「線路、山へ行く」? 駅のホームを延伸できない…せや、線路を動かしたれ! 驚きの秘策がわかる痕跡とは

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日本初の鉄道が1872(明治5)年10月14日に東京・新橋~横浜間で開業して150年の節目を迎えた。約1年半後には大阪~神戸間も開通している。鉄道は都市の形成や発展に大きな役割と影響を及ぼしてきた。

以前、JR元町駅(神戸市中央区)のホーム跡の「ひさし」の話題を紹介したが、その後、同駅ホームが現在の形状に変化した状況がよく分かる場所があるとの情報を得たので、あらためて現地を歩いてみた。

元町駅付近のJR神戸線(東海道本線)は上下4本の線路が通っており、同駅のホームは島式2面4線となっている。

旧国鉄時代、1960年代までは内側線(快速や普通電車が走る)の上下線に挟まれた島式のホームが1面あり、外側線(新快速や特急、貨物列車が走る)には上下それぞれの線路にホームが1面ずつの計3面4線の配置だった。

駅ホーム改良の理由は、高度経済成長期、乗客の増加に伴い車両の増結が必要になったのだが、各ホーム端部に改札口への階段があるなど、そのままでは延伸、拡幅が困難だったことから、ホームを新設、拡幅して対応することになったとみられる。

線路を山側に移す!?

ホームを延伸、拡幅するには、線路を順次、山側(北側)に移していく必要があった。

順を追って工程を記してみると、①〜⑤のようになる。

①  山側に上り(大阪方面)外側線の別線高架橋を新たに建設し、島式ホームを山側に拡幅する
②  上り内側線を旧上り外側線に移設する
③  下り(姫路方面)内側線を旧上り内側線に移設する
④  旧下り内側線があった部分に下りホームを拡幅する
⑤  最も海側(南側)にある下り外側線ホームを撤去する

以上のように線路を順次移設していった状況が確認できる場所がある。この付近の変遷に詳しい鳥瞰図絵師の青山大介さん(46)=神戸市西区=に案内してもらった。

まずは、元町駅東口のすぐ東側、鯉川筋をまたぐ「穴門架道橋」である。画像を見ていただきたいが、桁を支える「門」型の鉄柱の間に「T」型の鉄柱がある。これはホームを移設する際に補強用として設けられたという。同様に、右側(山側)の「門」型の右手には逆「L」型の鉄柱が追加設置されており、これが新設された上り外側線の桁を支えている。

西口側に回ってみる。改札口を出て、兵庫県庁や兵庫県警本部方面へ向かう狭い通路、階段があるが、この辺りで頭上を見上げると、上り外側線の高架橋が後から設置された状況がよく分かる。

さらに、ホームに上がれば、拡幅の様子が手に取るように分かる場所がある。下り(姫路方面)ホームの上屋を支える柱に注目していただきたい。画像を見ると、左右の柱の本数(間隔)が異なっていることに気付く。左側の支柱が元の上下内側線ホームの上屋を支えていた。その後、前述の手順③→④の段階で、旧下り内側線の跡にホームを拡幅した際に新たに設置された支柱は、左側よりも少ない本数で上屋を支えているという違いが見て取れる。

「高架は歴史を物語ります」と青山さん。いささかマニアックだが、普段通い慣れた駅や高架下の変遷を伝える「痕跡」を探し、都市の変化に思いをはせてみるのも悪くはないかもしれない。

(まいどなニュース・神戸新聞/長沼隆之)

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