2024年導入予定の「医師の働き方改革」…7割の医師が「労働時間がどのような影響を受けるか把握していない」

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2024年に予定されている「医師の働き方改革」。勤務医の時間外労働に上限規制が設けられるなど、長時間労働になりがちな医師の働き方の適正化を目指していますが、当事者となる医師自身はどのような考えを持っているのでしょうか。全国の医師に聞いたところ、7割の医師は「医師の働き方改革」以降に自身の労働時間がどのような影響を受けるかを把握していないことがわかったそうです。

株式会社エムステージが「医師の働き方改革についてのアンケート」として2022年6月に実施した調査で、医師転職求人サイト『Dr.転職なび』、医師アルバイト求人サイト『Dr.アルなび』に登録する20~70代の会員医師1276人から回答を得たといいます。

まずはじめに、「2024年から医師の働き方改革の適用が始まることを知っていますか」と聞いたところ、78%が「知っている」、22%が「知らない」と回答。2024年4月まで残り2年を切る中で、まだまだ認知度が高いとは言い切れない状況が窺えたといいます。

医師の働き方改革では、医師の時間外労働について「原則、年960時間。例外として救急医療現場などでは年1860時間」の上限規制が設けられます。そこで、「労働時間の上限規制の内容を知っていますか」と聞いたところ、「だいたい知っている」(39%)、「あまり知らない」(37%)、「全く知らない」(15%)、「詳しく知っている」(9%)となり、内容をよく知らない医師が全体の半数以上を占めたといいます。

また、医師の働き方改革により労働時間の上限規制が設けられることで「2024年以降の自身の労働時間上限が何時間となるか」については、70%が「知らない」、30%が「知っている」と回答し、自身の労働時間がどのような影響を受けるかを把握していない医師が全体の7割を占める結果となりました。

医師の労働時間上限の制限に大きく関わってくるのが、勤務する医療機関の「宿日直許可」の取得状況です。宿日直許可がある医療機関であれば、その許可の範囲内で宿日直の業務時間が原則的に労働時間とみなされません。

そこで、「宿日直許可の基準や内容を知っていますか」と聞いたところ、「あまり知らない」(39%)、「全く知らない」(28%)、「大体知っている」(26%)、「詳しく知っている」(7%)という結果になり、「あまり知らない」と「全く知らない」を合わせて約7割が自身の労働時間上限の管理に関わる「宿日直許可」について理解していないことがわかったそうです。

なお、常勤先が「医師の時間外労働・休日労働の実態を正確に把握しているかどうか」については、「把握している」(54%)、「把握していない」(32%)、「分からない」(14%)という結果に。さらに、「常勤先における勤怠管理の方法」については、「手動のタイムカードで打刻」(40%)が最も多い回答となりました。また、「自己申告で記入」と「勤怠管理されていない」を合わせると、常勤先による勤怠管理がされていない医師が35%に上る結果となったそうです。

「常勤先での働き方改革が進んでいると思いますか」と聞いたところ「まだ進んでいないが、今後は進むと思う」(46%)、「あまり進んでおらず、今後も進まないと思う」(29%)、「進んでいる」(25%)という結果になり、今後の改革へ期待を寄せる医師が多いものの、約3割の医師は今後も進まないと思っていることが窺えたといいます。

そして、常勤先での働き方改革について「まだ進んでいないが、今後は進むと思う」「あまり進んでおらず、今後も進まないと思う」と回答した医師に「働き方改革を進めるために、どのようなことが必要か」と聞いたところ、「医療機関の意識改革」(557人)、「医療機関の制度見直し・整備」(366人)、「医療機関による、労働状況などの現状把握」(349人)といった回答が上位に並びました。

「医師の働き方改革」について期待していること、提案、感想などについては以下のようなコメントが寄せられたそうです。

【収入の確保】
▽労働時間だけでなく適正な金額の給与の支払いについても同時に整備されなければ、ただの減給になると懸念している
▽常勤先の給料が少なく、外勤や当直バイト等で補填している。今後、バイトが十分に出来なくなる場合には、対策を考えなければと思っている
▽真面目に適用したら大学病院は間違いなく崩壊する。大学病院の給与改正とセットでしないと、皆辞める
▽労働時間が短縮されてもやるべき仕事量が減らないなら、収入が減る分だけ、仕事に対するモチベーションは下がる
▽給与を下げようしていることに腹がたつ
▽公務員であってもアルバイト可能にしてほしい

