地方で動物病院を営む獣医師、はぐれ獣医の繰り言さん(@hagure_vet)がTwitterに投稿したツイートが話題です。
「だから! 動物連れで田舎に移住するときはあんたのペットを診れる動物病院の有無、夜間救急との距離を確認してから家を建てなとあれほど言っただろう! あたしゃフェレットすら数回しか診たことないし、あんたが問い合わせしてきたその動物が哺乳類なのかどうかもよく分からないんだよ!」
『千と千尋の神隠し』の湯婆婆のセリフを思わせるユニークな「注意喚起」について、はぐれ獣医の繰り言さんにお話を聞きました。
予想外の動物名に「それは哺乳類!?」
ツイートにある「その動物が哺乳類なのかどうかもよく分からない」というのは、もちろん先生のジョークです。とはいえ、電話口で突然、予想もしない動物の名前が飛び出たため、一瞬混乱したそうです。リプ欄には犬や猫以外のペットを飼う方からの経験談も多く寄せられました。
「鳥さん診れる先生って、首都圏外れると少ないんですよね。もともと少ないから余計に」
「エキゾチックアニマルのうさぎを診られる獣医は少ないので、夫の異動話が分かってすぐにうさぎ専門の獣医に相談したら、日本獣医エキゾチック動物学会の先生をご紹介頂きました。定期検診や爪切りは最寄りで、歯の疾患はご紹介先を考えています」
犬や猫以外の動物を連れて地方に移住する際の注意点について、はぐれ獣医の繰り言さんに、詳しくお話を伺いました。
診察出来る獣医師がいない場合も
ーー「哺乳類なのかどうかも…」という動物はどんな患畜だったのですか?
「アライグマ科の動物『キンカジュー』でした。いきなり電話口で『キンカジュー診れますか?』と言われたので理解が追い付かず、『え? 何だっけ? 爬虫類? 鳥?』となりました。その後、近隣のエキゾチックが得意な先生をご紹介しました」
ーー地域によって患畜の種類は違うものなのですか?
「新卒からずっと今の地域で仕事をしているので都会との比較はできませんが、やはり都会の獣医師の方が、診察する動物の種類は多いと思います。犬・猫はほとんどの動物病院で診ることができますが、それ以外の動物は病院の得意分野が明確に分かれます。
そもそも地方はペットショップで扱う動物の種類が少なく、都会で仕事をする先生たちが当たり前に診ている動物でも、地方に来れば診られる獣医師がいないこともあるという、注意喚起を込めたツイートでした」
大切なのは「飼う前に調べる」
ーー「エキゾチックはさっぱりだけど、山羊・羊・ミニブタ・ポニー・アルパカ・ラマあたりなら頼まれれば診ちゃう」と、ツイートされていましたね。
「私の専門は犬・猫の皮膚科ですが、勤務医時代に牛豚やふれあい動物園での診療経験があるため、いわゆる『中小家畜』はひと通り診ることができます。田舎ですので、野生動物とケンカをしてケガをした動物が運ばれてきたり、『山に逃げて野犬化したうちの犬を麻酔かけて捕まえて欲しい』『草競馬に連れてきた馬が脚をケガした。今からそちらに運びたい』といったお問い合わせもあります(笑)」
ーー珍しい動物を診てもらえる動物病院を見つけるコツは…?
「エキゾチックアニマルなど珍しい動物を診療する獣医師は、その分野の学会・研究会等に所属していることが多いので、公式サイトなどで所属を公表されている病院を探すと良いかもしれません。とにかく、『飼う前に調べる』ということに尽きると思います。珍しい動物を飼うときは、行動圏内に診療可能な病院があるか必ず調べて欲しいです」
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はぐれ獣医の繰り言さんによると、都心部では珍しい「ヤギ」や「ミニブタ」などの診察の問い合わせが来ることもあるそうです。
「最近はミニブタをさらに小さく改良した『マイクロブタ』という品種がブームになりつつありますが、エキゾチックペットや家畜の診療経験のない獣医師は対応が難しいため、購入を検討されている方は特に注意して欲しいです。また、家畜を個人で飼養する際は必ず、管轄の家畜保健衛生所への届出が必要です。『マイクロブタ』も対象なので、気をつけてくださいね」(はぐれ獣医の繰り言さん)