和歌山の「アドベンチャーワールド」で暮らす、オスのジャイアントパンダ・永明(えいめい)が、9月14日に30歳の誕生日を迎えました。飼育下で生存しているオスの中で、世界で2番目にご長寿だという永明。人間に例えると約90歳と高齢ながら、2020年には娘の楓浜(ふうひん)が誕生し、飼育下で自然繁殖したオスの最高齢という記録を更新しました。
今では自身のこども16頭に加え、孫が23頭、ひ孫が3頭いるという永明のお誕生会の様子を取材してきました。
「日本一になったお父さん、世界最高齢のパンダになってほしい」
当日の朝は飼育スタッフから、新鮮な竹と「HAPPY BIRTHDAY」の形の氷文字のメッセージをプレゼントされた永明。その様⼦は公式YouTubeとInstagramにて無料でライブ配信され、報道陣ほか多くのファンが見守りました。
ファンとスタッフから「永明~!」と呼びかけられ、奥から登場した永明はゆっくりと竹と氷のプレゼントの方へ歩み寄ります。そして慎重に竹のにおいを嗅いでいました。じつは日本国内でも1、2を争うともいわれるグルメな永明。パンダはにおいでおいしい竹を見分けるのですが、永明は竹が気に入らないとポイッと投げてしまうこともあるそうです。
このあと運動場をじっくりとパトロール。やぐらの上に上がったり、なかなかプレゼントに手を付けません。しかしこの日の竹は、お誕生日のために用意したスタッフの選りすぐり。10分ほど行われたライブ配信の最後には、竹の所へやってきてお気に入りをゲット。そのままどっしりと腰を据えて、配信が終わってもおいしそうに竹を食べ続ける永明でした。
ライブ配信で司会を務めた、2歳の時に同パークにやって来た永明の飼育歴15年の飼育スタッフ・品川友花さんは「無事に30歳を迎えることができて、感慨深くうれしい。長生きして世界最高齢のパンダになってほしい。パークで28年間過ごしてきて、たくさんの子どもをもうけて日本一のお父さんになった永明。年をとった今でもかわいいところもあります。これからも応援してあげてください」と、30歳を迎えられたことを心から喜んでいる様子でした。
「飼育員として育ててくれたのは永明、恩返ししたい」
誕生日当日はパークの休園日でしたが、150名限定の特別イベント「EIMEI 30th」が行われ、事前にチケットを購入した永明ファン達が、パーク内で誕生日をお祝いしました。パンダラブ前には「永明」30歳 記念モニュメントも設置され、多くのファンが写真を撮影。同デザインのモニュメントが、成都ジャイアントパンダ繁育研究基地へも寄贈されたそうです。
永明に関わりのある飼育スタッフ3名によるスペシャルトークショーも開催。現飼育スタッフで永明歴5年目の中谷有伽さんは「相手を許容する心の広さを飼育スタッフにも向けて欲しい」としながらも「私を飼育員として育ててくれたのは永明。これからも色々教わって、恩返しもしたい」と話してくれました。
永明歴28年目、来園当時から永明を知る副園長の中尾建子さんは、永明を中国・成都に迎えに行った時のエピソードを披露。パンダを輸送用のオリに入れる時にはオリを警戒するため、何度も練習して慎重に行うのですが、永明はエサにつられてあっさりとオリの中に入ってしまったのだとか。「いろんな動物の輸送を見て来ましたが、あんなに簡単だったのはいまだ見たことありません」と、当時の思い出を話してくれました。
さらに、永明歴19年目の熊川智子さんは、「永明に教えてもらったことは、他のパンダの飼育にも生きています」と語ります。メスにやさしく、飼育員に厳しいという永明。3人のトークは笑いと永明愛にあふれていました。
父の永明に一番似ているパンダは…
現在、ジャイアントパンダの飼育下での世界最高齢記録は38歳。オスのパンダであれば、香港の「海洋公園(オーシャンパーク)」で飼育され、2022年7月に永眠した安安(アンアン)の35歳です。
老齢での飼育にはやはり苦労もあるようで、「年をとると歯が摩耗してくるので、竹の茎など硬い部分を与えるときは、あらかじめ割っておくようにしています」(品川さん)。また、天候に体調が左右されることも出てきているので、室内の温度管理にも気をつけているのだとか。冬場あまりに寒いときは、暖房をいれることもあるのだそうです。
普段はおなかがすいたら竹を食べ、満たされたらお昼寝というのんびりスタイルで過ごしているということで、こうしたストレスの少ない環境が長生きの秘けつなのかもしれません。夏場は少し食欲が落ちていたようですが、これから冬に向けては、竹の葉っぱがおいしくなるシーズン。永明の食欲も上がって来て、現在の体重は約110キロ。一般的なパンダの体重はメスが約100キロ、オスが約120キロなので、まずまずの数字ではないでしょうか。永明にはもっともっと健康で長生きして、ご長寿の記録を更新して欲しいですね。
現在パーク内で一番永明に似ているのが、気に入らない竹は意地でも食べないメスの結浜(ユイヒン)なのだとか。結浜も9月18日に6歳の誕生日を迎えます。11月には末っ子・楓浜(フウヒン)が、12月には双子姉妹の桜浜(オウヒン)と桃浜(トウヒン)がそれぞれ誕生日を迎えます。これからもパンダファミリーたちから目が離せません。
「アドベンチャーワールド」
住所:和歌山県西牟婁郡白浜町堅田2399番地
電話:0570-06-4481(インフォメーション)
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