保護犬の譲渡活動を通じ、「殺処分ゼロ」の実現を目指すピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。同団体の全国の施設には、2500頭あまりの保護犬たちが暮らしていますが、中には重度の障害や持病を抱えていたり、シニア犬などもいます。こういった特別なケアが必要なワンコは、どうしても新しい里親さんが見つかりにくく、譲渡が難しくもあります。
こういったワンコは、同団体で多くのワンコと一緒に生活をし、スタッフによるお世話はもちろん、多くの支援者の応援のもとで生活をおくっています。
コメット(オス・当時推定14歳)も、こういった譲渡が難しいワンコのうちの1頭でした。動物愛護センターで保護された際、すでに高齢だったことに加え、口の中に腫瘍がありました。また、病気の影響で盲目となり眼球が膨らんでいました。さらに、前立腺肥大、嚢胞、フィラリア陽性などもあり、その体にいくつもの病気がありました。
スタッフ、他のワンコを明るくさせるコメット
しかし、これだけの病気を抱えながらも、コメットはとても人懐っこく明るい性格。暖かい日はドッグランで日向ぼっこをするのが大好きで、音の鳴るオモチャで無心になって遊ぶようなワンコでした。もちろん、他のワンコとも仲良くなれる子で、同室のワンコと争うようなことはありませんでした。同室のワンコたちと寄り添って寝たり、ご飯の際には周りのワンコが「早くくれー!」と吠え始めると、コメットも一緒に吠えてみたり。
スタッフはもちろん、他のワンコにも元気を与えてくれるような人気者のワンコでした。スタッフは「これだけ人懐っこく明るいのは、元飼い犬だったのかもしれない」と言います。
シニア犬・持病があることも「全て覚悟ができている」
ところでスタッフによると、最近では「シニア犬や病気のあるワンコでも、譲渡を視野にぜひ会ってみたい」という連絡が増えていると言います。
「ホームページを見た方から『高齢や病気持ちでも会いたいです』とご連絡をいただくことは最近増えてきましたが、なかなか譲渡までには繋がりませんでした。
コメットのことをホームページで知った方から、お問い合せがあった際にも、正直また同じ感じかな……と思っていました」
そう、このシニア犬で複数の病気があるコメットを「ぜひ引き取りたい」という里親希望の方が現れたのです。
この方が面会に来られた際、スタッフはコメットが抱えている全ての病気について説明しました。今後も治療が必要なこと、さらにシニア犬であることから介護も必要になっていることなど。
しかし、この里親希望者の方は「全て覚悟ができている」と言います。聞けば、この方、以前飼っていたワンコも、コメットと同じ口腔内腫瘍を患っており、治療の大変さはよく理解した上で、コメットの里親になりたいと考えたと言います。
いつもと違う様子に緊張気味に…
はたして、コメットはこの方の家族になることが決まりました。スタッフはこれまでコメットから元気をいっぱいもらっていたこともあり、団体を卒業することに、「良かった」という気持ちと寂しい気持ちの両方がありました。
また、いつもはニコニコ元気にで明るいコメットですが、譲渡の日は、いつもと違う様子に緊張気味でした。もしかしたら過去のトラウマがよぎるのかもしれません。また、目が見えないことから、周囲の変化は人間が思う以上に怖いものだったことでしょう。
そんな中で、新しい里親さんのお家に迎え入れられたコメット。なかなかケージから出てきません。しかし、里親さんと、そのお母さんが優しく声をかけ、愛情たっぷりに撫でてあげると、コメットも少しずつ緊張が解け、次第に団体のときと同じような明るさを取り戻していきました。
特に大好きだったのが、里親さんが買ってくれた「音の鳴るオモチャ」。このオモチャの音を鳴らすと、これまでのように「遊びたいモード」全開で遊ぶようになりました。
亡くなった先住犬も大好きだったカーペットでウトウト
コメットのペースを最優先に、迎え入れた里親さんはこう言いました。
「施設で一生を終えるなら、一頭でも家庭で引き取り、ゆっくり過ごしたほうがいいかなって。一緒におるだけでいいもんね」
コメットは当初こそ団体で使っていた毛布の上で寝ていましたが、今では里親さんのお宅のリビングにあるカーペットがお気に入りで、こちらで伸び伸び寝ることが多くなりました。実はこのカーペット、亡くなった先住犬も大好きだったそうです。
病気や障害も含めて大切にしてくれる「運命の家族」と巡り会えたコメット。これからもずっとこのまま里親さんと一緒に幸せに過ごしてほしいと願うばかりです。
ピースワンコ・ジャパン
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