新しい飲食店を毎日紹介する人気ブロガー 1日100キロ移動、7店巡り…「どこよりも早く」情報もアツアツ!

京都新聞社 京都新聞社

 京都で新しくオープンした飲食店を、ブログで毎日紹介している男性がいる。その数、これまで2400店余り。さらに驚かされるのが、新しい店を「発掘」する独自の方法だ。ちょっとやそっとではまねできそうにない努力と情熱が、ブログの人気と信頼を支えている。

 このグルメブログは、「京都のお墨付き!」。ウェブ会社経営の白井貴史さん(52)=京都市北区=が、「ノーディレイ」のハンドルネームで運営する。東京出身で、大学卒業後は会社員生活を送っていたが、激務で体調を崩し、10年ほど前に母親の故郷の京都市へ移住した。

■開店祝いの花、工事中の建物をチェック

 学生時代からラーメンなどの食べ歩きが趣味。京都の街を知ろうと、さまざまな飲食店を巡る中、ふと思い立って2016年ごろからブログを書き始めた。ラーメン店、カフェ、定食屋、焼き肉店…。ランチのある新店舗を中心に毎日1カ所は取り上げ、メニューや実食レビュー、値段やアクセスなど幅広い情報を多くの写真を交えて掲載している。味やコスパ、店主の人柄といった観点から、お勧めの店も多数紹介している。

 新しい店を見つけるため、スクーターで街中をくまなく走るのが日課だ。走行距離は1日50~100キロにおよび、京都府内の北部や南部まで足を伸ばす時はさらに増える。路地など狭いエリアはひたすら歩いて回っている。

 注意深くチェックするのは、店先に飾られた開店祝いの花のほか、工事中の建物やテナントだ。オープンの告知が出るまで現場に通い詰め、工事の進み具合を確認し、独自のデータベースに反映させる。

 「飲食店だと分かると思わず小躍りしてしまう。その半面、おしゃれなカフェだと思っていたのに実際は美容院や個人宅だったこともあり、そんな時はめちゃくちゃ落ち込む」と苦笑する。

■客目線を重視「気持ちよく食事ができるか」

 徹底した調査に、当の店側が驚くこともある。フィンランド料理のカフェ「pohjonen(ポーヨネン)」(京都市上京区真盛町)のオープン翌日に白井さんが訪れた時のこと。路地に立地し、ほとんど事前告知していなかったため、店のオーナー立石えみさんは「『えっ、何で知っているのですか?』と思わず尋ねたほどびっくりした」と振り返る。その神出鬼没ぶりに、知り合いの間では「影武者がいる?」「いやいや、三つ子では?」といった声が上がるほどだ。

 日々の食事はもちろん、事前に調べた新店で。料理を味わうだけでなく、「気持ちよく食事ができるかどうか」など客目線を心がけている。ブログで紹介したいと思えば、店側に許可を取るようにしている。

 ランチを済ませた後にたまたま別の店を見つけてもう一度食べたり、多い日にはテークアウトを含めて7軒巡ったり。「昼にがっつりな分、朝と夜は基本食べない」。健康維持のため、毎朝のウオーキングも欠かさない。

 街を巡るのは夕方まで。少しでも早くブログで発信するため、帰宅後も記事の執筆や写真の編集で忙しい。公開後、すぐに他のグルメサイトが同じ店の情報を載せることもあるが、速報性に加え、自ら足を運んで取材した内容の深さには自信がある。ブログの閲覧数は月間100万ページビューにまで増えた。

■街の変化に敏感「地域を盛り上げたい」

 新型コロナウイルスの影響で多くの飲食店が打撃を受ける一方、新しい店も日々誕生している。「スクーターや徒歩で毎日街を回っていると人出がよく分かる。今年の夏あたりから出店数も一気に増えた」と指摘し、店の関係者から肌感覚の景気動向について尋ねられることも。

 「長年暮らした東京に比べ、京都は飲食店の数が圧倒的に少ない。大きな再開発もないけど、ミクロの視点では街の変化はたくさん。新規の店を紹介することで、地域を盛り上げたい思いもある」

 ちなみに、白井さんに話を聞いたその日も新規のラーメン店で食事し、その前にはオープンに向けて工事中の冷凍ギョーザの無人販売店を見つけたという。

 あらためて、その情熱は一体どこから? 「まだ知られていない店を自分の足で探すのが何より楽しいし、多くの人にブログも読んでもらいたい。いつまで続けられるか分からないけど、これからも新しい店をどこよりも早く見つけて、皆さんに届けられたら」

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