7000冊の蔵書が、古本屋でたった4万→「自分自身が空っぽ」という感覚に 後悔して買い戻し中「物に救われている人もいる」

中将 タカノリ 中将 タカノリ

次第に電子化が進んでいる出版業界。既に紙の本を買わなくなっている人も一定数いるようだが、そんな中SNS上では、本を所有することの意義をうったえる投稿が大きな注目を集めている。

件の投稿の主はブックライター、書籍編集者の堀田孝之さん(@takayukiantao)。

たしかに、本は本棚に入れてあるだけでも人の精神に影響する要素がある。ましてや何度も読み返した本や好きな作家のものであればなおさらだ。手放して初めてわかった本を所有することの意義。堀田さんの投稿に対し、SNSユーザー達からは

「津波で自宅にある洋服と書棚の本が被害にあったとき、同じものが手に入りにくい洋服(←私は洋服好きである)を処分することにあまり抵抗なかったけれど、比較的同じものが手に入りやすいのに本を捨てなくてはならなかったときにはすごく悲しかった。ほんと本は『自分の心』だったんですよね。お大事に」
「本とCDやレコード。つまらないものに見えるコレクションも似たところがある。そういう要石みたいなものが抜けると、他のものが無秩序な集積物みたいに見えてくるんだよな」
「本日聴きたくなったカセットテープを一日中捜索し、以前捨てた時に紛れていたのかもと…思い返せば最近そういう事が多い気がします。断捨離断捨離と煽るような時代に、意外と大事なものまで捨ててしまったかもなと後悔しています」

など数々の共感の声が寄せられている。

投稿者さんに聞いた

堀田さんに話を聞いた。

ーー以前まではどれくらいの量の本を所有されていたのでしょうか?

堀田:正確に数えたことはないですが、概算で約7000冊くらいだったと思います。写真に写りきらない本もたくさんありました。ジャンルは現代の純文学小説が多く、ノンフィクション、実用書、写真集、詩集と、本と言えるものはなんでも集めていました。必ず買っていたのは、高橋源一郎、阿部和重、中原昌也、綿矢りさ、絲山秋子、柴崎友香の小説です。すべての本を一軒の古本屋個人店に売ったのですが、後日言い渡された金額は4万円ちょっとでショックでした。

 ーー本を手放してしまった経緯をお聞かせください。

堀田:女性関係のトラブルで、自宅から逃げ出す必要があり、家賃3万円程度の高円寺の四畳半に引っ越さなければならなくなりました。そのため、本を持っていけませんでした。これまでの人生…本を選ぶか、新しい人生…つまり新しい女性を選ぶかの二択で、血迷った私は結果後者を選びました。売ったときは、新しい人生を歩む決心をしていたので、後悔はありませんでした。

ーー現在、後悔されている理由をお聞かせください。

堀田:新しい人生を歩むはずの女性はあっさり音信不通になり、結果、私には高円寺の四畳半だけ残されました。その後、その環境からは脱出することができましたが、今手元には100冊に満たない本があるのみです。いくつかは買い戻しているのですが、10代の頃から20年近くにわたって集めてきた本は私の過去そのものであり、それらを所有していないと、自分自身が空っぽであるような恐怖があります。一時の気の迷いで大切な本を手放すべきでなかったと後悔しています。

 ーー今回の反響へのご感想をお聞かせください。

堀田:本やレコードを収集していて、それを「心のよりどころ」にしている人がこんなにもたくさんいるのだと知り、驚きました。物に執着することは悪いような風潮もありますが、物に救われている人もこんなにいるのだと感じます。

◇ ◇

筆者も本と服だけは一度買ったらほとんど手放すことがないたちなので、堀田さんのお話にはいたく共感した。断捨離だなんだと身軽に生きることを持て囃す時代だからこそ、物を所有することの意義を今一度見つめ直したいものだ。

なお今回の話題を提供してくれた堀田さんは5月17日に福山敦士さんとの共著「人脈もお金もゼロですが、社畜で生きるのはもう限界なので『起業』のやり方を教えてください!」(明日香出版社)を発売する。人脈や資金がなくても起業したい人に向け、そのメソッドをわかりやすく解説した意欲作なので、ご興味ある方はぜひチェックしていただきたい。

堀田孝之さん関連情報

Twitterアカウント:https://twitter.com/takayukiantao

5月17日発売(※福山敦士さんとの共著)「人脈もお金もゼロですが、社畜で生きるのはもう限界なので『起業』のやり方を教えてください!」(明日香出版社):リンク

人脈もお金もないが起業を考える人に向けて、その手法を説く本。自他ともにポンコツと認める編集者・堀田氏が、福山氏に教えを乞いながら成長していく物語を通じて、起業で成功する手法を学ぶ。

既刊本「気がつけば警備員になっていた。」(笠倉出版社):リンク
24時間365日、喜びも悲しみも「ビルの中」にあり。夢に敗れて、挫折を繰り返し、たどり着いた仕事は、『高層ビルの警備員』だった……。「誰でもなれる職業」と自嘲しながらも、置かれた場所で懸命に働く施設警備員の実態を、警備員自身が、愛と憎しみで描き出す。今回の本棚や本に関する話題も登場する。

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