農家ユーチューバーの自宅倉庫が燃え上がり、全焼しました。高知県で米農家を営む「田舎の者mo-chan」(@moss0782ga)さんは、首から提げたカメラで燃えさかる炎や農機具避難の様子を撮影しながら可燃性の農機具や燃料タンクを搬出、自ら放水も行いました。
「熱っ!」「ゴホッゴホッ」と猛煙にせき込みながら、消火活動を行う様子を動画に収め、防火啓発のためにYouTubeで配信しています。出火原因はなんと、農業資材を結束するポリエチレン製のひも。なぜひもが火事の原因となったのでしょう。mo-chanさんに聞きました。
消防車到着「果てしなく長く感じた」
農家ユーチューバー「田舎の者mo-chan」さんは代々高知で米農家を営み、パイプの詰まり取りなど農業系の動画で人気を博しています。
ーー撮影した火事動画は迫力があります。
「(小型カメラの)GoProを首元で固定するネックマウントに付けて撮影しました。火事を発見後、すぐに消防への通報や引火の恐れがある車3台の退避を行い、車中にあったGoProを見て『撮らなきゃ!』と思いました。職業病みたいなもんですかね(笑)」
動画の序盤では、mo-chanさんが「消防まだかねえ…!どうにも」「消防まだ!?」と燃え上がる倉庫になすすべなくじれながら、「乾燥器が燃えたら…!灯油があるけん」と米の籾を乾かす大きな乾燥機や、灯油タンクを運び出す様子が映し出されています。
ーー乾燥機への延焼を心配されていました。
「収穫後のお米(籾)を乾燥する機械です。ウチの規模なら一台150万円程度です。運び出した灯油タンクは乾燥機の燃料タンクでした」
「消防車は通報から到着まで10分程度かかったでしょうか。まず地元消防団が到着し、その後、消防署の消防車が到着したように思います。消防団の屯所は車で3〜4分、本署は10分程度の距離です。待っている間の時間は果てしなく長く感じました」
ーー駆け付けた消防車から自ら送水ホースを引っぱり、放水を行っています。
「8年前から地元消防団に所属しており、1番早く現場に到着したのが所属消防団の消防車でした。消防団で消火活動も経験しましたし、年に一度、消火手順を競う大会があり、毎年選手として参加していました」
迅速な通報、車や灯油タンクの避難、放水まで自ら行ったmo-chanさんでしたが、火勢の勢いが強く、倉庫は全焼しました。一方、隣接する自宅は耐火性のある外壁だったおかげか、外壁が焦げ、窓が割れるなどの被害になんとか抑えられました。
何を置いてもまず通報を
mo-chanさんが撮影した動画や写真は消防と警察の出火原因特定に役立てられ、火元がマイカ線という農業用のひもであることが分かりました。バタつくビニールハウスを抑えるためなどに用いられるものですが、mo-chanさんによると、家族がマイカ線をライターで焼き切った後、火がマイカ線を伝って燃え残り、ゴミなどに燃え移って大きな火になったとみられるといいます。
ーーマイカ線が出火原因というのは、消防、警察も同様の見立てなのでしょうか。
「消防、警察の方も出火場所や出火時間、(出火前の)親父の行動や、マイカ線を燃やした際の現象を確認し、大方の見立てとなりました」
動画では、mo-chanさんがマイカ線を火で焼き切ってみせ、マイカ線に火がくすぶり続ける様子が撮影されています。
「思ったより小さな火でも、無風、火を付ける角度などの条件が揃ってしまうと、時間をかけて大きな火になってびっくりしました」
マイカ線を製造する石本マオランは取材に対し、「マイカ線はハサミやカッターで切ってほしい。ライターなど火の出るものは決して使わないでほしい」としています。
ーー今回の火事の教訓は。
「とにかく何を差し置いても消防への通報です。通報が遅れれば、消火までの全てが遅れます。初期消火に奔走しても、火勢が強ければ意味をなさないんだと痛感しました。
また、喫煙者であれば、マイカ線やビニールひも、タコ糸や細めのロープなど、ライターで焼き切った経験がある方もいると思います。親父も今までそうしてきたからこそ、の今回の火事が起きています。必ずハサミや刃物で切るように心がけてもらえればと思います」
◇ ◇
自らの自宅倉庫が燃えるという災難に見舞われたmo-chanさん。火が目の前に迫る状況を撮影し、防火につながる啓発動画も作りました。「今後は消火器を複数台設置しようと考えています。1台ではとても消えなかったので‥」と話していました。
mo-chanさんは「田舎の者mo-chan田舎のもの直売所」で作ったお米を販売しています。mo-chanさんを応援したいと思った方は通販サイトをのぞいてみてください。