「持続可能なレストラン」大賞に輝いた兵庫・芦屋のイタリアン店、他店と違う取り組み方 オーナーに聞いた

山本 智行 山本 智行

 ハイソな街、兵庫県芦屋市においしくてカラダにも社会にも優しい名店がある。自然派イタリアン「BOTTEGA BLU.」がそれ。食を通じて持続可能な社会の実現に貢献しているとして11月に開かれた日本サステイナブル・レストラン協会主催の「Food Made Good Awards」の大賞に選ばれた。どんな取り組みをしているのか。オーナーシェフの大島隆司さん(47)に聞いた。

 JR芦屋駅から北へ徒歩2分ほどのところに、そのレストランはある。オープンは2010年。店内はテーブル席と奥のカウンター席に分かれ、20人ほどで満席に。一見どこにでもあるようなアットホームなイタリアンに思えるが、そんじょそこらのレストランとはひと味違った。

 実は11月14日に都内で開かれた「FOOD MADE GOOD Japan Awards 2022」(日本サステイナブル・レストラン協会)で栄えある大賞とサーキュラーエコノミー賞とのダブル受賞を成し遂げているのだ。オーナーシェフで料理研究家でもある大島隆司さんが少し照れくさそうに喜びを伝えてくれた。

 「素材を余すことなく生かし切ろうと、取り組んできた結果です。これからもこつこつと続けて行きたいです」

 このサステイナブル・レストラン協会はイギリスに本部があり、日本に入って来たのは昨年。まだ歴史は浅いが、より多くの飲食店やレストランがサステナビリティに配慮した運営ができるように支援しており、同アワードはイギリスや食通の街、香港でも開催されている。選出に際してはフードロスへの取り組みやフェアトレードはもちろんのこと、評価基準は250項目と事細かく、意識の高い料理人の励みにもなっている。

 一方、大島シェフは名古屋出身。ひとまず音楽の夢を傍らに置き、19歳でこの道へ。26歳からミラノ、ボローニャ、ブレシアなどイタリア5都市の本格リストランテで修業を積んできた。なかでも特筆すべきはイタリア料理界の巨匠とも呼ばれ、他界後に映画にもなったグアルティエロ・マルケージ氏に師事したことだった。

 「あるレストランで提供した料理を気に入ってもらったのが彼との出会いでした。彼はとにかく素材を大切にし、アイデアも凄い。私のシェフとしての生き方に強い影響を与えてくれています」

 店名「BOTTEGA BLU.」のボッテガは工房とか手づくりの意味で、実際に建物の上層部は小麦粉を一切使わないグルテンフリーの工房などにもなっている。ブルーには自身に対して「青二才とか、未熟者」という戒めを込めたもので「初心を忘れず、向上心を持ち続けて高みを目指していく」という決意を表している。

 もちろん、あの芦屋で不動の地位を築いているだけあって、味も絶品だ。それも当然で2016年にはイタリア料理コンクールで全国1位を獲得。7大会目にして関西から初めてという快挙でもあった。有名人がときどき訪れるのも納得だ。

 もっとも、SDGsとかサステナブルなレストランと聞くと、どこか堅苦しかったり、無理しているように感じられたりするものだが、この店の場合はとにかく自然体だ。使用する調味料は塩、コショウ、レモン、オリーブオイルの4種類だけでソースは手づくり。食材を生かし切り、おいしく仕上げることを真っ直ぐに追い求めているように感じられた。

 「力を入れていることは地産地消で、なるべくより近い距離のモノを仕入れるようにしています。あとは、おいしくてカラダにいいものを提供し、お客さんに喜んでもらうことです。それとスタッフに働きやすい環境を整えること。今回の賞もみんなの力でいただいたものです」

 厨房には大きな窓が設置されており、これは大島シェフが中からお客さんの食べている姿を確認するためでもある。休みの日は淡路島や明石などにひんぱんに足を運び、生産者との交流を深めているのも大島流だ。残り物はコンポストプラントで堆肥に替え、店の脇にある小さな畑に利用してもいる。

 今回のダブル受賞は、そんな取り組みが評価されてのものだが、最近では小麦粉や上白糖を使用しないスイーツも大人気。催事にも引っ張りだこ状態で、11月30日~12月6日は芦屋大丸、12月9日~14日までホワイティうめだ泉の広場、15日~21日は東京・東武百貨店池袋店、23日~25日は阪神梅田店に出店している。特にパンナコッタとティラミスがオススメ。料理ともども一度食べたら癖になる、はずだ。

◇「BOTTEGA BLU.」
兵庫県芦屋市船戸町3-27 三番館ビル1F
電話0797(35)7555
ランチ水曜日~日曜日12時~14時、ディナー火曜日~日曜日18時~22時、月曜定休

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