2022年も残りわずかとなったこのタイミングで、ものすごい絵本作家の才能が見出されました。漫画家のビーノ(@bambi_no_3)さんのお兄さんが愛する甥っ子(ビーノさんの息子さん)のために手作りした私家絵本です。タイトルは「トマトちゃんのおさんぽ」とほのぼの風ですが、その物語たるやダークファンタジーな笑えるサイコ絵本。出版社の新人発掘担当さん、この新星、早い者勝ちですよ。
「兄からうちの息子(1歳半)へのクリスマスプレゼントの絵本が思いのほか力作だったから見てほしい」とビーノさんが絵本の画像を公開すると、「2022年度の最高傑作」「鬼才!」「出版希望!!買います」の称賛のコメントが殺到し、7万以上のいいねがついています。
扉絵から不穏な空気
Eテレの番組「いないいないばあっ!」の人気ミニアニメ「トマトちゃん」を思わせる楽しげな表紙。でもめくると、ぺしゃんこにつぶれたトマトの扉絵が不穏な空気を漂わせます。本文では、トマト4きょうだいはバナナから散歩を誘われ、枝から地面に飛び降りるも最初の2人は着地に失敗。果汁で描いた「バナナ」のダイイングメッセージを残して息絶えます。動揺したバナナは、自身の皮をクッション代わりにすることで、末っ子トマトだけが助かりますが、次の瞬間さらなる悲劇が…。
トマトの冒険譚と思いきや、ページをめくるたびに不意をつかれ、想像をことごとく裏切られる展開、そして読者を置き去りにしてすべてを笑いに包み込んでしまう衝撃の結末。最後のページには、小さな字で「小さいおこさまには見せないで下さい。物語はフィクションです」と。えっ、これ甥っ子さんへのクリスマスプレゼントでは…ビーノさんに聞きました。
ー「きんぎょがにげた」「そらまめくんのベッド」のような物語を想像していました。全然違って面白いです!
「最初読んだ時は「グロ!!」と思いました。あと、「無駄にクオリティー高いな」とも」
ーお兄さんのお仕事はカメラマンとツイートされていましたが、どんな方ですか
「普段はどちらかというと無愛想です。真面目な仕事人間のように見えて、中身は小学生みたいなところがあります。冠婚葬祭の粛々とした場で、撮影した写真の中から母の白目の瞬間をアップにして無言で見せてきたりします」
ー「トマトちゃんのさんぽ」にもそこはかとなく漂っていました
「私の息子のことはとても可愛がってくれていて、会うと気持ちの悪い赤ちゃん言葉で話しかけてくれています」
ーSNSでは「今もっとも書籍化が待たれる作品と言っても過言ではない」「お腹痛い。笑」「超名作!!シュールで大好き」「天才か」と話題です
「正直、予想以上に話も絵も上手くて驚きました。漫画家である私でさえこんなにバズらないのに…。この才能を活かしカメラマンと動画編集と絵本作家の3足のわらじでやってみては、と思います」
お兄さん「漫画家になった気持ちです」
昔は漫画家にあこがれていたというお兄さん。twitterをしていないため、自身の問題作がバズったことを一切知らなかったそうです。
ビーノさんがLINEで知らせると、「下手な絵ですがみていただいてありがとうございます」「たくさんの反響を受けて何だか漫画家になった気持ちになれました」「絵本は最初の数ページまでは、子供用に描いてましたが、昔から少年ジャンプとか、刃牙を読んでるせいか、作風がこんなんになりました。なので途中から妹夫婦に向けて描いてました。グロいから。」と美味しんぼの海原雄山のアイコンで実直なコメント。ビーノさんから「真面目か!」と突っ込まれていました。また「拡散までしてくれた人たち、すまん」と謝意を述べていました。
ビーノさんは現在コミックNewtype(KADOKAWA)で「女子高生の無駄づかい」を連載しています。→https://comic.webnewtype.com/contents/joshikosei/
12月9日には「女子高生の無駄づかい」10巻とショートコメディ「宇宙とかと比べたらちっぽけな問題ですが」3巻が同時発売されました。
「女子高生の無駄づかい」はさいのたま女子高等学校(通称「さいじょ」)に通う個性派ぞろいのJKたちが女子高生活を無駄に浪費する日常学園コメディ。2019年にテレビアニメ化、2020年にテレビドラマ化されました。