有馬記念の裏側でもうひとつの戦い
年末の風物詩にもなっている競馬の「有馬記念」(12月25日)が近づく中、アパレルブランド「CAVALEIROS.(カバレイロス)」(東京)では悲願の初GⅠ制覇へ挑むディープボンド(牡5歳)の公式グッズを取りそろえ、応援セールを実施中だ。それと同時に本邦初となる「フランスギャロ」公式グッズも新発売。プロデューサーの林田達樹さん(49)に契約、販売までの経緯と競馬愛を語ってもらった。
クリスマス決戦となる今年の有馬記念で、アパレルブランド「CAVALEIROS.」がもうひとつの大勝負に出ている。昨年の2着馬ディープボンドの馬主とライセンス契約を結び、商標も登録。おしゃれなジョッキーパーカーやマフラータオル、トートバッグ、キャップなどの応援グッズを販売し、悲願の初GⅠ制覇を後押しする。
「凱旋門賞は残念な結果でしたが、日本に帰ってから調子を上げていると聞いていますし、最高の結果を期待しています」
そのディープボンドは21日にリーディングを独走する川田将雅騎手がまたがっての最終追い切りを完了。本番に向け、生涯最高と言っていいほどの仕上がりを見せている。これまで国内GⅠでは2着が3度。昨年の有馬記念でも凱旋門賞大敗のショックを吹き飛ばして2着と好走しており、林田さんに力が入るのも当然だろう。
さらに、林田さんが凄いのは凱旋門賞が行われるロンシャン競馬場などの運営を手がけるフランス競馬の統括団体「フランスギャロ」とも契約を締結し、公式グッズを販売しているところだ。もちろん、日本ではここだけ。ライバルに差をつけたい競馬ファンの心をくすぐることは間違いない。
そんな林田さんは、1973年2月20日、阪神競馬場の裏、西宮市段上町の生まれ。小学生のころは熱心な阪神ファンだったそうだが、週末によく訪れていた親戚の家ではいつも競馬中継が流れていた。
「青芝フックさんや出光ケイさんの時代。ジョッキーはルドルフの岡部さん、南井さんや河内さん。少しずつ競馬に興味を持ち始め、阪神と同じように、なかなか勝てないホワイトストーンやイクノディクタスが好きでした」
21歳から25歳までアメリカのニューヨークで過ごし、深夜の高級ピアノバーでのアルバイトで生計を立てた。その後は仕事で名古屋、上海、韓国へ。2011年に大阪府茨木市に飲食店を出し、さらに2015年、北新地にクラブをオープンさせたころから再び競馬との縁が深まり、人生が劇的に変わる。
「茨木市の店でたまたまよくお話ししていたのが前田晋二さんでした。馬主さんと知る由もなく、仲良くさせていただくうちに京都競馬場へ誘われ、そのとき、不思議と勝つことが続いて。キズナのダービーは仕事で行けなかったんですが、それならとフランスの凱旋門賞へ招待されたんです」
キズナからDEEP BONDへ
これがフランス競馬との出合い。2021年にディープボンドが凱旋門賞へ初挑戦した際は現地での応援はコロナ禍でもあり、林田さんと馬主「ノースヒルズ」のレーシングマネージャーのみという有り様。そこで何とか盛り上げられないかと思い、前哨戦のフォワ賞を勝利した記念のパーカーをつくって関係者に配ると多いに喜ばれたという。
これをひとつのきっかけにして今年8月にスポーツアパレルブランド「CAVALEIROS.」を設立した。名前のカバレイロスはポルトガル語で闘う騎士を意味し、ワンポイントロゴのCAVALOS(カバロス)は馬を表すとのこと。コンセプトは「強さとしなやかさを兼ね備えた人馬一体感デザイン」「プロフェッショナルな情熱、人とコラボする」とした。
「野球やサッカーと同じように、競馬ファンも自分が好きな馬のグッズを身につけて応援に行く。しかもデザイン性が良いものであれば、スポーツとしてより盛り上がるのではないか」
そんな熱い思いをオーナーの前田晋二氏に提案すると快諾。「DEEP BOND」の商標も取得し、販売することになった。さらに、今年の凱旋門賞には日本馬が過去最多4頭も出走するという絶好のタイミングに着目し、JRAのパリ、ロンドン駐在事務所の力を借りてフランスギャロ側とメールで交渉。一方でタイトルホルダー、ドウデュースのオーナーとも直接交渉し、凱旋門賞での日本馬応援ブースの設置にこぎつけた。
荷物がロンシャン競馬場に届いたのは凱旋門賞開催前日の10月1日と、ギリギリに間に合う形となったそうだが、画期的な応援ブースは予想を上回る大盛況。しかし、林さんはすかさず、帰国後にフランスギャロと交渉に入り、来年に向けた凱旋門賞へのブランディングも兼ねて日本国内でのグッズ展開を企画し、契約をまとめた。
現在はクリスマスセールとしてオール20%オフ。「ディープボンド」「フランスギャロ」公式パーカーを購入するとオリジナルのキーリングがついてくるサービスも実施している。
「デザインはすべて僕が担当し、競馬ファンにしかわからない細かさに注意を払いながら、次は何が出てくるのかワクワクさせるブランドにしていこうと思います」と林田さん。確かな国際感覚としっかりと足取りで前へ進み、これからの競馬シーンに彩りを添えていくつもりだ。