深夜、ケージに入れられたまま、人目につかない場所に捨てられていた白ウサギと、生後4週間で溝の中に倒れてグッタリしていた黒い子猫。優しい家族に引き取られて、マイペースな生活を満喫している。
路地裏に捨てられていたケージの中にいたのはなんとウサギ
「最初に見つけたのは、次男でした。見に行ったら、ケージがあって、中にウサギが入れられたままだったんです」
そう語るのは、大阪府豊中市に住む、ショップ店員のカオリさん。
2017年10月のある日、午後10時半頃だった。アルバイト先から帰ってきた当時19歳の次男が「裏の路地に何かが捨てられている」という。
「見にいったら、ケージが置いてあって、中にウサギが入っていたんです」
そこは、夜になると極端に人通りが少なくなる。わざわざ人目につかないように置かれている様子からみて、何者かがケージごとウサギを捨てていったようだ。
「まさか、こんなところにウサギを捨てる?」
咄嗟に状況が飲み込めなかったが、いま目の前にいるウサギをそのままにはしておけない。
「そこに置いといたらかわいそうだから、家の中へ入れたんです」
明るいところで見ると、全身が真っ白な毛で覆われ、目の色が青かった。
後日、動物病院へ連れていって診てもらうと、推定1歳のメスだとわかった。しばらく保護していたが、飼い主が探しているという情報もなく、そのまま家族になったという。
「保護した夜にきれいな月が出ていて、ウサギといえば月でしょということで、ムーンと名付けました」
長男からのLINE「溝の中で子猫が倒れてグッタリしている」
ムーンが家族になってから3年目の2020年8月4日の朝、出勤したばかりの長男からカオリさんにLINEが入った。
「溝に子猫が1匹、ぐったりしているから保護してあげて」
カオリさんが見にいくと、溝の中に全身の毛が真っ黒な小さな子猫がグッタリと横たわっていた。このままだと、命が危ない状態なのは明らかだった。
すぐに保護して動物病院へ連れていくと、生後4週間くらいのオスだと分かった。
「ひとまずウチで保護することにして、体をきれいにしてあげたり、急遽ミルクや哺乳瓶を買ってきたりしました」
子供の頃に実家で猫を飼っていたことはあるが、こんなに小さい子猫の世話をするのは初めてだったカオリさん。知人に尋ねたりネットで調べたりしながら、懸命に世話をした。
しかしカオリさん宅には、3年前に保護したムーンがいた。
「飼うのかどうするのか、そうとう悩んで家族で話し合って、里親を探すことにしました」
だが、何日も世話をして、カオリさんは子猫にすっかり情が移っていた。
「ミルクをあげたり、トイレの世話をしたりしているうちに、手放せなくなってしまいましたね」
そういうわけで、カオリさんの家族に迎えられることになった子猫は、当時Netflixで配信されていて、長男がよく観ていたドラマの登場人物から「エル」と名付けられた。
「ドラマのタイトルは忘れてしまいました(笑)」
2匹の関係はどうなんだろう。
「猫とウサギが一緒に暮らせるのかが、いちばん心配でした」
はじめは、2匹同時にはケージから出さなかったという。少しずつお互いの存在を認識させ、慣らしていって、やがて同じフロアで一緒にいても平気になった。
「いつもエルのほうから、ムーンに近づいていきますね。でも、ムーンは無関心というか、マイペースを決め込んでいます。そしてエルがしつこく絡みすぎたら、自分から離れて距離を取っています。でも、仲が悪いわけじゃないですよ」
真っ白なムーンと真っ黒なエル。オセロみたいな白黒コンビで、今は幸せに暮らしている。