「ハラスメントによる離職」推計で年間約87万人…そのうち57万人が「理由を会社に伝えていない」

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2021年におけるハラスメントを理由とした離職者数は約87万人。そのうち約57万人が会社に伝えていない―。そんな調査結果が株式会社パーソル総合研究所が実施した「職場のハラスメントに関する調査」で判明したそうです。

調査は全国の20~69歳の就業者の男女2万8135人を対象として、2022年8月~9月の期間に実施されました。

まず、全回答者に「過去にハラスメントを受けた経験の有無」を聞いたところ、34.6%の人が「ある」と回答。また、過去5年以内にハラスメントの被害を経験した3000人に対して「被害の実態」について聞いたところ、「自分の仕事について批判されたり、言葉で攻撃される」(65.1%)、「乱暴な言葉遣いで命令・𠮟責される」(60.8%)、「小さな失敗やミスに対して、必要以上に厳しく罰せられる」(58.8%)といった回答が上位に並びました。

続いて、本調査の結果とオープンデータを基に、2021年の1年間において「ハラスメントを理由に離職」した人を簡易推計したところ、「約86.5万人がハラスメントを理由に離職」していたことが判明。そのうち57.3万人が退職理由としてハラスメントがあったことを会社に伝えられておらず、会社が把握できていない(暗数化している)ことも分かったといいます。

また、業種別では「宿泊業・飲食サービス業」(17.9万人)、「医療・福祉」(14.4万人)などでハラスメントを理由とした離職者が多いことがうかがえたそうです。

次に、「ハラスメントに対する会社側の対応」について聞いたところ、被害者が受けたと認識したハラスメントに対して「会社側が何らかの対応をした」割合は17.6%でした。その一方で、「認知していたが対応なし」(37.2%)と「認知しておらず対応もなし」(45.2%)を合わせると82.4%がハラスメントに対して未対応となっていることが分かりました。

また、会社側の対応に至った場合の具体的な対応内容については、「被害者の要望を聞いたり、相談にのってくれた」(40.8%)、「被害者に事実確認のためのヒアリングを行った」(40.2%)、「加害者に事実確認を行った」(38.1%)などの割合が高かったそうです。

さらに、「ハラスメントに対する被害者自身の対応」については、「社内の上司に相談した」(27.2%)、「社内の同僚(先輩・後輩含む)に相談した」(26.2%)が上位に挙げられた一方で、「特に何もしなかった」(24.4%)も4分の1を占めていました。

また、「周囲の人がハラスメントを目撃した後の対応」についても、「特に何もしなかった(=傍観行動をとる)」(41.4%)、「被害者の相談にのった/声をかけた」(40.7%)などが上位に挙げられていたそうです。

「属人思考の風土が強い組織と、ハラスメント発生率や会社・被害者の対応との関係」をみると、「会議などで同じ案でも提案者が誰かによって通り方が異なる」「トラブルが生じた場合、『原因が何か』よりも『誰の責任か』を優先する雰囲気がある」などの属人思考の風土が強い組織では、ハラスメントが発生しやすいといいます。また、会社の対応率は低く、被害者が「相談しても無駄だろう」と予期する相談無力感も高いことがうかがえたそうです。

最後に、「上司のマネジメントとハラスメントの関係」をみると、上司の多くは「飲み会やランチに誘わないようにしている」(75.3%)や「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」(81.7%)など、ハラスメントを回避するような行動を多くとっていることが判明。一方で、こうした上司の行動は、部下に上司との心理的な距離感を感じさせ、上司との距離感を感じている部下ほど、過去1年間の成長実感を得られていないことも分かったといいます。

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調査を実施した同研究所は「ハラスメント予防と対処は必要だが、防衛的な施策だけでは不十分だ。職場での対話的コミュニケーションを促進するようなマネジメントの訓練や、その余地を生み出せるような就業環境整備などによる『育成志向のハラスメント対策』が今まさに検討されるべきである」と述べています。

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【出典】
▽「パーソル総合研究所」/職場のハラスメントについての定量調査
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/harassment.html

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