「ゴールド免許に俺はなる」「事故でとぶぞ」車運転中、目に入る見覚えあるセリフ…ユニークな交通標語が話題

山陰中央新報社 山陰中央新報社

「ゴールド免許に俺はなる」。島根県内の道路の上方に設置された交通情報板に、どこかで見たようなセリフが表示されている。他にも数パターンがあるようだが、いずれも道徳の教科書のようなお堅い印象がある交通標語にしては随分と雰囲気が違っている。誰が考えているのか、気になって調べてみた。

マンガや流行ものを基に

国道や県道に設置された交通情報板は従来、島根県警本部が「飲酒運転根絶」「春の全国交通安全運動実施中」といった、交通安全に関する簡易な情報を表示する。県警本部によると、従来と違う交通標語の表示は、県警の交通企画課が2022年から、交通安全意識の高揚を図ろうと発案した。

標語は県内に16カ所ある交通情報板に順不同で表示される。「自転車も 乗ればかぶろう ヘルメット」「出会うとは 思っていない 事故と詐欺」という至って真面目な標語がある一方で、漫画キャラクターのセリフを基にしたものや時流を捉えたものもあり、知っている人を思わずくすりとさせる。

冒頭の「ゴールド免許に~」のセリフは人気漫画「ONE PIECE(ワンピース)」中の有名なセリフ「海賊王におれはなる」のパロディとみられる。他にも、漫画「鬼滅の刃」の人気キャラの口癖を使った「夜の道ド派手に行くぜ! 反射材」や、元プロレスラー・長州力さんの有名な発言を使った「全席シートベルトしなきゃ事故でとぶぞ!」といった、インパクトのある標語が見られる。「酒を飲んだらGoToせずにステイホーム」のように、時事用語や流行語を交えた標語もある。

運転中にこのような標語が目に入ると、思わず注視してしまいそう。安全には気をつけなくてはいけないが、従来の標語よりも印象に残るのは間違いない。

警察職員が本気で考案、選考

なぜ一風変わった標語を表示することになったのだろうか。県警本部交通企画課の野坂保則調整官は「幅広い人の目に留まりやすく懐に入りやすい、ユーモアを踏まえた標語を意識した」と狙いを話した。

野坂調整官によると、交通安全意識の高揚を図るため、2022年1月から1カ月間、県内全警察職員に向けて標語を募集した。応募総数は職員335人から計1048点。標語は交通部局の職員の投票で数点に絞り、最終的には交通部長が15点を選出した。中には1人で2点が選ばれた職員もいたという。選出した15点の標語の中から順不同で、3月中旬から交通情報板に表示している。

お堅い印象の交通標語から脱却し、注目を集めるようなものにするため、選考基準はインパクトのあるもの▽ユーモアのあるもの▽時流を捉えたものーの3点になった。交通安全に関わる標語のため、不快に思われないギリギリのラインを突いた。県内各署に、住民から「交通情報板を見た」という声が届くと言い、野坂調整官は「ふざけていると思われないか不安はあったが、今のところ県民からは好意的に捉えてもらっているようだ」と胸をなで下ろした。

特に漫画キャラのセリフは運転手だけでなく、同乗する子どもの目にも留まり、頭に残りやすい。将来、子どもが成長して車を運転するようになった時にも役に立つかもしれない。

全国区の標語に期待

ユニークな交通標語は全国でたびたび話題になる。

佐賀県警では同じく「鬼滅の刃」のネタを大胆に使い「全集中 安全の呼吸 壱の型 確認 事故多発 安全確認の徹底を!」と表示。岡山県警は米プロ野球で活躍する大谷翔平選手の「二刀流」になぞらえ「ゆずる!とまる!まもる!三刀流で事故ゼロ完全試合」との標語を情報板で流している。

ユーモアに振り切り過ぎな気もするが、いずれもインターネット上で記事になり、大きな注目を集めた。今回の島根県警の標語と比べても、よりインパクトとユーモアがあるように感じる。

 県警が交通標語を情報板に流すのは今回が初の試み。野坂調整官は「時期は未定だが、標語は今後も更新していく予定。さまざまなアイデアを入れながら交通事故防止に努めたい」と意欲を見せた。今後、より洗練されたユニークな標語が採用される可能性がある。運転の際は脇見運転にならないよう交通安全に気を付けながら、たまには情報板にも気を配ると、面白い標語が流れているかもしれない。くすりとして、ちょっと心にゆとりができそうだ。

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