「脱はんこ」の流れに負けるな!老舗はんこ屋さんが「どら焼き」を売り始めたワケ 本業の技生かしオリジナル焼き印も

京都新聞社 京都新聞社

 「脱はんこ」の流れが急速に進む中、京都市中京区の老舗はんこ会社が、どら焼きの販売を始めた。本業の収入減を補いつつ、商売の新たなノウハウを得るのが目的で、「体力があるうちに失敗を恐れず挑戦したい」と意欲を見せる。

 1912年創業の「京都インバン」。府内有力企業と多くの取引があり、府内や大阪などに5支店を構える。同社によると、新型コロナウイルスの感染拡大までは売り上げは伸びていたが、流行を機に減少。特にスタンプ型印鑑の需要が2割ほど減ったという。松原常夫社長(71)は「こんなに顕著に打撃が来るとは」とため息をつく。

 コロナ禍によるテレワークの拡大は、脱はんこの流れを急加速させている。2020年秋、国は行政手続きでのはんこ使用廃止を目指すと発表。府内の自治体にも広がりを見せている。さらに民間企業でもはんこを押すために出勤するのは不合理などという声を受け、電子決裁の導入が進む。

 社長は5年ほど前から、脱はんこの流れを予測し、新たな事業への参入を模索していたが、コロナ禍でいよいよ待ったなしの状況に。布団を丸洗いできるクリーニング店やシュークリーム店、本社ビルのテナント貸しなど検討したが、どれも実現には至らなかった。

 焦りを募らせていた昨年12月、知人が経営する大阪市のはんこメーカーが、どら焼きのフランチャイズ店「しあわせどらやき」の運営に乗り出すと知った。実際に食べてみたり、加盟店の売り上げや立地を調査したりして、契約を決断。6月中旬、新町通四条上ルのはんこ店の一角にどら焼き店をオープンさせた。

 店は祇園祭の放下鉾の町内にある。祇園祭期間中は多い日には1500個以上売れたといい、滑り出しは上々だ。さらに本業の技も生かし、祇園祭の文様と放下鉾の矛先をあしらったオリジナル焼き印が付いたどら焼きも期間限定で販売した。

 松原社長は「畑違いの商売でまだ先は見えないが、ただ待っているだけではじり貧になる。脱はんこの流れに負けない」と言葉に力を込めた。

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