店主「福山雅治に似ているね!」記者「…(全く似てません)」ねとらぼランキングで島根1位のうどん店主はとにかく陽気なキャラだった

山陰中央新報社 山陰中央新報社

 インターネットメディア「ねとらぼ」が発表する島根県のうどんの名店ランキングの1位に、浜田市弥栄町高内の「陽氣な狩人」が輝いた。山あいの立地ながら市街地の店を抑えてトップに躍り出た。「弥栄のうどん」とはどんな店なのか、訪ねた。

  アイティメディア(東京都千代田区)が運営するメディア、ねとらぼの記事「島根県のうどんの名店」ランキングTOP5! 1位は「陽気な狩人」【2022年10月版】」(https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/994447/)によると、ランキングは飲食店情報などを掲載する「Googleクチコミ」のユーザー評価やクチコミ件数を参考に割り出したもの。都道府県別に、ラーメン店やスーパーといった多様なランキングを発表している。陽氣な狩人は10月末時点で、最高5ポイント中4.4ポイント、129クチコミだったという。

 店があるのは浜田市街から山間地を車で30分ほど進んだ県道52号沿い。弥栄小学校の約500メートル北にある。市街地からは遠く離れ、周りには田園や山しかなく、交通の便が良いとは言いにくい。この立地でありながら人気が高いということは、よほどうどんがおいしいのだろうか。 

 味だけじゃない?1位の理由

 店の入り口の天井や壁は全て木造で、自然な温かみを感じる。店内は約100平方メートルと広く、テーブル席や座席が計30席ほど。夏はテラス席も利用できるようで、のどかな田園風景が望める。

 一番人気だという鍋焼きうどん(950円)を注文した。鍋焼きうどん定番の牛肉や油揚げ、かまぼこといった具材に加え、どちらも秋の味覚のシイタケの天ぷらと柿が載っていた。麺は太麺が多いうどんにしては少し細いが、しっかりと腰のある歯応え。素直に「おいしい」と言えるうどんだ。

 ランキングが発表されて以降、広島、山口県といった県外の客が増えたという。しかし、店主の今田孝志さん(71)は「味だけで言えば、うちよりおいしいうどん屋は他にもたくさんある。1位になったのは、他の店にはない物がたくさんあるから」と話し、にやりと笑った。 

 明るい店主のこだわり

 店の一番の特徴は今田さんのとにかく明るい人柄。入店した記者に開口一番「お客さん、福山雅治に似ているって言われない?」と言ったり(全く似ていない)、自身の写真を使ったポスターや缶バッジを製作したりと、目立つことが大好き。店名の「陽氣な狩人」は、狩猟免許を持つ今田さんがある雑誌に掲載された際、今田さんを表す言葉として見出しに使われたものを引用した。

 今田さんは来店したお客さんに必ず最低一度は声をかけることがこだわり。「どこから来たの」「こんな店、どうやって知ったの」と気さくに話しかけ、食事そっちのけで話し込む客もいるという。「こんな山奥まで来てもらったんだから、うどんを食べるだけでなく少しでも楽しんで帰ってもらいたい」(今田さん)という思いが根底にある。

 今田さんは元々、浜田市の中心部、相生町で「うどんの今田」を約30年経営した。義理の両親がオープンした現在の店と兼業で経営していたが、2013年にうどんの今田を閉店し、「陽氣な狩人」一本にした。

 半ば隠居生活のつもりで山あいの店に移ったが、市街地から離れても、今田さんを慕う常連客やその知り合いが次々に訪れてくれた。猟などの忙しさに追われながらも営業を続けるのは、そんな常連客への恩返しでもある。

 メニューにはイノシシ肉も

 「他の店にはない物」はメニューにもある。イノシシ肉の入ったカレーうどんや、イノシシ肉の炭火焼きローストも人気だ。今田さんは近くの山でイノシシ猟をする傍ら、店に隣接する獣肉加工処理施設の代表も務め、イノシシ肉の精肉加工や販売を行うこともある。

 今田さんによると、施設ができる以前は、狩ったイノシシは穴に埋めての廃棄か焼却処分されることが多く「狩ったからにはいただくべきだ。捨てるなら狩るべきではない」と心を痛めていた。森が豊かな弥栄のイノシシは栄養価が高く脂の質が良いと言い、イノシシ肉の魅力を広めるためにもメニューに加えている。客からは「イノシシがこんなにおいしいなんて知らなかった」と好評だそう。

 他にも店内の販売コーナーには、弥栄町の住民が作った絹のマフラーやチタンの工芸品、店のオリジナルTシャツが並ぶ。うどん店とは思えない充実ぶり。今田さんの人柄はもちろん、店内でさまざまな楽しみがあることが、満足度の高さにつながっているとみられる。

 島根1位と評された山あいのうどん店は、陽気な店主とおいしいうどん、多様な品ぞろえが楽しめる、特別な場所だった。今田さんは「他の店にはない、自然の景色と料理の味を楽しんでもらえればうれしい」と来店を呼びかけた。

 「陽氣な狩人」の営業時間は午前11時~午後3時。定休日は毎週木曜と第3水曜。

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