「いつでも白いスカートが履ける」出血の悩みから解放された更年期の患者 ホルモン補充療法はかかりつけ医とよく相談を

ドクター備忘録

川口 惠子 川口 惠子

更年期になると卵巣から分泌されるエストロゲンが低下して様々な不快な症状が現れます。更年期症状の改善に行っているのがエストロゲンを補充するホルモン補充療法(HRT)です。エストロゲン投与によってホットフラッシュ、発汗、不眠、記憶力低下、性交痛、関節や四肢の痛み、目や口腔の乾燥などを改善し、皮膚のコラーゲンを増加し、骨粗鬆症の防止に役立ちます。またエストロゲンには抗うつ作用があるので気分も明るくなり、やる気がでてきます。ただし本当の鬱病ではHRTだけでは不十分で精神科や心療内科での治療が必要です。

HRTをする場合、まずどのようなエストロゲンを用いるか医師と相談します。大きく分けて、飲み薬とパッチやジェルといった皮膚から吸収するタイプがありますから、自分にあったものを選択しましょう。また、必ず黄体ホルモンを併用しなければなりません。エストロゲンは1950年代にアメリカで若返りの薬として中高年の女性の間で大流行しました。ところが1970年代になって、エストロゲンの服用を続けると子宮体癌が増えることが分かり、すっかり人気はなくなってしまいました。しかし黄体ホルモンを併用するとHRTをしていない人よりも体癌の発生率が減少することが分かり、HRTは再び更年期治療の主役になりました。

エストロゲン、黄体ホルモンの投与法は
(1)周期投与 エストロゲンを投与し、後半にエストロゲンと黄体ホルモンを併用する方法でこの場合投与後に出血があります。
(2)連続投与 初めからエストロゲンと黄体ホルモンを併用し続けます。この場合月経のような出血はありませんが少量出血がしばらく続きます。
(3)エストロゲン単独投与 子宮のない人にしかできませんが当然出血はありません。
に分けることができます。どのようなホルモンを用いてどのような投与法にするか自分に合った方法を探しましょう。

月経痛や過多月経に悩むOさんがクリニックに来られたのは41歳の時でした。超音波検査をすると、彼女の子宮には多数の筋腫があり、血液検査では高度の貧血がありました。ゴロゴロと無数のジャガイモが集まったような子宮で子宮摘出をしなければいけない状況でしたが、「手術はしたくない」と月経を止める薬を繰り返し使用していました。しかし次第に筋腫は大きくなり妊婦と間違われるようになりました。

44歳の時、彼女は嫌々ながら子宮摘出術を受けました。あまりにも筋腫が多すぎて残す部分がなかったのです。しかし彼女は術後すっかり元気になりました。「もう出血がなくて楽ですわ。いつでも白いスカートを着れるし、いつでも旅行にいけるし。もっと早く手術をしたらよかった」とうれしそうに話してくれました。そんな彼女が49歳になって「最近カーっと熱くなり、汗が出てフラフラするんです」と言ってやってきました。

更年期になると月経が不順になりますが、彼女には月経がありません。血中のホルモンを測定すると更年期状態でした。「エストロゲンを補ってあげたら楽になると思いますよ。子宮がないから黄体ホルモンを併用する必要もないし、子宮のない人のHRTはとてもやりやすんですよ。手術をするのは大変だったけれど人生何が幸運か分からないですよね」と私が言うと彼女は笑いました。彼女の症状はエストロゲン投与で直ぐによくなりました。

どのようなHRTをするか、どのくらいの期間HRTを続けるかなどは各人各様です。かかりつけの先生と相談しながら進められるのがいいと思います。 

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