はじめて買ったマニキュアでセルフネイルする喜び…LGBTの「男性」がつづった投稿が話題に

中将 タカノリ 中将 タカノリ

はじめて買ったマニキュアでセルフネイルする感動をつづったLGBT「男性」の投稿がTwitter上で話題になっている。

投稿の主は「note」などウェブ上でエッセイストとして活動するいちとせしをりさん(27歳)。

いちとせさんのツイート

「27歳男性、人生で初めて自分の力でマニキュアを買い、あまりの楽しさに休日ひたすらセルフネイルしてました。一生懸命やったので沢山褒められたいし、沢山見てほしい。」

投稿からは願いをかなえることができたというポジティブな印象しか受けないが、いちとせさんが別につづった「note」を読むとマニキュアを買うまでにはさまざまな葛藤があったようだ。一般的な女性であればたとえ初めてでも、マニキュアを買うことにそこまで苦労や抵抗はないだろう。しかし、LGBTのいちとせさんにとってはそれが大きなハードルとなって立ちはだかっていたわけだ。

今回のツイートの経緯についていちとせさんにお話をうかがった。

中将タカノリ(以下「中将」):いちとせさんは生まれた性別は男性ですが、メンタルは女性なんですね。

いちとせ:昔から可愛らしいものに興味があり、大人になるにつれて「女性」として生きる自分を求めるようになりました。その流れでお化粧、マニキュアやワンピースなどの洋服を好むようになりました。その想いもずっと「note」で書き続けてきました。

中将:今回、いちとせさんが初めてマニキュアを買いにいこうと思ったきっかけをお聞かせください。

いちとせ:ずっと欲しがっていたマニキュアですが、実際にはなかなか自分で買うことが出来ずに月日が流れていました。売り場に行っても緊張してしまい、買うまでに至らないんです。そんな中「note」で知り合った友人にマニキュアをプレゼントされ、勇気をもらったのが今回の行動のきっかけになりました。今回もそんなに順調にいったわけではないのですが……そばを通った高校生が察して「これがいいですよ」と声をかけてくれてどうにか買うことが出来ました。

中将:周りの方の善意が大きな勇気につながったんですね。反対にいちとせさんのツイートや「note」に勇気をもらったという方も多いようです。今回の大反響についてどう感じておられますか?

いちとせ:反響にもたいへん勇気をいただきました。私のような立場の人の思いを知っていただき、みんなが性別に関係なくお洒落やファッションが楽しめるようになればいいなと思います。また、女性だから化粧やマニキュアをしないといけない、男性が化粧をしていたら素晴らしいといった強要もなくなればといいなと思います。カミングアウトという言葉を使わずとも、誰もが好きなもの、好きな姿を語れる社会になればいいですね。

中将:買ってきたマニキュアでネイルをしてみた感想はいかがでしたか?

いちとせ:正直、自分の中では納得のいく仕上がりではありませんでした。それでも楽しさが溢れてしまい、ツイートしました。予想の何倍も難しかったです。いただいた言葉の中にはあたたかいアドバイスが多く、もっと綺麗に仕上げられるよう頑張ろうと思いました。

   ◇   ◇

■いちとせしをり
「note」などウェブ上を中心にエッセイストとして活動。美しく繊細な描写が評価され、これまでに「# 君のことばに救われた 特別賞」、「キナリ杯 アカルク賞」を受賞している。定期購読マガジン「涙と栞の化粧台」更新中 。

今回紹介したエピソードについては

▽「ツイートがバズったわたしは、口紅を買えていない」
https://note.com/liegirl_1chan/n/n8fe99294daf6

▽「男のわたしが人生で初めてマニキュアを塗ったら、夢が大きくなった話」
https://note.com/liegirl_1chan/n/n980b85bd0227

▽「自分の力でマニキュアを買おうと思ったら、初めて会った高校生に助けてもらった話」
https://note.com/liegirl_1chan/n/n73a95810ee42

などの「note」記事にくわしい。

   ◇   ◇

今回、周囲の助けを得ながら一つの願いをかなえることが出来たいちとせさん。しかし過去には同性の恋人がいることが知れただけで職場で差別的な扱いを受け、退職に追い込まれてしまった苦い経験もお持ちだという。社会はまだまだLGBTに対して冷淡で無理解。他者の人格を尊重することは最低限のマナーと言っていいと思うが、社会で見聞きする限り、実際にそれを身に付けられている人は驚くほど少ないのだ。

数えきれないほどの問題を抱える現代社会。それらの多くは根本的には同質で、他者への偏見や不寛容を起因としている。LGBTへの理解を深めることは社会全体をより良くすることに繋がると思うのだがいかがだろう。

ご興味のある方はぜひいちとせさんのTwitterや「note」をご覧になって、LGBTの当事者がどのように暮らし、どのような視点で社会を見つめているのか知っていただきたい。

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