に漫画風イラスト。中央には困り顔の男性が胸の前で鞄を抱え、縮こまっています。大きなリュックや楽器ケースを背負った若者に挟まれ居心地が悪そうです。コピーは1行だけ「迷惑になっていませんか??」。
「老若男女、誰もが知らない間に…」
山陽電鉄(本社、神戸市長田区)の担当者によると、「春のマナーアップキャンペーン」(4月13~27日)にあわせて掲出を開始。コピーは同社鉄道営業部営業課の担当者が考案し、イラストは印刷会社のデザイナーが担当しました。
同社にはこれまで「大きなリュックは邪魔」「背負っている人が動くたびに振り回されるようで怖い」「他の人が座席に荷物を置いているから座れない」といった乗客からの苦情が寄せられていたそう。ポスターには大きな荷物を背負った乗客の姿のほか、座席を買い物袋で占領したまま眠る高齢女性の姿も描かれています。
「学生や若い世代のお客さまに見ていただけるように全面をイラストにし、周囲の迷惑になっていることをわかりやすく伝えるため、リュック等を黄色にして目立たせるデザインにしました。また、老若男女、誰もが知らない間に他のお客さまに迷惑をかけているかもしれないことをお伝えするために、ポスター内のキャラクターを選択しました」(同社担当者)
同社では当面の間、ポスターを掲出し、車内マナー向上を促す予定です。
「座席に荷物」「背中のリュック」は迷惑行為ランキングでも
JR西日本や阪神、阪急など関西の鉄道事業者19社局は3月、共同マナーキャンペーンを実施し、「手荷物の置き方・持ち方はまわりの方にご配慮ください」と呼びかけました。通路などに立つときは、背負うタイプのバッグは肩から下ろして手に持ち、大きな荷物は網棚に。座席に座るときは、手荷物は座席に置かず、自分の膝の上に置くようにとアドバイスしています。
日本民営鉄道協会(東京都千代田区)が調査した「2022年度 駅と電車内の迷惑行為ランキング」によると、迷惑と感じる行為の総合ランキングは1位「座席の座り方(詰めない・足を伸ばす等)」、2位「騒々しい会話・はしゃぎまわり」、3位「乗降時のマナー(扉付近で妨げる等)」、4位「荷物の持ち方・置き方」、5位「周囲に配慮せず咳やくしゃみをする」。
4位の「荷物の持ち方・置き方」について、さらに具体的な迷惑行為を尋ねると、背中や肩のリュックサック・ショルダーバッグ等63.8%、座席に置く15.8%、床(足もと)に置く5.8%、傘の取り扱い5.2%、扉付近に置く2.0%という結果が出ました。