「おまえも死ぬぞ 釈尊」
「衆生は不安よな。阿弥陀動きます。」
「コロナよりも怖いのは人間だった」
「仏の顔は何度でも」
これ全部、お寺の掲示板に書かれていた標語です。大抵どこのお寺にもある掲示板ですが、SNSで注目を集める鉄板ネタのひとつとして、近年は独自の存在感を発揮。2018年からは、ついに標語のありがたさやユニークさ、インパクトの大きさなどを味わうコンテストまで始まってしまいました。このほど5回目となる2022年の結果が発表され、大賞は「武器を捨て 数珠を持とう」(京都・龍岸寺)に決定。愛らしい絵と文字は、住職の長男(10歳)によるものだそうです。
仏教伝道協会が主催する「輝け!お寺の掲示板大賞」。今回、TwitterやInstagramにハッシュタグ「#お寺の掲示板大賞2022」を付けて投稿された“作品”は計4093点に上りました。同協会によると、1回目の応募は700点。反響は大きく、応募作も年々増え続けています。
ロシアのウクライナ侵攻などを踏まえ、反戦の思いを表現した大賞受賞作。言葉のシンプルな力強さもさることながら、砲身に数珠が掛けられた戦車や、銃を捨てる笑顔の兵士たちが描かれた絵も目を引きます。「武器を捨てて、数珠を持ち、拝む心(敬い感謝する心)を大切にしてほしい」という思いを、次代を担う子供自身が表現した点が高く評価されました。ちなみにこの龍岸寺、2018年には「NO ご先祖, NO LIFE」で「まいてら賞」を受賞するなど、ハイセンスな標語で常に話題を振りまいています。
ネットのコメントやSNSなどで心ない言葉を目にすることも多い時代です。「仏教伝道協会賞」を受けた妙慶院(広島市)の作品は「毒言吐いたら 自分も浴びる」。講評では「お釈迦様は『スッタニパータ』の中で、『人が生まれたときには、実に口の中に斧が生じている。愚者は悪口を語って、その斧によって自分を断つのである』とおっしゃっています。他者を傷つける言葉は、自分も傷つけることになります」と解説されていました。
独特のレイアウトで「修行がたらん」と力強くしたためたのは、同じく仏教伝道協会賞に選ばれた雲西寺(大分県中津市)。住職は「様々な局面で物足りなさを感じる時代。でも自分の努力や精進が足りていない部分もあるのではないかと、宗教者としての反省も込めて書きました」と明かします。
「中外日報賞」を受賞した超覚寺(広島市)の作品は「歯車1つ外れれば止まってしまう時計 私1人休んでも止まらない会社 だから私の役目は歯車じゃないんだな」。講評では、一般的にネガティブな意味で使われる言葉を、視点を変えることでポジティブにとらえる点を評価した上で、「人間という存在について考えさせてくれる」としています。
最後に、脱力感を醸しつつ妙に説得力のある標語で「笑い飯哲夫賞」に輝いた顕證寺(鹿児島県南さつま市)の標語を紹介しましょう。
「疲れたら休めばいいのよ」
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「輝け!お寺の掲示板大賞2022」の入賞作品は次の通り。
【仏教伝道協会大賞】
武器を捨て 数珠を持とう(京都・龍岸寺)
【仏教伝道協会賞】
私は今多くの死者の上に立っている そのことを忘れてはいけない(東京・本明寺)
毒言吐いたら 自分も浴びる(広島・妙慶院)
修行がたらん(大分・雲西寺)
【中外日報賞】
歯車1つ外れれば止まってしまう時計 私1人休んでも止まらない社会 だから私の役目は歯車じゃないんだな(広島・超覚寺)
【仏教タイムス賞】
かんしゃくの くの字をすてて 日をくらす(東京・徳源院)
【文化時報賞】
意地の上にも三年(島根・円成寺)
【自社NOW賞】
「おばあちゃんは(おじいちゃんは)、なにになりたいの?」(小学1年生からの問い)/(三重・西恩寺)
【彼岸寺賞】
自分が思いつく理由づけだけで、人生は説明できるわけではありません(梶田真章)/(大分・西光寺)
【フリースタイルな僧侶たち賞】
NO WAR PLEASE Нет войне(福岡・永明寺)
【まいてら賞】
蒔かない種は咲かないが、望まぬ花が咲いたなら、昔その種を蒔いたのだろう(広島・超覚寺)
【お寺の窓口賞】
命の重さ 平和(大分・浄泉寺)
【寺子屋ブッダ賞】
人間みんな裁判官 他人は有罪 自分は無罪(大分・宝泉寺)
【ここより賞】
今日だけですよ(宮城・長稱寺)
【笑い飯哲夫賞】
疲れたら休めばいいのよ(鹿児島・顕證寺)