日本最大の保護犬の譲渡活動を通じ、「殺処分ゼロ」の実現を目指しているピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。同団体に2017年に入舎した、ボナネというメスのワンコがいます。推定2015年生まれの小っちゃくて丸っこい真っ黒の元野犬で、フランス語で、「あけましておめでとう」を意味する言葉から「ボナネ」と名づけられました。
明るい笑顔がかわいいワンコですが、人間には不慣れのようで、スタッフが犬舎に招くと、隅っこに固まってビビってばかり。しかし、人間に体を触られても噛み付いたり吠えたりすることはなく、どうも極端に嫌がっているわけではなさそうで、穏やかな性格であることが伝わってきました。そのうちに抱っこをしても嫌がらなくなり、比較的早い段階からシャンプーもできるワンコでした。
保護犬としてはごく普通の対応のワンコに見えますが、しかし、このボナネ、実は体の不自由なワンコでした。
保護当初からほぼ3本脚で、歩くのが不自由だった
ボナネをスタッフが引き出したときから、後ろ脚の先が無くほぼ3本脚(右後肢先断脚)のワンコでした。保護犬ですので、過去にどんなバックボーンがあり、どうしてこのような怪我を負っているかはわかりません。しかし、この体の不自由さから、「ボナネを新しい里親さんに譲渡するのは難しいのではないか」とスタッフは考えていました。
ピースワンコは保護犬の譲渡活動がメインですが、しかし、引き出した犬全頭が必ず新しい里親さんにマッチングできるとは限りません。中には「病気がある」「体が不自由である」「噛みつき癖がある」といった理由などから譲渡が難しいケースもあり、こういった場合は同団体の施設で、他のワンコと一緒に生活し、その命をまっとうするまで同団体が全てバックアップします。
ボナネも本来ならば新しい里親さんに繋げらるのが理想ですが、ほぼ3本脚というハンデから「譲渡は難しいのではないか」と当初スタッフは考えていました。
トレーニングで根をあげないボナネ
しかし、スタッフが日々ボナネに接していると、だんだんスタッフに心を開くようになりました。また、ボナネが他のワンコと接している様子を見てもその性格の穏やかさなども伝わってきました。また、当初はほぼ3本脚というハンデから、歩くことにやや難がありましたが、試しにお散歩や人馴れトレーニングをやってみると、ボナネは根をあげず一生懸命取り組んでくれます。
当初「譲渡は難しいのではないか」と考えていたスタッフは、「確かに体にはハンデがあるけれど、きっとピッタリの里親さんとつなぐことができるはず。私たちも諦めずにがんばろう」と気持ちを入れ直し、さらに熱心にボナネに対して、本格的なお散歩や人馴れトレーニングをスタートさせました。
ボナネのがんばりにスタッフの目頭が熱くなる
やがてボナネはしっかりと歩くことができるようになり、お散歩好きになりました。また、当初は担当スタッフ以外にはなかなか心を開かないボナネでしたが、初めてのスタッフとの散歩もできるようになりました。
当時のスタッフは、成長を遂げたボナネの様子を見るのがとにかく嬉しかったと振り返ります。一番の思い出はすごく寒かった冬の日のこと。普段の担当スタッフとは違う、別のスタッフと楽しそうに散歩してくれました。慣れないスタッフとのお散歩から帰ってきたボナネに、「寒いなかよくがんばったね」と、温かいお湯でシャンプーしてあげたことを今でもよく思い出すと言います。
ハンデを乗り越え、見事新しい里親さんの元へ!
やがてボナネは「都会エリアでも生活できる」と判断され、当初いた奈良にある生駒譲渡センターから東京の世田谷譲渡センターへ移動しました。ほぼ3本脚というハンデがあっても、都会特有の散歩などもボナネはしっかりこなします。ちょっとシャイなところは相変わらずですが、慣れれば穏やかに甘えてくるかわいいワンコで、やがてピッタリの里親志望者さんが現れました。
もちろん、ボナネのほぼ3本脚というハンデもしっかり理解された方で見事、譲渡が成立。ボナネは約5年間に及ぶピースワンコでの生活を経て、無事卒業し、新しい犬生をおくるようになりました。
このボナネのように、保護犬には一頭一頭、バックボーン、性格、身体的事情は実に様々です。しかし、ピースワンコでは一頭でも多くのワンコを新しい里親さんに譲渡することを目標に、できる限りのトレーニングやマッチングなどを行っています。さらにこれらの活動を通じ「殺処分ゼロ」の実現も目指しています。今後もピースワンコの活動に大きな期待を寄せるばかりです。
ピースワンコ・ジャパン 世田谷譲渡センター
https://peace-wanko.jp/hogoken/wanko/?transfer%5B%5D=setagaya