『バカサバイバー』のED制作秘話と、ドラマにこめた想い 『あなたのブツが、ここに』制作統括に訊く

「今、リアルな“コロナ禍ドラマ”を作った理由」後編

佐野 華英 佐野 華英

 ヒリヒリするほどリアルなのに、なぜか観終わった後は「よし! 明日も生きよう!」と力が湧いてくる。「夜ドラ」『あなたのブツが、ここに』(NHK総合 月〜木22:45〜)はそんなドラマだ。制作統括の櫻井壮一さんに、今後の見どころなどをうかがった前編中編・後編の後編)

一一月曜日のED、ウルフルズの「バカサバイバー」に乗せてキャストが踊るキレッキレのダンスも大人気ですね。

櫻井壮一さん(以下、櫻井) なにしろ扱う題材がシビアなので、バランスを取って笑えるシーンも入れたいし、「観終わったときのカタルシス」がちゃんと付くドラマにしたいという思いが、企画がスタートした当初からありました。そんな中で「キャバ嬢の亜子と宅配ドライバーの亜子」を見せつつ、エンディングを楽しいものにしたいという話から始まって、演出部から「ダンスで見せるのはどうか」というアイデアが出ました。選曲については、「『バカサバイバー』なんてどう?」「ピッタリじゃん!」「いいね!」と、満場一致の即決です(笑)。みんなが知ってる曲だし、とにかく元気が出るし、歌詞のメッセージも含めて、これ以上にカチッとハマる曲はないと思いました。

一一EDを月曜日にだけ流すというのはどんな意図が?

櫻井 単純に毎日流すと尺が足りなくなる、木曜日は次週予告がある、という理由です。でもやっぱり、初回の印象ってとても大事で、第1話にあれを流せたのはよかったと思っています。「シビアな状況を描くけれど、こういうトーンでやっていきますよ」という“お知らせ”ができた。「レギュラー出演者は全員ダンスに参加していただきます」とお伝えしたところ、美里役のキムラ緑子さんは「本当にやるの〜?」なんておっしゃっていましたが(笑)、きっちり踊ってくださいました。キレッキレに踊れている人も、ちゃんと踊れていない人も含めてみんな映ってるのが面白いなと思います。ちなみに、振付をお願いしたakaneさん(編註:登美丘高校ダンス部の“バブリーダンス”の振付などで知られる)も、『おちょやん』を楽しんで観てくださっていたそうです。

一一名前が書かれ、積み上げられた段ボールの傍に立つ人物の数秒間のカットという「登場人物紹介」も印象的でした。

櫻井 番組のタイトルイメージを「段ボールに文字を書いて積み上げて作ったらどうか」という案が美術部から上がって、それがとてもよかったので、演出部のアイデアで役名テロップの代わりに本編でも使おうということになりました。各部署のスタッフがこのドラマを心から面白いと思って、それぞれに楽しんで作ってくれているのがありがたいです。

一一最後に、今後の見どころと、視聴者の皆さんへのメッセージをお願いします。

櫻井 メッセージ……と言えるような大層なものじゃないんですが。先の見えない毎日、大変な状況にある方が、まだまだたくさんいらっしゃると思います。僕らも、コロナがこれからどうなるのかわからないまま、何が正解なのかわからないままドラマを作っていました。辛い状況になったとしても、一生懸命、必死にやっていれば、いつかその人にふさわしい居場所が見つかる、という「願い」はこめたつもりです。不完全で不器用な亜子という主人公が紆余曲折を経て、やるべきこと、自分の進む道を見つけ、覚悟を決めていく姿を見て、わずかでも心が明るくなったり、「一歩進んでみようかな」という気持ちになっていただけたら、うれしいです。

『あなたのブツが、ここに』公式サイト

関西地方で9月24日(23日深夜)、25日(24日深夜)、26日(25日深夜)、第1話から一挙再放送が決定。「一挙再放送」はNHKプラスでも見逃し配信します。

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