【適切な勤怠管理、時間外手当】
▽自己研鑽という名の時間外労働が心配
▽労働内容は変わらないのに勤務時間だけを減らすことはできないのだから、給与がつかない時間外労働が増えて、見た目上は勤務時間が上限以内に収まっている状況になる
▽働き方改革に則るように時間外を制限して、かえって無償労働を求められるようになった
▽早朝のカンファレンスや就労後の医局会が時間外にならない
▽時間外は満額しっかりつけて欲しい。気持ち的にも辛くなる
▽連続勤務に対する罰則を規定する
▽非常勤医として数か所を担当している医師の正確な労働状況は、本人以外誰が管理するのだろうか

【柔軟・段階的な対応】
▽杓子定規に実施することを強要せずに、弾力的に実施していけばよい
▽働きたい者は働けば良い。働きたくない者は働かなければ良い。一律に規制するのではなく、自由に選べるようになれば良い
▽強制的に労働制限されると、収入の低下を招くケースもあり、ある程度自己決定を伴う流動的なものにしてほしい
▽公立病院などは医師の勤務体制が旧態依然の硬直的なものであり、柔軟性のある勤務形態を取れないため、結果として人材の流出を招いている
▽そもそも医療機関で他人の命や生活を背負っている中、時間外申請できる上限など時間で区切る意味も分からない。ボランティアで重い責任を負えなど、是非やめていただきたい

【医師体制・業務体制の整備】
▽主治医制の廃止。複数主治医制度が広まれば良い
▽夜間休日における救急体制の地域連携
▽診療にほぼ無関係で無意味な書類を簡略化し、書類に揚げ足を取るだけで業務を圧迫する審査会という無駄を今すぐやめること
▽当直、オンコールが嫌で、それらが無い仕事にした。当直は規制されると思うが、オンコールについても定義や規制をしてほしい
▽運用面でやりくりする働き方改革ではなく、人員配置などの構造変化を伴った改革になることを期待する

【医療の質向上に期待】
▽医療の質の向上に繋がればよい
▽1人医長など個人に負担がかかることは、減る傾向になると良いのではと思う

【経営者や患者の意識改革】
▽働き方は経営者の認識がカギになるので、情報が多方面から出て周知されることを望む
▽医師は聖職でなく労働者であることの再確認が必要と考える
▽時間外受診を減らすなど、患者側にも変化してもらわないとならない

【医療集約につながる】
▽医師を確保できない病院が廃院になれば、全体として医療費を削減できる
▽小さな医療機関が人手不足で廃院すれば、ひいては医療の集約化となる

【改革は難しい/期待していない/意識していない】
▽改革は困難
▽現場とかけ離れたところで議論されている
▽医師がいないので無理だと思う
▽患者サービスが低下する
▽医療機関に権限を持たせれば、結果改革にはならない
▽フリーランスで自由にやっているので、あまり意識していない

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なお、「労働時間による影響で働き方を変えたいと思ったことがありますか」と聞いたところ、57%が「思ったことがある」と回答。また、「働き方を変えたい」と思った経験のある医師に「働き方を変えたいと思った際に取った行動」を聞いたところ、「転職して、勤務先を変えた」(44%)が最多となった一方で、「何も行動せず、我慢した」(29%)という回答もあったそうです。

ちなみに「その他」の回答では、「裁判を起こした」(50代女性・その他の専門)、「労働基準監督署に相談した」(50代男性・その他の専門)、「留学を決めた」(30代男性・外科系)、「フリーランスになった」(40代男性・その他の専門)などが挙げられたといいます。

また、今後転職を検討することがあった場合に「転職先を選ぶポイントとして医療機関の働き方改革への取り組み状況を重視しますか」と聞いたところ、「重視する」(38%)と「まあ重視する」(48%)を合わせて86%の医師が「重視する」と回答しました。

続いて、「医師の働き方改革に関する情報収集を行う手段」を聞いたところ、「インターネットの記事」(934人)が最多に。ちなみに「その他」の回答では「医師会」「新聞」「ニュース」などが挙げられたものの、「全く入手していない」(50代男性・精神科ほか)、「どうせ何も変わらないから、知らない」(30代男性・その他の専門)といった声も挙がっていたそうです。

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【出典】
▽株式会社エムステージ

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