メロスは後悔した。運動をせねばならぬと決意した…パロディ「走って痩せろメロス」が話題 「原作に忠実でワロタ」「他人事ではない」

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

「走って痩せろメロス」と、Twitterに投稿したのは、あをにまる(@aonimaru_games)さん。その小説が面白いと話題です。

あをにまるさんの小説――と言っても、タイトルでお分かりかと思いますが、これはかの文豪・太宰治の名作「走れメロス」のパロディ。

「走れメロス」とは、直情で正義感の強い青年メロス、情に厚いメロスの友人セリヌンティウス、人間不信な暴君ディオニスらが登場し、友情や信じることの素晴らしさを描いた感動物語であることは、誰もが知るところですよね。

しかし、そんな「走れメロス」のタイトルに“痩せろ”と付くだけで、イメージががらりと変わってしまいます。

健康診断に来た肥満の中年男性の物語!?

あをにまるさんの描く「走って痩せろメロス」は、なんとインドア派で酒とお菓子をこよなく愛する中年男性であるメロスが健康診断を受ける話。

さらに、ディオニスやセリヌンティウスは、メロスが健康診断を受けるメディカルセンターの医師と、原作とはまったく違う設定で登場しています。

健康診断のため十里離れたメディカルセンターにやってきたメロス。しかし、検査の数値があまりに高いと看護師に言われたメロスは激怒し、診察室にいる医師・ディオニスに詰め寄ります。しかし、そこで懐にワンカップとチー鱈を入れていたことが発覚してしまい……。

という、原作とは打って変わって、ダメ人間を描いた話に。しかしながら、メロスがそんなどうしようもない人物に描かれているにもかかわらず、自分の私生活や健康診断の結果を思い出したりして、どこか他人事とは思えない方も多いのではないでしょうか。

この小説が紹介されたツイートのリプ欄にも、多くの反響が。

「···カップ麺のお湯を注いだ後に見るんじゃ無かった」
「糖尿持ちの私はこのツイートをブックマークした。己への戒めの為に」
「さすがに健康診断に酒持ち込みは怒られる」
「激怒して、血圧上がるの草」
「メロスは激怒した。この一文で盛大に吹く日がくるとは思わなかったwww」
「ちゃんと原作に忠実でわろた」

また、「オーディオブックにしたい!」「書籍化して欲しいのですが」という人も。パロディでありながらも、原作の文体や物語のテンポの良さはしっかり活かしつつ、爆笑物語として見事に作り変えている、あをにまるさんの創作性の高さには、たくさんの絶賛の声が寄せられています。

「走れメロス」をはじめ、多くのパブリックドメインをパロディ化

作者であるあをにまるさんに聞きました。

――「走れメロス」をパロディ化するとは、斬新な発想ですね。どのように思いつかれたのでしょうか?

あをにまるさん:私は元々、小説投稿サイトのカクヨム様にて、「今昔奈良物語集」という、パブリックドメインの名作や昔話を現代奈良を舞台にパロディ化した短編集を公開しています。その次回エピソードを考えていた最中、ふと奈良ネタ以外でひとつ短いものが思い付いたので、Twitterに投稿をさせて頂いた次第です。

――さまざまな作品をパロディ化されているんですね。今回、題材に「走れメロス」を選んだのは?健康診断と絡めようと思ったいきさつも教えてください。

あをにまるさん:やはり、数多の文学作品の中でも太宰治の「走れメロス」は世代を問わず、圧倒的な知名度を誇る作品ですので、元ネタのわかりやすさという点では随一でした。また最近、私も勤務先での健康診断があったので、それが発想のきっかけでもあります。……ちなみに実は私も、昨年と比べてほんのりと体重が増えていたため、この作中の話は割と他人事ではないかも知れません。

――実は私自身も、身につまされる思いがしました。さすがに健康診断前に酒を飲んだりはしませんが…。物語は、医師にキレられるところで終わっていますが。この後どうなったのかも気になります。

あをにまるさん:冒頭で「メロスは後悔した」と、返ってきた健康診断の結果を見てショックを受けている描写がありますが、その直後は「『たまには』運動せねばならぬと決意した」と続くため、意志の弱さが既に若干垣間見えております。本気で痩せようとする人は、「そのうち」ではなく、「今日から」すぐに食事制限やジム通いを始めるような気がします。願わくば、このメロスが末長く健康であらんことを……。

――メロスに馳せる思い…それは私たち自身にも返ってくる願いなのかもしれませんね。今回の「走れメロス」をはじめ、多くのパブリックドメインの作品をパロディ小説にされているあをにまるさんですが、執筆にあたって気をつけていることや、心がけているポイントなどはありますか?

あをにまるさん:パブリックドメインの名作は、小説、舞台、漫画、CMなど、すでにありとあらゆる媒体でパロディ作品が多く創られております。そのため私は「健康診断」や「奈良」など、敢えてかなりニッチなテーマにすることで、なるべく他の作品とネタ被りを起こさないように心がけております。

  ◇  ◇

あをにまるさんは、Twitterや小説投稿サイト・カクヨムにて、さまざまなパブリックドメインのパロディ小説を公開されており、「ファンキー竹取物語」が株式会社はてな主催のコンテスト「はてなインターネット文学賞」大賞を受賞するなど、注目を集めています。

また、小説執筆以外に、フリーゲームの公開・製作も行っているとのこと。現在、奈良の歴史上の人物をヒロインした乙女ゲーム「なら☆こい」や、「確定申告を頑張るRPG」といった、歴史や税金の仕組みについて楽しく学べるゲームの開発をされているそうです。

「私個人が趣味で制作しておりますので、進捗はかなり遅々としたものですが、今後も引き続きなるべく多くの方々に楽しんで頂ける作品の制作に取り組んでまいりたいと思います」と、制作にかける想いを語るあをにまるさん。

さらに、「もしこういったアイデアに興味を持って下さる企業・団体様がおられましたらぜひ、お気軽にお声掛けなどをいただければ幸いです」とも話されていました。

■あをにまるさんのTwitterはこちら
 →https://twitter.com/aonimaru_games

■あをにまるさんのパロディ小説集「今昔奈良物語集」はこちら
 →https://kakuyomu.jp/works/1177354054892320251

■「ファンキー竹取物語」はこちら
 →https://kakuyomu.jp/works/16816700426703762022

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