中国に「隙」を見せてはいけない 習近平政権は、日本の防衛費増額をめぐる議論をどう見ているか

治安 太郎 治安 太郎

防衛費増額が物議を交わすなか、岸田総理は12月13日、防衛力の抜本強化は安全保障政策の大転換で時代を画するものであり、責任ある財源のもと、現在を生きる国民が自らの責任としてその重みを背負って対応するべきだとの意思を示し、増額を進める方針を改めて強調した。これに対してネット上でも反発の意見が数多く投稿されるなど、多くの議論を呼んでいる。当然ながら、国民への負担が最小限に抑えられるべきで、岸田政権としてもいくつかの財源を明確にし、なぜ今防衛費増大なのかをもっと具体的に示す必要があるだろう。

一方、岸田政権は来週、新たな国家安全保障戦略を閣議決定することになっているが、その中で中国の動向を「脅威」ではなく、「最大の戦略的な“挑戦”」と明記することが判明した。

自民党側は脅威と明記するべきと主張している一方、公明党側が脅威と明記すれば対立をあおると難色を示したらしいが、おそらく日本経済界も同様の認識を持っていることだろう。

日本では、軍事安全保障の業界人を中心に中国との関係を改めるべきだとの声が強い一方、最大の貿易相手国中国との関係は重要だとそれに反発する声も根強く、正に分断が見られる。

こういった様々な声や主張は十分に尊重されるべきだと筆者は思う。しかし、今年のロシアによるウクライナ侵攻や台湾情勢を巡る緊張など、大国間対立がいっそう激化する中、国家は他国の内政や国民の声などを公開情報やSNSメッセージなどを通して集約し、それらをもとに外交・安全保障戦略を常に練っている。

要は、こういったご時世においては、隙を見せないということが極めて重要になる。そうなれば、防衛費増額を巡る議論において日本国内でこれほど反発が強まっていることを習政権はどう見るだろうか。

国際政治の現実に照らせば、自国周辺の安全保障環境がいっそう厳しくなれば、防衛力をアップさせる、防衛費を増額させるということは極めて自然な議論である。そして、国際社会の本質は未だに弱肉強食(国家の平和や繁栄の責任はそれぞれの国家にある)の世界であり、それと現代日本人の平和観には大きなギャップがあることは否めない。日本有事になれば米軍が助けてくれるなどと思う日本人も多いだろうが、まずはそれが危険な議論だろう。

また、習政権は、日本が中国を脅威から挑戦と定義づけることをどう考えるだろうか。おそらくそれに喜ぶことはなく、日本国内は対中国で二分しており、中国に対して厳しい姿勢を取れる可能性は低いので、それをもとに対日政策を練ればいいと考えることだろう。

ウクライナ侵攻や台湾攻勢を巡る緊張に直面し、自由民主主義国家として、筆者はまず米国のように日本は中国に対して強い意志を示す必要があり、今回の国家安全保障戦略では脅威と位置づけるべきだと主張したい。また、国民自身も防衛費増額について単に反発するだけでなく、財源など真剣に中身で反発するべきだろう。

最初から拒否反応、中途半端な判断を露呈すれば、それだけ中国に隙を与えることになり、“日本は中国に厳しい姿勢は取れない”などと間違った判断を与えることになる。今日の中国に対して、“中国依存の日本”は絶対に示してはいけない。

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