近年、企業におけるメンタルヘルスケアの重要性が強調されていますが、企業側に適切な対応やサポートを受けられる体制は整っているのでしょうか。転職経験がある全国の会社員(正社員)の男女1041人に退職理由について調査をしたところ、約8割の人が長時間労働や職場の人間関係など何らかの「ストレスが原因で退職」していたことが分かりました。また、従業員の退職を防ぐために企業が導入している取り組みに対しては、6割近い人が「退職を踏みとどまる理由にまったくならなかった」と回答したそうです。
株式会社マイシェルパ(大阪府大阪市)が、「社員の退職理由に関する実態調査」と題して2022年9月にインターネット上で実施した調査です。
まず、「退職した理由」を聞いたところ、「長時間労働・休日出勤などによるストレスのため」(32.7%)、「職場の人間関係や社長・上司との相性によるストレスのため」(30.2%)、「給与や残業手当など賃金への不満によるストレスのため」(24.5%)といった回答が上位に並び、上位3つのうち1つでも「ストレス」に係わる回答を抽出して回答者の総数で集計したところ、実に79.7%の人が何らかのストレスが原因で退職していたことが分かりました。
続いて、「会社に伝えた(人事・上司に伝えた、退職届に書いた等)退職理由」を聞いたところ、「別の業界・新しい職種に挑戦したい」(19.4%)、「詳細な理由は伝えなかった」(18.2%)、「働き方を変えたい(雇用形態・勤務時間など)」(11.6%)と続き、本当の理由と会社に伝えた退職理由とは異なることが判明。
特に前向きな理由を伝えた人のうち、「別の業界・新しい職種に挑戦したい」と回答した人では75.0%、「家庭の事情(出産・介護など)」では64.0%、「起業」と回答した人では60.0%が、実は「ストレスが原因」で退職していたことが分かったといいます。
次に、「退職した会社では、従業員の退職を防ぐためにどのような取り組みを行っていましたか」と聞いたところ、「ストレスチェック制度の導入」(24.4%)、「人事評価制度の整備」(18.9%)、「教育・研修制度の拡充」(15.8%)、「上司との1on1ミーティングなどの設置」(15.0%)といった回答が挙げられました。
一方、「結果的に退職に至ったものの、それらの取り組みは退職を踏みとどまる理由になりましたか」と聞いたところ、「まったくならなかった(思いとどまることはなかった)」(56.6%)が最も多く、「どちらともいえない(一度は思いとどまった)」(26.1%)と合わせると82.7%となり、それらの取り組みは退職を防ぐ対策として効果が出せていないことがうかがえたそうです。
最後に、「退職前に、本音の退職理由について信頼して相談できる相手は社内にいましたか」と聞いたところ、「いた」(39.0%)、「いなかった(適切な人がいなかった)」(37.3%)、「いなかった(社内の人間には本音を相談したくない)」(23.7%)という結果になり、61.0%の人が「相談できる人がいなかった」と回答しました。
なお、「相談できる相手が社内にいた」と回答した人に、「社内で本音の悩みを相談して後悔したことはありますか」と聞いたところ、「後悔したことはない」(67.7%)が最多だったものの、「悩みを理解してもらえなかった」(15.8%)、「相談内容が洩れた」(11.6%)、「悩んでいることに対して説教をされた」(4.4%)といった回答も挙げられたそうです。
また、「会社側に何があれば退職に至らなかったのか」については、以下のようなコメントが寄せられました。
▽抜き打ちチェックなどの各ハラスメント防止体制を強化して欲しい(20代男性/富山県)
▽上司が悩みの種なのに、本部の相談窓口を利用するにはその上司を通さないといけなかった。そういった体制の不備をどうにかすべき(20代女性/東京都)
▽カウンセリングできる人が欲しかった。また、部署が単一で異動できないことが嫌だった(30代女性/千葉県)
▽窓口の相談員が1人しかいなくて、自分と相性の合わない上司と仲が良かったため、相談したくてもできなかった。だから、相談窓口を複数人設置すべきだと思う(30代女性/大阪府)
▽情報漏洩などが嫌だったため誰にも詳細は話せなかった。他の会社などが私達の意見を管理してくれて、かつネットなどで意見を言う環境があれば助かる(30代女性/千葉県)
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調査を実施した同社は「従業員の退職は、企業にとっても大きな損失です。離職率を下げるため、適切な対応やサポートを受けられる体制を整えておくべきではないでしょうか」と述べています。