同性間の不倫慰謝料請求はできるのか? LGBTQに関する法整備の問題点を弁護士が解説

平松 まゆき 平松 まゆき

 同性婚に関する訴訟があり、札幌地裁では「同性婚を認めないのは憲法違反」と判断したが、大阪地裁では「憲法違反ではない」と逆の判断があった。LGBTQに関する法整備はどのようになっているのか。かつて歌手デビューも果たした平松まゆき弁護士にQ&A方式で解説してもらった。

 Q 近年LGBTQに関する話題は事欠きませんがジェンダーに関する法律関係はどうなっていますか。

 A 法律は改正したり整備したりするのに時間を要するため、裁判例が先んじて判断をしつつあります。例えば同性婚についてですが、2021年3月、札幌地裁が「同性婚を認めないのは法の下の平等を定めた憲法14条に反して憲法違反」と判断したことは話題になりましたよね。ところが、今年6月に大阪地裁は「同性婚を認めなくとも憲法違反ではない」と逆の判断をしました。まだ社会のコンセンサスが得られていないということなのでしょう。そもそも異性婚にこだわらない方も増えていますし、婚姻制度については今後も活発な議論が望まれます。

 Q 同性婚が認められないと、法的観点からはどういう問題があるのでしょう。

 A 婚姻するということは、同居して扶養しあう、不倫はしない、といったみなさんが夫婦なら当然だと思っている数々のことが「義務」として法的に位置づけられます。また、夫婦ならどちらか一方の医療上の措置について病院で一緒に話を聞いたり、同意することができますし、さらに亡くなった場合には相手に財産を遺すことができます。税制上の優遇もありますね。しかし、婚姻が認められないとこうしたことが当然には認められません。そこでパートナーシップ制度を導入する自治体も増えていて、その数は全国で200を超えますが、この制度をもってしても法的な問題が解決されるわけではありません。

 Q 同性同士だと不倫の慰謝料はもらえないということですか。

 A いえ、そんなことはありません。でも慰謝料請求が認められるようになったのは、実は最近なんですよ。2021年2月16日の東京地裁判決は、同性間の不倫についても不貞行為にあたると判断して慰謝料請求を認めました。それ以前にも請求を認める裁判例はありましたが、裁判所は概ね同性カップル間の不貞行為を否定する傾向にありました。2021年にもなって、この裁判例が「画期的」と評されたりするという現実があります。

 Q LGBTQの方の相談は多いですか。

 A 相談件数は決して多くありません。世の中は変わってきたとはいえ、やはりまだまだ理解が不十分で、LGBTQの方は生きづらさを感じているのではないかと思います。例えば最近の法律事務所では、相談受付票から性別選択欄をなくしたり、「男」「女」「非回答」という受付票にするところも増えてきているようですが、法テラスという国が設置した法律相談機関では、いまだに「男」「女」の2択です。しかし、そういう社会に悩まされているからこそ弁護士に相談しに来る方もおられるということに、われわれ弁護士も思いを至さなければならないと思います。

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