日本一の人口を誇り国内最速の超特急が走った街、それは昔の大阪 学びと発見にあふれる「なにわおもしろ学」

松田 義人 松田 義人

昭文社刊の「トリセツシリーズ」は、都道府県別に各県の地形や交通、歴史、産業などのジャンルから、地元でもあまり知られていない初耳な面白話、ちょっと昔を遡ってみて初めて知る往時の物語などを集めて一冊に凝縮した、いわゆる地域再発見の本です。

特にヒットしたのが2020年10月刊行の『大阪のトリセツ』。内容を一新し、新ネタを集め、この2月に刊行されたのが『大阪のトリセツ なにわおもしろ学』です。

 

経済の中心地として発展してきた大阪の知られざる話を深掘りし、興味深い話題、面白ネタを50近く集め「なにわおもしろ学」と銘打った一冊です。古地図や当時の写真をふんだんに収録し、大阪の往時の姿を、本の中でいきいきと浮かび上がらせています。

かつて大阪には日本最速の超特急が走っていた!

本書の中から、初耳だったり、意外と知らなかったりする「なにわおもしろ学」をいくつか紹介します。

 ■大阪市は日本一の面積と人口
大正の終わりから昭和のはじめにかけて、旅行が大衆化し、登山や海水浴がブームとなった。おりしも大阪市は市域拡大により東京市を抜いて面積と人口で日本一を誇っていた。

■日本最速の超特急
大阪府には私鉄が国有化された路線が多く、JR阪和線もそのひとつだ。昭和初期に設立された阪和電鉄が南海電鉄と合併し、国鉄となった。1930年代に運行がスタートした黒潮号は、天王寺〜東和歌山駅間を45分で結び、時速は81.7キロ。戦前日本では最速の超特急だった。

■堺はリゾート都市としての開発
1903年に開催された第5回内国勧業博覧会(天王寺がメイン会場)以降、堺ではリゾート都市としての開発が進んだ。その目玉となったのが堺水族館だ。博覧会の機に開設されたこの水族館の面積は約220平方メートル。2階建てのコンクリート造りで、日本初の本格的水族館だった。

■珍しい生物が多数棲息
合流や池に注ぐものを除けば、大阪府の河川は大阪湾に流れ込む。ただ、河口のほとんどは開発され、自然の状態で残されているものはごくわずかしかない。そんななかで、珍しい景観となっているのが、男里川の河口だ。現在、男里川河口の干潟は多種多様な生物の生息地となっている。干潟上部の州には塩生植物のアシの原が形成され、底生生物も多く分布している。なかでもアシハラガニ、ハクセンシオマネキ、スナガニといった珍しいカニ類はよく見られ、希少植物のハママツナやハマサジの自生も確認されている。海辺では巻貝の一種であるホソウミニナや歩とヘナタリなどの絶滅危惧種もみられるほか、ズクロカモメやキアシシギといった野鳥も多く飛来する。男里川河口は鳥獣保護区にも指定され、環境省の「生物多様性の観点から重要度の高い海域」にもなっている。

大阪人の強い郷土愛に応えた本が少なかった

同書にはさらに多くの「知られざる大阪の話」が紹介されています。「永久保存版」と言っても過言ではない濃いエピソード、ビジュアルが収録され、価格は税込1650円と手ごろです。担当編集者に聞きました。

「第1弾の『大阪のトリセツ』を出版してみてわかったことは、大阪人は本当に郷土愛が強いということ、そして大阪の面白い話をもっと知りたいというニーズがあるということでした。調べてみれば、大阪には面白い話がまだまだたくさんあります。第1弾では紹介しきれなかったネタを集めて第2弾を出版することにいたしました」(担当編集者)

本書は「地図で読み解く」がコンセプトである一方、特に古地図では出典元が不明瞭なものがあったり、最終的に見つけることができなかったりしたこともあり、掲載を実現するまでにはかなり苦労したとも担当者編集者は言います。

「巻頭に掲載すべき昔の写真がなかなか見つかりませんでした。掲載している御堂筋の写真は、たまたま会社で所蔵していた昔の絵はがきから取ったものですが、この写真がいつ、どこから撮影されたものかを調べるのも苦労しました。写真に載っている銀行の位置と近鉄電車の看板の名古屋までの所要時間から、おおよその年代を探り当てたりしました。『地図で読み解く』をコンセプトにしているので、地図中心におもしろく読めるよう、古地図、昭文社の地図、国土地理院の標準地図、や空中写真を駆使しました。前から順にパラパラとめくっていただくとわかりますが、同じ種類の地図が続くことはほぼありません。内容に合わせて最適な見せ方を考えてこのようにしました。制作過程では、レイアウトが固まっていたのに、いい古地図や資料が見つかったからとやり直したこともありました」(担当編集者)

お祝いの気持ちも込めてオリックスカラーの表紙に

担当編集者の情熱は誌面を見れば一目瞭然です。

「大阪で生まれ大阪で育った人も、他県から大阪に引っ越してきた人も、ぜひ一度手に取って読んでください。とくに今回は南大阪の話が多いので、大阪南部に住まわれている方にはお勧めです!第1弾の表紙は黒と黄色の阪神タイガースのカラーにしましたが、この第2弾は昨年日本一になったお祝いの気持ちも込めてオリックス・バファローズのカラーです。昭和生まれの大阪人には懐かしい南海ホークス、近鉄バファローズの物語も載せていますので、そちらもぜひ楽しんでいただければと思います」(担当編集者)

 

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