埼玉県警が県内の中高生に配布した啓発漫画「暴力団から足を洗おうとしたらうっかり猫に転生しちゃったので前職での知識を活かして青少年を反社会的組織から守ることにした」の素人離れしたクオリティに、プロの漫画家が反応。「これは響くわ…やんじゃん埼玉県警。」とTwitterに投稿したところ、「大人にもわかりやすい」「続きはどこで読めますか」「埼玉県警に異常に漫画の上手いポリスがいるのかな」といった反応が相次ぎ、大きな注目を集めた。投稿した漫画家の荻野眞弓さんと、埼玉県警本部に話を聞いた。
車にはねられて猫に生まれ変わった暴力団員。飼い主のサトルが「誰かの代わりに荷物を受け取りに行ったりお金をATMから引き出したりするだけで5万円くれる」という「超簡単」で「稼げるバイト」を見つけてきたと聞き、前職というか前世の記憶に火がついた!
「そんな虫のいい話あってたまるかぁ!!」
「『高額』『簡単』『受け取るだけ』とか謳ってるバイトはオレオレ詐欺等の『受け子』の仕事である可能性がひじょ〜〜〜に高い!!」
漫画では、「受け子」や「出し子」が詐欺グループにとって捨て駒でしかないことや、グループの背後には往々にして暴力団がいること、若い人が憧れがちなアウトローな世界を取り巻く厳しい現実などを、猫(元暴力団員)の口を借りてテンポよく解説。「あなたも狙われている」とした上で、困ったことがあれば警察などに相談するよう呼び掛けている。
荻野さんは「どんぶり銀行あつあつ支店」「たまのこしかけ」などで知られる漫画家。啓発チラシは、中学1年生の長男が学校でもらってきたという。
「何よりもまず、伝えたい人(中高生)に伝える文法で描かれていることに関心しました」と荻野さん。「人気が高い“転生モノ”の構文を使っているところにも、担当者の『届けよう』という熱意と工夫が感じられます。犯罪に巻き込まれる可能性、反社に関わるとその後の人生にも影響があることにも言及していて、なるほどな〜と思いました。ドラッグの誘い編、宗教編など、シリーズ化できそうですね」
…激賞である。
埼玉県警、想定外の反響に「驚き」
埼玉県警本部の捜査第四課にも取材した。
担当者によると、この漫画を描いたのは同課の30代の女性捜査員。これまでも県の暴力団排除条例に基づき、青少年育成の観点から、県内の中学1年生と高校1年生に毎年同じような啓発チラシを配布してきたが、この女性捜査員が担当したのは今回が初めてという。
「今年はより“読まれる漫画”になったと手応えを感じています。というのも、チラシ配布後に県警内の他の課から『子供が喜んで読んでいた』という声が聞こえてくるなど、今までにない反応があったんです」と担当者。Twitterでの荻野さんの投稿や反響の大きさも確認したといい、「SNSでの拡散は予想していなかったので、正直かなり驚いています。でも読まれてなんぼですので、これを機にたくさんの人に関心を持ってもらえたら嬉しいです」と話していた。
啓発漫画は埼玉県警の公式サイトで公開されている。