関西圏の消防本部で救助隊員として勤務する「えるいー@LE装備」さん(@erui_LE)が自身のツイッターアカウントで投稿した内容が注目を集めています。
「救急車に乗ることもある消防隊員です 一般のお宅に救急出動した際、玄関で救急隊員が脱いだ靴を家族の方が綺麗に並べ直してくれる事があるのですが、そのままにしておいて下さい ターポリン担架で運び出しやすい向きで置いていますし、サイズの違う靴の履き間違えも起きる可能性があります」(ツイッター投稿より引用)
投稿を読んだツイッターユーザーからは「知らなかった」「覚えておきます」「靴の脱ぎ方までコツがあるとは!」「出るときのことを考えて脱いでいるんですね」「向きに意味があったんですね」「靴には触らないでおきます」「小さな善意や気配りがかえって迷惑になることもあるんですね」など驚きの声が寄せられています。
きれいに並べ直されることは「10件に1回ぐらい」
救急隊員の靴は、手を使わず履けて、長時間屈んで作業ができる救急隊仕様の安全靴です。いくつかのメーカーから販売されていますが、黒色という共通点があります。そのため、一般家庭の玄関で脱ぐと、同じ形と色の靴が並ぶことになります。
投稿者さんは10年近く消防の仕事に携わっており、現在の業務内容は「救助隊員を主な業務として行っており、日によって消防隊や救急隊として勤務することがあります」。
これまでの経験上、玄関で脱いだ靴が並べ直されていた頻度は「(出動回数)10件に1回ぐらいのイメージでしょうか」。
「(傷病者を)運びながら手を使わずに玄関で靴を履くのですが、靴が並べられていると、足をひねって履かなければならない、(間違えて自分以外の)サイズの違う靴を履くことで転倒の危険が生じる、狭い玄関だと靴の履きかえが難しいーーなどの弊害があります。自分の場合は、夜間でも靴の履き間違えがないように、靴の甲や踵に蓄光テープを貼ってわかりやすくしています」
隊員の靴をきれいに並べ直す家庭には一定の条件があるそうで、(1)複数人の家族がいる(2)本人、家族とも冷静である(3)玄関や宅内が整理・清掃されている(4)本人、家族ともに横柄ではない、むしろ積極的に協力してくれる(5)生命の危機に関わる事態ではなく、落ち着いた状況であるーーという条件がそろったときが多いといいます。
親切心のつもりが…タイムロスが生じることも
投稿の中でもう一つ目を引いたのが「(脱いだ靴は)ターポリン担架で運び出しやすい向きで置いています」。
ターポリン担架とは、狭くて傾斜のある階段など、通常の担架が使えない場所のために柔らかい素材で作られた担架のこと。
「ターポリン担架を使用する際は、後方・左右に1人ずつの3人でストレッチャーまで搬送します。靴を脱いで宅内に入る場合、ターポリン担架を使用して運び出す際の位置も考慮しておいています。例えば、救急隊長は頭側、隊員は右側、隊員(機関員・運転手)は左側、という感じに靴を脱いで『出る時に右側つきます』と伝えたりします」
過去には、一刻を争う状況にもかかわらず、靴がきれいに並べ直されていたご家庭があったそうで、「生死の危機に関わる事態の場合、救急隊に加えて、消防隊が救急支援隊として出動するため、玄関付近に6〜7名程度の靴が置かれるのですが、それをきれいに直されていたため、一刻も早く搬送しないといけないのにタイムロスが生じることがありました」。
他の現役隊員も「これ切実!」
ある消防局の担当者にも話を聞きました。隊員の脱いだ靴の扱いについては、出動事案により一概には言えないため、組織としては市民へのお願いは行っていないそう。「事案によりまちまちなため、隊員の靴の置き方も隊員個人のやり方によります」。
別の現役消防隊員は「個人の靴が分かるように脱いでいるので、そのままにしておいてください」と、今回の投稿者さんと同じ意見でした。また、ツイッター上では同業であろう人たちから「これ切実です」「これあります」「そのままにしておいて」「履きやすく乱雑にならない向きにしてる」「出るときのことを考えてます」などの声も上がっています。