「風呂のお湯一面に浮いていた」「透明瓶が真っ黒に」 京の都を悩ませる外来生物

京都新聞社 京都新聞社

 京都市伏見区の一部で住民を悩ませていた外来種のアリ「アルゼンチンアリ」の根絶作戦が大詰めを迎えている。生息域を囲い込む形で薬剤を置き続け、住宅街では1年以上姿が見られなくなった。残る生息場所は2カ所に絞られたが、繁殖力が強いだけに再拡大の懸念も根強く、府は「油断できない」と気を引き締めている。

 アルゼンチンアリは1993年に広島県で初めて見つかり、現在は12都道府県で確認されている。毒はないが繁殖力が強い。わずかな隙間からでも屋内に侵入するため、「風呂のお湯一面にアリが浮いていた」といった生活被害が出ていた。「透明な瓶を真っ黒に覆い隠す」ほど大きな群れを作り、在来種のアリが追いやられて生態系が乱れることも懸念されている。

 伏見区では2008年に初確認され、府や市、住民、国が連携し、宇治川とその派流に囲まれた一帯で対策を展開してきた。生息状況を調べつつ、アリが持ち帰って巣全体に効果を広げる殺虫剤を毎月1回、地域全体で一斉に設置して駆除を続けてきた。

 府によると、砂糖を含ませた綿を30分間置く調査で、12年には最大千匹以上が集まる場所もあったという。それが住宅街では21年1月以降、1匹も見つかっておらず、全体でも派流と宇治川が交わる2カ所で最大でも50匹程度が確認される状態にまで収まってきたという。

 ただアルゼンチンアリは、一つの巣に複数の女王アリがいる上、縄張り意識がなく、巣の引っ越しも頻繁に行うため封じ込めが難しいとされる。環境省によると、日本で根絶できたのは静岡県と東京都大田区の2例にとどまるという。

 府自然環境保全課は「一度いなくなった場所でも、また侵入して増えることもある。安心せずに対策を続けていく必要がある」と強調。根絶に向け、今後は2カ所で集中的な防除を検討していくという。

アルゼンチンアリ 南米中部原産。体長約2・5~3ミリで茶色っぽく、在来種のアリより細身なのが特徴。冬眠せず一年中活動する。物資などと共に移動してきたとみられ、飼育や運搬が禁止される特定外来生物に指定されている。

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