昭和30年代に発表された日本列島のイラストマップがSNS上で脚光を浴びています。カットイラストや図案集などで知られる1929(昭和4)年創業の出版社「野ばら社」(本社、東京都北区)が発行した「児童年鑑 昭和31年版」に収録された絵地図。日本地図の上に各地の名所や名産品などがイラストで所狭しと描かれており、ネット上では「すっごくかわいい」「ときめく」「最高」といった声が上がっています。
「函館も」「宮城も」…リクエスト続々
同社公式ツイッターアカウント(@nobarako)は4月13日、「あまりにかわいいのでぜひ見ていただきたい」との思いを込めて、「野ばら社『児童年鑑』より 昭和31年の北海道の絵地図です」と札幌周辺の地図を投稿しました。
「ツイッターにたまたま北海道の一部を載せたところ、北海道の方から『函館が見たい!』とご要望がありました。(当日は)Jアラートが鳴って緊迫していたときでしたので、少しでもほっこりした気持ちになってもらえたらとリクエストに応えるかたちになりました。以前、JR山手線の高輪ゲートウェイ駅開業時に都内の絵地図を載せたところ、少し反響がありましたが、今回のように広がったのは初めてです」(同社担当者)
作者については「昭和31年版の作者はイラストレーターの中野正治さんではないかと思われます」。中野さんの温かな画風に引き付けられたユーザーは多かったようで、「他の地域も見てみたい」の声が続々と寄せられ、同社ではこれまでに宮城、岐阜、広島、大阪、岡山などを公開しています。
イベントで販売すると「毎回あっという間に売り切れ」
今回SNSで話題になった絵地図は、同社が昭和7年から32年ごろまで発行していた「児童年鑑」に毎年収録していたもの。
「戦中の中断期はありながらも毎年出されていた子ども向けの時事解説本です。法律・政治、世界の歴史、地理、産業・貿易、スポーツ、科学、雑学、辞典、便覧・一覧などの内容でした。毎年、北海道で見開き1ページ、次のページに東北といった形で、各地域ごとに名所名跡や特産品が描かれた絵地図が掲載されていました」(同社担当者)
創刊時の絵地図は「日本陸軍地図」といった当時の世相を色濃く反映したものでしたが、昭和9年版には今回の絵地図の前身とも言えそうな、特産品イラスト入りの「日本産業地図」が掲載されています。
同社では2020年ごろから、出版物のイラストなどをあしらったグッズ販売も開始。イベント出店時には開催地の絵地図を印刷し販売していますが、こちらも「毎回あっという間に売り切れてしまう」という人気ぶりです。
担当者はSNSやイベント会場での人気を目の当たりにし「反響にびっくりしております」。絵地図デザインのグッズが欲しいという声もあり、「今回たくさんの方にご興味を持っていただけたので前向きに検討したいと思います」と話しました。
4月22、23日開催の「紙博&布博 in 京都」同社ブースにて、「京都の絵地図」を販売予定です。B5サイズ、1枚250円(税込み)。