日本はマシ?パリはガソリン1リットル=290円 「ガソリンスタンドが開いてるだけでラッキー」市民はあきらめ顔

山本 智行 山本 智行

 ガソリン価格の高騰が止まりません。これは何も日本に限ったことではなく、世界的な傾向で中にはイギリスのようにパニックに陥った国もあるほどです。筆者が9月末から1週間滞在したフランスの首都パリでもガソリン不足は想像以上に深刻でした。何しろ、市内のガソリンスタンドの3軒に2軒は「開店休業」という有り様。在庫がないからです。

 まさかの光景でした。ウクライナ情勢などを受け、ある程度は予想していましたが、花の都パリのエネルギー事情がここまで深刻だとは思ってもいませんでした。

 パリを訪れるのは10年ぶり4回目。メーンストリートのシャンゼリゼ通りはもちろんのこと、ふとした街角やメトロの通路にも芸術があふれ返っていました。芸術ってなんなんだ、とあらためて問われると困りますが、すべてがどことなくオシャレ。行き交う人のだれもがマスクなどしておらず、思い思いに自由を謳歌していましたが、このガソリン不足には驚きを隠せませんでした。

 滞在初日のことです。パリ市内をドライブした帰り道、現地に住む友人の車が周辺をあっちに行ったり、こっちに行ったりするので、最初は道にでも迷ったのだろうかと思って「どないしたん?」と尋ねてみると、必死でガソリンスタンドを探していたのでした。

 しかし、開いている店がなかなか見つかりません。信じられないことに営業しているのにガソリンそのものがないというのです。これは、何もこの日に限ったことではなく、確率的に開いているのは3軒に1軒程度。友人が嘆くのも無理はありません。

 「最近はずっとこんな感じ。開いてたらラッキーだよ。フランス政府はガソリンなどの燃料の店頭価格の割引制度を延長してくれたんだけど、それでも値段は高いまま。レギュラーガソリンは日本円で1リットル290円ぐらい。一部の地域ではガソリンがなくて、スクールバスが動かなかったり、1人1回20リットルまでと制限しているところもあるみたい。在庫がない上に、ストの影響で流通も滞っている」

 確か、9月初旬に訪れた韓国・ソウルも1リットルあたり200円を超えていたはず。それを考えると170円前後の日本はまだマシに思えますが、パリのガソリンスタンドがまさか開店休業状態になっているとは日本にいるときは思いもよりませんでした。

 しかし、これが実情です。今回、現地で知り合ったパリ在住40年の日本人男性にガソリン不足の実態を尋ねてみると、ぼやくことしきりでした。

 「この火曜日にパリ郊外に車で行こうとして、大変な目に遭いました。家の近くのガソリンスタンドは開いてそうだったので入ってみると休業。少し遠くのガソリンスタンドも休業でした。どっちも張り紙すらないんですから」

告知をするという習慣がない!?

 確かに、今回、私も感じましたが、パッと見は営業しているようで実は休業というケースがほとんど。しかも、この国にはどこか、おおらかなところがあり、お客さんに対して「本日休業」といった告知をするという習慣や考えがないのでしょう。ガソリンが供給できないなら、できませんと教えてくれないと。ほんと、困ったものです。

 で、先ほどの日本人男性は、その後どうなったのでしょうか。

 「最終的には高速道路に出て、工事中だったガソリンスタンドが開業しているのを覚えていたので、そこに入り、15分ぐらい待って、やっと給油ができました。ただし、そこのガソリンスタンドでは重油はありませんと、段ボールに手書きの文字で表示がありましたが…。その後は用事を終えて、高速道路でパリに戻ったところ、いつものように道路脇のガソリンスタンドでは本線にはみ出すほどの長い車列ができていました。こんな状態がいつまで続くんでしょうか」

 もちろん、これから寒い冬を迎えるパリ市民の嘆きはこれだけではありません。インフレも切実な問題のようです。

 「フランスは電力の80%が原子力発電のため、電気代はそれほど上がらないと思いますが、ガス代の次の請求書が心配です。隣国のドイツでは2、3倍に値上がりしているようですから。それとスーパーで買い物をすると、ウクライナでの戦争が始まる前と比べて、パンの値段が10%の値上げ、粉のコーヒーが2倍、一方で陳列台に並んでいる肉が半分ぐらいと、かなりの影響が出ています」

 パリ在住40年といえばもう立派なパリジャンでしょう。そのパリジャンはコロナ前にウクライナのキーウを楽しく旅したそうです。しかし、東部地方では確実に戦争の影が忍び寄っていたのに、国際社会は全く無視していたとのことでした。

 「私が泊まっていたホテルのレストランがいまはベットなどが運び込まれ、報道陣の宿舎になっており、悲しい気持ちになりました。早く平和な世の中になってほしいです」

 ちなみに、パリの物価が高いことは出発前からある程度分かっていたことですが、対ユーロに対しても日本円は強くなく、財布にはとてもこたえました。帰国直前、シャルル・ド・ゴール空港のスターバックスで注文したキャラメルフラッペチーノ特大の値段、いくらだったと思います?なんと、日本円で1209円でした。興味本位で特大サイズを注文した自分が悪いのですが、平和で程よくバランスの取れた世界を望みます。

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース