日本のジェンダーギャップ指数の慢性的な低さに関する報道が増えているなか、「海外の方がいい」「日本は遅れている」と言った声を耳にするようになりました。株式会社ロコタビ(東京都千代田区)は、ジェンダーギャップ指数が高い国に住む女性43人を対象に「女性としての生きやすさの変化」および「日本で生きづらさを感じた理由」について調査を実施しました。その結果、約9割の人が「女性として生きやすくなった」と回答したそうです。
調査は同社が提供している『ロコタビ』に登録している海外在住日本人のうち、アイスランド・アイルランド・スウェーデン・ドイツ・ニュージーランド・ノルウェー・フィンランドに居住する日本人女性を対象として2023年2月にインターネットで実施されました。
まず、日本での生活と比較して「女性としての生きやすさ(生きづらさ)」を質問したところ、「とても生きやすくなった」(58.1%)と「やや生きやすくなった」(30.2%)を合わせて、88.3%の人が「女性として生きやすくなった」と回答しました。
一方で、少数であるものの「生きづらくなった」(4.6%)と回答した人からは、「ドイツ人やアフリカ人による人種差別、シリアやトルコからの難民による嫌がらせ、暴行の危険性があるため行動範囲が限られている」(ドイツ在住/50代)といった声が寄せられています。
また、「女性として生きやすくなった」と回答した人に対して、「日本で女性としての生きづらさを感じた理由」を教えてもらったところ、「職場や社会での男女平等の実現の遅れ」(65.1%)、「出産や育児などでの女性のキャリアアップの阻害」(58.1%)、「婚活や結婚、出産へのプレッシャー」(53.4%)といった回答が上位に挙げられ、具体的には以下のような声が寄せられました。
▽周囲の人を含めた社会全体の女性に対する価値観の押し付けや性差別的発言(ドイツ在住/40代)
▽社会から女性に求められるロールモデルにそぐわなかった場合の圧力、暴言(アイルランド在住/30代)
▽子供のベビーカーを電車でたたんだり、子供を連れてでも行かなくちゃいけない用事は女性にもあるのに嫌な顔をされたり、中年男性以上の方の理解がない(ドイツ在住/40代)
▽女性は結婚したら退職しなくちゃいけないみたいな圧力をかけられたり、仕事を続けようと思っても育児休暇がとりにくい(ニュージーランド在住/50代)
▽一度就職すると、年を取ってからの再就職が簡単ではない(ニュージーランド在住/50代)
▽出勤時間(痴漢被害やラッシュなど)が苦痛、服装などの規定(スーツ、ビジネスカジュアルなど自由度の低さ、また宝飾品や髪型・タトゥなどの禁止など)が厳し過ぎて隠れて生きる様な感じがした(ドイツ在住/40代)
▽職場での男女の賃金格差、または「女性はこのようにふるまいなさい」というプレッシャーや「母はこうであるべきだ」という固定概念が強い風潮があったこと(アイルランド在住/30代)
その一方で、以下のような「パートナー次第」との見解も寄せられています。
▽家事育児の役割分担はパートナーが日本人だろうが外国人だろうが結局パートナー次第と言えると思う。仕事する上でも女性でしかもアジアからの移民ということで誤解を受けたり差別を受けたりすることが多いので、生きづらさはかなりある(ドイツ在住/40代)
続いて、「女性としての生きやすさ(生きづらさ)」を国別でみると、北欧4カ国(アイスランド・スウェーデン・フィンランド・ノルウェー)に住んでいる人では、すべての人が日本での生活と比較して「女性として生きやすくなった」と回答しました。回答者からは、以下のようなコメントが寄せられています。
▽日本では「〜しなければならない」という考えがあり、その形を保守しようという傾向が強かったです(スウェーデン在住/50代)
▽私が一人の人間としてどう生きたいかではなく、男や女だからという枠の中で生きることは私にとっては苦痛に感じていた(スウェーデン在住/30代)
▽結婚のプレッシャー、学歴が一生ついてまわり、セカンドチャンスがない(フィンランド在住/50代)
▽女性に求められるものが非現実的。「女性らしい」「女性として気が利く」「女性なんだから」このような曖昧な定義この中で生きていくのは大変(フィンランド在住/30代)
また、「移住先で『女性として生きやすい』と感じる制度や文化、または具体的なエピソード」を教えてもらったところ、以下のようなコメントが集まりました。
▽女性が組織のトップに立ったり、一国の首相になったりは当たり前の国なので、職場でも女性だと言うことがマイナスに感じる事が皆無(ノルウェー在住/50代)
▽女性を意識することはほぼなくなり、人として物事を考えるのが普通になった(フィンランド在住/30代)
▽日本は便利だけど生きづらい。スウェーデンは不便だけれど生きやすいと感じます(スウェーデン在住/60代以上)
▽結婚はそれほど重要視せず、結婚後、私と主人の苗字が別々でも、籍を入れずに暮らしていても子供に影響は無く男性も家事をします(スウェーデン在住/50代)
▽子育てに寛容なので、ベビーカーで公共交通機関を利用してもベビーカー優先という風潮がありいつでも気楽に利用できる。子供がいても共働きは当たり前で家事・育児の分担は平等に行う(ドイツ在住/40代)
▽専業主婦が職業として認識されている、専業主婦であっても保育園が利用できる、個々の事情が性差なく尊重される(ドイツ在住/40代)
最後に、「日本のジェンダーギャップ指数が低い事実に対して思うこと」を聞いたところ、以下のような意見が寄せられました。
▽今70代の人たちが社会を牛耳っているから(彼らは男尊女卑思想から抜けられないから)ジェンダーギャップが低いのだと思う(ドイツ在住/60代以上)
▽日本の伝統的な考え方が邪魔していると思う一方、それは日本の文化でもあり、例えば一家の大黒柱である夫(父)が、一番風呂に入り、彼の言うことが絶対である、と言うのは、私は賛成というか、嫌いではない。が、女の自由がなくなるのはおかしい(ドイツ在住/50代)
▽他の国よりは変化が遅いけれど、若い世代と話しているとジェンダーギャップが減っていっているのは感じます(ドイツ在住/40代)
▽そもそも女性が平等を望んでいるのでしょうか?未だに女性誌のモテ系や愛され系というタイトルを見ると、違和感を感じます(フィンランド在住/50代)
▽子供の頃から、子どもたちは男子・女子の区別をされずに育っていてとても自然です。例えば幼稚園のトイレも男子・女子の区別はなく、男の子と女の子が隣同士座って用を足しています(ノルウェー在住/50代)
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なお、同社は今回の調査について、「サンプルサイズが限定的であることにご留意ください。結果はあくまでこの43人の回答者における傾向や意見を示すものであり、全体的な市場動向やその国を代表する意見とは限りません」と補足しています。
【出典】
▽ロコタビ調べ