廃車のワーゲンバス活用、一風変わった「立体看板」は地元の人気スポット 設置した理由を聞いてみると…

山陰中央新報社 山陰中央新報社

 松江市馬潟町の自動車板金会社の軒先に、ひときわ目を引く立体看板が登場した。レトロな雰囲気な車の横で、作業員と思われる人形がポーズを取ったデザイン。通行する人や車から注目の的になっている。一風変わった看板を設置した思いを聞こうと板金会社を訪ねた。 

 早くも地域の人気スポット

 この会社は宍道湖と中海を結ぶ大橋川沿いの県道230号に面する「今川鈑金塗装」。自動車の板金塗装や修理整備に加え、専用の塗料でさまざまな質感を再現するカスタムペイントも手がける。

 看板は事務所に隣接する整備工場の壁に専用スペースを作り、10月に設置した。車部分は「ワーゲンバス」と呼ばれる車の一部で、丸いヘッドランプと前面が黄色と白のVラインになっている点が特徴。人形は青い作業服を着て、顔には防毒マスクを装着している。左手にスプレー缶を持ち、右手側にはなぜかサーフボードがある。

 会社前を通る県道は国道9号につながるため、通勤時間帯には多くの車が行き交う。多くの人の目にとまる上に、夕方以降は車部分のライトが点灯して辺りを照らすため、今では地域のちょっとした人気スポットだ。 

 廃品や使用品使いリメーク

 「通りがかった人が、うちがどんな会社なのかすぐ分かり、かつインパクトを与えられる物が作りたかった」と発案者の今川正樹専務(50)。

 今川専務は仕事ではもちろん、趣味でも車のカスタマイズをしている。数カ月前、なじみの客が乗っていたワーゲンバスが廃車になり「引き取ってほしい」と言われた。業界ではバスの部品を活用して机や台、オブジェにリメークするのが流行で、今川専務も「自社PRに活用できないか」と看板製作を思い付いた。

 バスの前面部分を取り外し、傷やへこみを修理した上で塗装し直すことで新品同様に仕上げた。人形は約5年前に県内の雑貨店で入手したものを活用した。元々はガソリンスタンドの給油機器を持った人形だったが、板金店のイメージに近づけるため、灰色だった服の色を自身の作業服と同じ青色に塗装した。さらに給油機器を塗装用のスプレー缶に持ち替え、実際に使ったマスクを装着させた。

 立体看板の完成後、客から「すごいね」との声をもらうようになり、立体看板のすぐ横に、社名を書いた袖看板も新たに設置した。今川淳一郎社長(52)は「多くの人は車を買った店で修理するため、一般の人にとって板金店は入りにくい。どういう店か一目で分かる斬新な看板ができてうれしい」と喜んだ。

 看板がつないだ新たな縁も

 今回の看板製作のために新たに購入したものは無く、全て廃品や使用品を活用した。今川専務は「物を大切にすることの大事さをアピールしたい」とも話した。故障した車を修理して再度、使えるようにする仕事のため社内全体で、使わなくなったものを再活用しようと努めている。

 今川美知代取締役(73)はグラスアートの製作が趣味。廃車の窓ガラスをキャンバスに、導線で鳥や花を形作ってさまざまな色のフィルムを貼った作品はまるで絵画のよう。今川取締役は「光が当たるととてもきれいでインテリアにはもってこい。ガラスも、捨てられるより使われた方が喜ぶと思う」と笑う。

 こういったPRが功を奏し、看板が新たにつないだ縁もある。看板を見て会社に興味を持った宮大工から「キャンピングカーの内装を担当してほしい」との依頼が舞い込んだという。これまでなかったような業種との縁ができたことに対し、今川専務は「コロナ禍でさまざまな取り組みをする会社がある。うちも看板を見た人から『面白いことをする会社なんだな』と思ってもらい、新たな縁につながればいい」と期待した。

 SDGsが叫ばれる中、廃品を活用して自社PRにつなげる取り組みは効果的に思える。それが人目を引く看板となれば、そばを通る人の楽しみにもなる。今川鈑金塗装の看板は、冬には人形にサンタクロースの服を着せるなど少しずつ変化を与える予定とのこと。今後も特徴的な看板から目が離せなさそうだ。

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