レジ機能がついたショッピングカート、店内の至るところにAIカメラ 目指すは完全無人化…IT駆使した「スマートストア」の挑戦

吉田 祐貴 吉田 祐貴

急速にIT技術が発展し続けている現在。日常のさまざまな場面でIT技術が駆使されていますが、「小売業のデジタル化」を目標にIT技術に力を入れる企業があるのをご存知でしょうか。その名も株式会社トライアルホールディングス。福岡市から始まった同社は、福岡を中心にディスカウントストアを全国に展開。商品ラインナップは生鮮品など食品に注力していますが、実は社内に「ソフトウェア開発室」をもつ企業として注目を集めています。

同社の事業で特に話題となったのが、日本初となる「スマートストア」の営業。昨今の物流状況や円安などの関係で物価の値上がりに苦しむ小売業界ですが、同社の経営するスーパーでは相場より大幅に安価での販売が実現できたそう。では、普通のスーパーとは一体何が違うのでしょうか。

株式会社トライアルホールディングスの「スマートストア」とは?

最も大きな特徴は、「スマートショッピングカート(以下、SSC)」が導入されている点。このSSCにはバーコードリーダーが設置されており、カゴに入れる際に商品のバーコードをスキャンします。

SSC専用の決済ゲートを通過すると、同社の会員であれば登録済みの決済情報で清算が可能。顧客のレジに並ぶ手間が省けるだけでなく、レジの人員削減効果もあります。

店内の至るところに「AIカメラ」を設置するのも特徴の1つ。店内カメラというと万引き防止などで活用されているイメージですが、スマートストアでは防犯目的以外にも、在庫の陳列状況や顧客の行動分析にも使われているのだそう。

例えば、AIカメラが商品棚の欠品を感知すると、バックヤードにアラートを出して商品の補充を行います。また顧客のニーズを常にAIで分析することによって、より顧客に合った売り場づくりに繋げているのだそうです。

さらに、AIを使うことでメーカーとタッグを組んだ実証実験を効果的に行い、集めたデータを相互のマーケティングにも活用できるのだとか。他にも会員登録した顧客の情報をもとに、おすすめの商品やクーポンを配信したり、SSCでスキャンした食材を使用したレシピを提案してくれる点も魅力と言えるでしょう。

今後トライアルグループでは、2025年までに店舗の完全無人化を目標にしているといいます。現在最先端となるのは、福岡県若宮市に2022年4月20日にオープンした「トライアルGO脇田店」です。

同店のSSCには日本初となる、酒販売の年齢確認不要を実現する24時間顔認証決済システムや、商品のスキャン漏れを防止する「自動検知アラーム装置」を搭載。何より、世界的にも初めての試みである「AIカメラと連動した電子棚札」は、AIカメラが分析した顧客行動に応じて、売れ残り商品を自動で値下げする仕組みになっています。

株式会社トライアルホールディングスの広報に取材

画期的なシステムばかりですが、なぜいち早くIT技術やAIに着目したのでしょうか。株式会社トライアルホールディングスで広報を担当する辻井さんにお話を伺いました。

――IT技術と小売業をかけ合わせようと思ったきっかけは何でしょうか?

弊社の祖業の1つにITの会社がございまして、長年にわたってIT投資をし続けていたことがきっかけです。約40年前から「ITを使って流通を変える」というビジョンのもとで小売業に進出しました。そこから小売業に進出し、最先端の技術を活かした“効率化された店舗網でモノを流通させるディスカウントストア”が誕生しました。

――現場での実験結果をふまえ、それを活かしていく経営が行われていると拝見いたしました。具体的にはどれぐらいのスピード感で実験結果の反映をお考えなのでしょうか?

それぞれ取り組みによってスピード感も変わっては来ますが、現在最も力を入れている「スマートショッピングカート」につきましては、現在、100店舗以上、約1万1000台導入させていただいております。

   ◇   ◇

これからもさらなる技術向上をねらうトライアルグループ。データや知見を蓄積し、次々と新しい試みに挑戦していく同社ならではの「先見の明」があったのでしょう。今後全国にITやAI技術が盛り込まれたスーパーが、どれだけ普及していくのか楽しみですね。

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