からかってただけ? 軽率だった? 保育士の歪んだ「愛」を描いた漫画が話題 「声をあげられる人でありたい」「外からじゃ見抜けない」の声

太田 真弓 太田 真弓

虐待・暴行を意図したのではなく軽率な行為だった…と理由を述べる元保育士による静岡県裾野市の保育園での事件。今回の事件とは無関係ではありますが、保育士による「歪んだ」園児への関わり方を描いた漫画が話題になっています。

事件が発覚する前の2022年10月から、マンガ家兼ベビーシッターのさいお なおさん(@saionao_)がブログ・Twitterに『新卒保育士VS歪んだ愛の先生』を連載。こちらの話は本人が特定されないように脚色は入れてはいるものの自身の経験を反映して描かれたものです。

保育士1年目のさいお先生が、2年目のユガミ先輩先生とパートナーを組み、2歳児クラスを担当し1年を過ごしていくストーリー。

ユガミ先生は園児の一人であるAちゃんを執拗に可愛がったり、突き放したり、泣かせるようなことを言っては抱きしめたりします。時にはクラス全員に自分の感情をストレートにぶつけることもあり、その関わり方に新人のさいお先生は疑問を抱くばかり。

職場に、さいお先生の話を聞いてくれる元ギャル先生、ピンチの時にスッと現れるアルベキ先生、状況を確認しながら指導を行い、話し合いの場を設けてくれる園長先生がいることが救いです。

ある日、運動会の練習に追い込まれる中、ユガミ先生が遊んでいた園児を怒り、押し入れに閉じ込める事態に。すぐさま園児の元に駆け寄り、寄り添うさいお先生とユガミ先生との溝はますます深まっていきます。

周りの先生の助けもあり、運動会や発表会などのイベントをなんとかやり遂げたものの、ユガミ先生の考え方との乖離に「保育園を辞めるべきか否か」まで悩んださいお先生。1年が終わろうとする頃、園長先生が「一年間の反省会」の場を設け、さいお先生・ユガミ先生・園長先生の三者での話し合いが行われ…というクライマックスをむかえました。

この「反省会」シーン連載中の11月末、実際の現場で起こったニュースが飛び込んできたのでした。

連載中のTwitterリプ欄には、「ニュースを見てユガミ先生を思い出しました」「これってどうなん?と思った保育を目撃した時に声をあげられる人でありたいと思います…」「預けた園にユガミ先輩先生みたいな人がいたら外からじゃ見抜け無さそうです」「保護者に限らないけど絶対的な正解は無いけど、やってはいけない境界線がありますよね」といった声も届く事態に。

さいおさんは【51】話を更新後、「今回の話はさ 例のニュースへの憤りも込めてるんだ…」「人手が足りなさすぎて園側が保育士を選べない状況と、保育園が足りなさすぎて保護者側が園を選べない状況は、本当に早く解決されるべきよ しわ寄せは全部将来を背負う子どもたちにくるよ」ともツイッターで投稿しています。

「タイムリーすぎて」「あのニュースみた時に真っ先にユガミ先生思いだしました」「こんな先生って特殊なんだと思っていましたが、あまりにも酷いニュースが多くて悲しくなりました」「一気に読みました。周りの先生たちがいてくれて良かった。苦しいお話でした。続き読みにきます」「ニュースに出ていた先生達も本当に自分の行動を振り返ってみてほしい」といったコメントも届いていました。

結末が気になる中ではありますが、さいお先生のエプロンに描かれたカニや、ユガミ先生の顔の輪郭歪み具合など細部にまで注目している読者からの感想も寄せられています。

連載当初、さいおさんは「私も描いてて常々『こわ…』と思っているんですが、、一番こわいのは、全部本当にあったこと、という…ね…まだちょっとだけ続くのですが、最後はスッキリ系になると思うので、もう少しお付き合いください」ともツイート。漫画はさいおさんご自身の経験を綴ったものですがフィクションも含まれており、ランダムに改変し演出も加えて連載しているそうです。

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今回の静岡県裾野市の保育園で、園児を虐待したとして暴行容疑で保育士3名が逮捕された後、園長が事実を隠蔽したとして刑事告発されただけでなく、富山県や宮城県でも同様の事案が相次いで発生しており、こういった状況が決して珍しいことではないということが発覚しました。

厚労省では、全国の保育所等における実態や各自治体における不適切な保育への対応を把握するための調査を行うことを予定しています。ただ、見た目にわかりやすい虐待行為もありますが、心理的な虐待は、こういった調査からは分かりづらいことでしょう。

そんなとき、保育士の方々自身も気軽な気持ちで発言していることが、実は子どもを傷つけているのではないかということを改めて振りかえる機会となれば。また周囲の同僚の先生や園長先生も、違和感を感じたときはしっかりと対応することをお願いいたします。

ただ、保育園での労働環境や子どもたちの保育環境などが度々議論に上がるように、保育士の方々の心理的負担となるこの問題についても放置したままではいけません。親御さんたちが安心して預け、預かる先生方が心に余裕を持って園児たちと触れ合える環境であること、子どもたちを取り巻く社会がより良くなるよう願ってやみません。

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さいおさんの漫画『新卒保育士VS歪んだ愛の先生』はブログとTwitterで毎日連載中で、まもなく最終回予定。今後の連載にも注目です。また、子どもたちとのドタバタな毎日や実用的なテクニックをコミックにしたベビーシッターエッセイ漫画『3時間だけママを代わります-駆け出しベビーシッターの奮闘記-』(オーバーラップ)もamazonで販売中。

【さいおなおさん関連情報】
■Blog 「ベビーシッターさいおの日常茶飯」https://saioblog.com/
■Twitter https://twitter.com/saionao_
■Instagram https://www.instagram.com/saionao_/
■エッセイ漫画『3時間だけママを代わります-駆け出しベビーシッターの奮闘記-』(オーバーラップ)https://www.amazon.co.jp/dp/4824002060/ref=cm_sw_r_as_gl_api_gl_i_2R6N9G2FWNF4JVPZRG9K?linkCode=ml1&tag=saionao-22

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