京都市のフライドチキン専門店が、料理で胸やけをした人に全額返金する「胸やけ保証」というユニークな企画を期間限定で始めた。余分な脂を減らす調理法が特徴というが、全額返金とはかなりのインパクトがある。「胸やけしにくいフライドチキンを多くの人に食べてほしい」とPRする運営会社の社長に、企画したいきさつや狙いを聞いた。
その店は中京区高倉通蛸薬師下ルの「ミセスリンダのフライドチキン」。京都市内で居酒屋「あんじ」を展開する会社が2022年1月にオープンした新しい業態の店だ。仕込み段階で骨や余分な脂を除いたチキンを短時間で揚げ、その後はスチームオーブンで加熱しているため、女性やお年寄りでも食べやすいという。
胃もたれや胸やけを敬遠してフライドチキンを避ける人に利用してもらおうと、同企画を3月31日まで続ける。
店内飲食した人が対象で、胸やけがした場合に自己申告する。翌営業日までにレシートを持参し、名前と電話番号、金融機関の口座を伝えれば、4月末に振り込みで返金する。サービスは期間中、1人1回利用できる。
同店の看板メニューは、もも肉と胸肉のフライドチキン、サラダ、スープなどがセットになったランチ限定の「リンダ定食」(並は税抜き900円、大は1137円)。営業時間は午前11時~午後9時半。定休なし。
新サービスを開発した経緯を、運営会社あんじ(京都市左京区)の中谷安志社長に聞いた。
―「胸やけ保証」を始めた狙いは何でしょうか。
「フライドチキンは脂っこくて食べ疲れするイメージがあります。57歳になる私も通常のフライドチキンは1個食べるのが限界。でも、当店ではころもをフライヤーで揚げ、残りの加熱はスチームオーブンを使います。ジューシーでありながら、かなりあっさり食べられるのでそれをぜひ食べてほしいと企画しました」
―胸やけしないことに自信があると。
「フライドチキンの開発には半年かけました。当店の調理法で提供するフライドチキンはほかにありません。胸やけがしないことを伝えたくて、インパクトのある企画をスタッフと考案しました。味にも自信があり、かなり試作を重ねました。スパイスところもの配合だけでそれぞれ50回パターンずつ試行しています」
―そもそも、居酒屋の業態からフライドチキン専門店を開業したのはなぜでしょうか。
「新型コロナウイルス感染症の流行で居酒屋にお客さんが来なくなり、テークアウトの弁当販売が一気に増えました。でもそこに参入すれば泥沼の価格競争に陥ることは見えていました。誕生日などお祝い事の時に食べるテークアウトメニューを考えた時、競争が激しい唐揚げではなく、フライドチキンで勝負しようと考えました」
―オープンから1年がたちましたが、手応えはどうですか。
「年配の女性でも食べやすいとあって、リピーターが想像以上に多いです。外国人観光客も立ち寄ってくれるようになりました。最初から複数の出店が目標で、もう少し認知度を上げてから考えたいと思います」
―居酒屋のお客さんはコロナ後に元に戻るのでしょうか。
「足元では随分戻ってきています。仕事帰りのサラリーマンもいますが、職場単位での宴会利用はまだ回復していません。しかし私は楽観的に見ています。増えすぎた居酒屋が少なくならないと100%の客足回復は難しいと思いますが、人々が自然にマスクを外せるようになれば需要は必ず戻ると思っています」