求職ママを悩ます矛盾…企業「保育園を決めて」保育園「仕事を見つけて」 ヘアサロンオーナーの取り組みに称賛の声

宮前 晶子 宮前 晶子

「昨日面接で「すぐ働きたいんですが保育園…無くて。いつから働けるとか言えないんです。すみません」と育児中の女性。仕事したくても待機児童、でも仕事が決まらないと預けられない社会の矛盾。子どもの居場所も親の居場所も無くなる。というわけで来年4月以降の中途採用を通知した。居場所をつくる。」

仙台を中心に、14店舗のヘアサロンを経営する伊藤博之|美容師30代からの働き方さん(@hironcare 以下伊藤さん)のつぶやきが、5万件ものいいねを集めました。

10月、11月は、多くの自治体が来年度の認可保育園入園の申し込みを開始し、書類や面接による審査を行います。働きたいから保育園に預けたいと考え、入園申し込みに挑んだママたちはここで大きな壁にぶち当たります。それが、伊藤さんも指摘する「仕事をしたくても保育園が決まっていないと採用されない」「仕事が決まっていないと、保育園が預かりを受け入れてくれない」という矛盾。

リプ欄には、この辛酸を経験した女性たちやこの問題に直面しているママからの声が殺到。

「この社会の矛盾!まだ続いているんやね。息子が赤ちゃんのとき、市役所で吠えた覚えがあります」
「仕事決まらないと保育園に預けられない。でも預けられなきゃ面接にも行けない矛盾。こんなんだから出生数もドンドン下がっちゃう」
「ウチも、待機児童経験者(2年)通える園を探すため引っ越しまでした」
「これで3回保育園落ちました。面接に行っても保育園は?と聞かれて、区役所の保育課では仕事は?と聞かれた」
など、切羽詰まった状況があぶり出されました。

「少子化って騒ぐ前に見直し必要なとこあるよね?と言いたい」
「ほとんど共働きなのに…企業側の頭は、いつまでも昭和」
「働きたいし、働く能力もあるのに働けないって、個人としても痛手なんですが、国としては物凄い問題」
「保育園も問題ですがその後の小1の壁小4の壁も」
と、国や自治体、企業の対策を憂う声も。

そんな状況のなかで伊藤さんの取り組みについては、「困ってる人のために、ホントに何が出来るのかを真剣に考えてる人ってどのくらい居るんだろう」「4月以降というのがいいですね。4月は慣らし保育や発熱で実際はほとんど休んでるママさん多い」と絶賛する人も。「子育て中で肩身の狭い思いをしている人には、私が日本の未来をつくっている、未来のママたちの道しるべをつくっていると胸を張って欲しい」と話す伊藤さんに、お話を伺いました。

子育てママはもちろん、みんなが働きやすい仕組みづくり

−−ツイートの中途採用の件、伊藤様にとって初めての経験ですか?

「実は3回目です。勤務先から産休育休中に退社を宣告された美容師を迎え入れたケースが過去にあります。彼女は、今も弊社で活躍してくれています」

−−採用を決定するまでに迷ったとも。結局採用に踏み切った理由は?

「私自身が3人の子どもがいて、待機児童でとても困った経験があるので、仕事だけでも早く決まっていれば本人にとって安心材料が増えるし、申請は年内にしなければならないだろうという事を想像できたからです。もちろん本人に誠実な姿勢が見られたからというのも大きいです」

−−保育園探しと仕事探しで苦労する現役ママや、20年・30年前に同じ経験をした方からのコメントも多かったですよね。

「ずっと自分自身が感じていた社会の矛盾、モヤモヤでしたが、こんなに多くの人たちも困っているんだ、と。これは、根深い社会問題だと改めて感じました。

“他人事ですが、私からもありがとうございます”という内容のコメントも多く、それも驚きでした。同じような状況で苦しんできた方、今まさに直面している方、今後に不安を抱えている方が多いという表れなんでしょうね。

弊社は「女性が安心して働ける環境」を築くために起業しています。今回、たくさんの反響やご意見をいただいたことで、このような採用や行動を通して社会に貢献する使命があると改めて感じました」

−−ヘアサロンは、女性の働き手も多いと思います。その一方で、育児中の保護者にとっては過酷な職場だとも想像できます。安心して働けるために工夫していることは?

「お子さんの急な体調不良によるお休みや保育園のお迎えのための早退は、“当たり前にある”という意識を、スタッフ全員持つことが大事ですね。でも、想いだけでは働きやすさは作れないのも事実。休む時にお伺いを立てなくていいというルールにしています。スマホで有給申請ができますし、早退時に有給の半日休も利用できるようにしています。

また、現場だけではなく、保育園に出す勤務証明や育休手当なども速やかに対応できるように、事務も常に知識をアップデート。 “今日、子どもの体調不良でお休みします”と当たり前に言える職場環境が理想ですね」

−−子どもの発熱などで早退を繰り返すこと、職場の人にその都度「すみません」と言うことに疲弊して、結局退職したという女性も多いのが現状。子どもがいないスタッフから、不満が出たことは?

「1度もありません。入社前に会社の理念である”女性が長く活躍できる環境”を共有しているのと、ママだけが優遇されるような環境にならないように配慮しています。例えばママ美容師が休む時に、誰かが過剰に責任や仕事を負担しなければいけなくなると、人間関係がうまくいきません。スタッフ同士の理解、様々な仕組みや工夫によってママだけに寄り添った制度にならないようにしています」

−−担当者の急なお休みもあると思いますが、お客様の反応は?

「お客様あってのサロンなので、お客様の理解は必要不可欠です。女性が安心できる職場を目指していることや、お子さんの体調不良での欠勤などは、包み隠さず誠実にお伝えするようにしています。ありがたいことに、多くのお客様からこの考えにご理解や賛同、応援をいただいて今があります」

−−子どもを持ちながら働くスタッフやお客様を数多く見てきた伊藤さんだからこそ、実現できたのだろうなと思います。

「僕自身が不妊治療で子供を授かったという経験があったり、海外での美容師経験を通して、日本の労務環境について考える時間があったり、夜中まで休みなく過酷な勤務状況を経験したりと、いろんな立場で働いてきた経験からヒントを得ています。
 とはいえ、1人ひとりの状況は違うので、スタッフやお客様の声から今もヒントを頂きながらより良い環境を目指すために、以下のような内容を目指しました。

【働く女性の罪悪感を減らす仕組み】
・残業なしで即帰宅
・産休育休妊活応援
・ミーティングなし
・日祝休みの美容室
・上司部下作らない
・有給申請スマホで
・店長・管理職なし
・会社イベントなし
・パート時間自分で
・流行りは追わない
・ブランク復帰応援
・家族行事を最優先

仕組みを作っていて気づいたのが、「子育て中の女性が働きやすい環境」というのは「誰にとっても働きやすい環境」だということ。この事実を多くの人と共有して、社会で理解されていくことを願っています」

■伊藤博之|美容師30代からの働き方さんTwitter @hironcare
会話のいらない美容室 mute  https://mute-hair.com/

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