高齢の飼い主が亡くなり保護団体へ 9歳柴犬が器で食べない理由…「人間から食べさせてもらいたいと思っているのかも」

松田 義人 松田 義人

高齢の飼い主さんが亡くなってしまい、親族からの放棄の相談を受け、保護団体・アルマ東京ティアハイムに引き取られた推定9歳の柴犬・まるくん。何もない日常ではニコニコして過ごしていますが、自分のペースを乱されたり、人間が不意に動くと「ギャギャーン」と鳴くという、ちょっとこだわり強めのワンコでもありました。

自分内ルールに反すると「ギャギャーン」

それまでに経験したことがない場面、知らない人間などを前にして、警戒心から固まってしまったり吠えたりするワンコはよくいます。しかし、まるくんの場合、どうも警戒心が強いというよりも、こだわりが強い様子。目の前で「自分内ルール」以外のことをされると、「ギャギャーン」「ギャーギャー」と鳴き叫んでしまいます。

他のワンコや人間に対し「近づけば離れるが、離れれば近づいてくる」という柴犬特有の距離の保ち方、いわゆる「柴距離」は、まるくんもご多分に漏れずよくします。しかし、一般的によく言われる「柴距離」よりも、まるくんの場合は「まる距離」とも言うほどに繊細です。人間がまるくんの体に触ろうとすると「ギャギャーン」。さらに散歩に行くためにリードをつけようとすると、また「キャイーン」。いざ散歩に行くと、楽しそうにはしているものの、人間との散歩のペースにこれまた慣れていない様子で、まるくんの排泄物を人間が取ろうとしゃがんだだけで、「ヒィッ」と悲鳴をあげてしまいます。

スタッフは、「他人から見ると、『ワンコを虐待しているのではないか』と誤解されるから、せめて『ワンワン』とかの鳴き声にしてほしい」と笑いますが、それくらいまるくんはこだわりが強く繊細な性格でした。

「器からは食べないが、手であげると食べる」その真意は

さらに、まるくんのこだわりの最たるものが、ご飯の食べ方でした。器にご飯をあげようとすると食べない一方、手であげたり、投げたり、器から床に出してあげるとスンナリ食べることがあります。

スタッフによると、このまるくんの独特の食べ方は、アルマに来て慣れていくにつれて強まっていきました。スタッフの推測では「まるくんは『器によそってもらったご飯を自分で食べる』ことがイヤで、『人間から直接食べさせてもらいたい』と思っているのかも」とのこと。言い換えると、まるくんが人間にご飯を食べさせてもらうことを望んでいて、こだわりというより、人間に甘えたり、人間とより深くコミュニケーションを取りたがっているのかもしれません。

施設に来て1年。環境に慣れて、成長したまるくん

そんなまるくんも、アルマに来てそろそろ1年。気づけば10歳になりました。

来た頃と比べれば「ギャギャーン」の機会はずいぶん減りました。むしろニコニコしながら過ごす時間のほうが増え、散歩などでもスタッフとの歩調もバッチリ。歩き始めこそ「早く早く」と人間を引っ張ってしまうまるくんですが、気持ちが落ち着くと、すぐに穏やかな歩調に変わります。スタッフは「まるくんとの散歩は、歩いた人だけがわかる心が和む穏やかな時間です」と言います。

スタッフを癒すほどまでに環境に馴染み成長してくれたまるくんですが、ただし「絶対に欲しい」大好きなオヤツを求めるときは人間をジーッと見つめ続けてヤメないという、これまたかわいいアピールも。まるくん特有の愛らしいコミュニケーション術は、今日も関係者全員を和ませていますが、スタッフは「こんなにかわいいまるくんに、1日も早くピッタリの里親さんが見つかるといいな」とも語ってくれました。

▽アルマ東京ティアハイム/NPO法人アルマ
http://alma.or.jp/

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