「画風と作者のギャップ選手権あったらいい線いけると思うんよね」ーー岐阜県在住の画家あおいけいさんのツイートが注目を浴びています。
あおいさんは9日、自身のTwitter (@Abspko)を更新。冒頭の投稿文とともに1枚の写真を公開しました。純真な瞳でこちらを見つめる男児2人と、絵筆を持つ赤い髪のあおいさん本人。男児2人のかわいらしさや商店の並ぶのどかな町並み、緑豊かな山の端(は)にもさまざまなストーリーを想像し、いつまでも見入ってしまいます。
実は、あおいさんのうしろに写っているのは油絵作品。男児2人も、背景も、全て絵の中の世界です。ユーザーからは「写真かと思った」「絵なの!?」「3人一緒に撮ったみたい」「うしろは絵なんですね」「どこからが絵か分からない」「リアルすぎる」「ガチですごい」「カッコいい」「すばらしいです」などの驚きの声とともに10万を超えるいいねがつけられ、現在も拡散は続いています。「こんなバズるなんて夢や」と驚くあおいさんに話を聞きました。
画風と自身、実は「合っていると思います」
作品名は「時はゆるやかに」。約3年前から1620ミリ×1303ミリの F100号キャンバスに描き始め、制作は現在も進行中です。
──Twitterに投稿をしようと思ったきっかけは。
「ホキ美術館(千葉市緑区)という写実専門の美術館があり、この絵はホキ美術大賞展の2次審査に出展する予定の絵です。そのため毎日加筆を行っており、(Twitterには)日々の進捗を載せていました。この日はちょうど美容院に行って髪の色をガラッと変えたので絵と自分を一緒に撮って載せたところ思わぬ反響があり、困惑とともに『やっと私を見つけてくれたか』という思いもあります(笑)。にしても予想以上のバズりでびっくりしています」
──画風と自身のキャラクターについて、自分ではどう分析。
「画風と中身のキャラクターは正直合っていると思います。誰よりも上手になりたい気持ちと、精密にすればするほど楽しいと感じる気持ちと、常に現実世界の美しさやその仕組みについて考えています。私だからこそ描ける作品だと思います。ただファッションの好みや第一印象からはギャップを感じるのではないかと思ってツイートしてみました」
──絵の中の世界は、実在の人物や場所ですか。
「実在する岐阜県の私が生まれ育った場所です。子供は私の子供達です」
あおいさん自身による作品解説を紹介します。
「子供が産まれ、母になり、子供の成長と過去の自分を重ねることが増えました。『自分がこのくらいの頃こうだったなぁ』と人生をもう一度なぞるかのような感覚があります。消失点、つまりこの風景を見ている人物の目線を長男に合わせました。過去の自分が見ているかのように。(長男である理由は、どうしても次男は『長男もこんな時あったなー』と比較対象が長男になってしまう事が理由です)。この絵には私の人生が詰まっています。この地で産まれ、家族、友達に愛された事、家族を離れ、この地を離れた事。もう戻ることの無い思い出が蘇ります。加えて子達の物語もすでに始まっています。“時はゆるやかに”、しかし確実に全てを変化させながら螺旋を描き流れてゆく。そんな想いを描いた絵です」(あおいさん解説より引用)
あおいさんが独学で絵を始めたのは15歳の頃。「ほんの少しの線の違いで完成度が変わる」という具象人物画に魅了され、人物画を中心に作品を制作しています。一貫するテーマは「絵を生かす」。「出産を経験し、命の連鎖や時の流れについて強く考えるようになりました。歴史からみれば“今”は特別でもなんでもなく、私たちは100年もすれば跡形もなく消え去る存在です。その世界の一瞬ははかなくも美しい輝きであると考え、その美しさを作品を通し後世に遺したいと思い作画しています」(あおいさん)。
今年10月にはフランス・パリにて作品を出展予定。Twitterでの反響を受け、国内での展示会も検討中だそうです。
▽あおいけい 岐阜県生まれ。15歳頃から独学で絵を始める。国内外で展示販売や絵画制作。絵画教室も運営する。