「昔は7月に冷房なんて使わなかった」経験が落とし穴に!? 熱中症「屋内は大丈夫」は危険 知っておきたい予防法と対処法

山陰中央新報社 山陰中央新報社

 7月半ばを過ぎ、梅雨明けしたものの蒸し暑い日が増えてきた。全国的に複数人が熱中症で搬送される報道を目にするようになり、熱中症の原理や注意することを島根大医学部救急医学講座の山田法顕准教授(41)に聞いた。

 山田准教授は救急医学が専門で救急隊員の教育に約10年携わってきた。岐阜大医学部付属病院でドクターヘリ部門長を務めた経験もある。

 これからの時期がピーク

 山田准教授によると、熱中症とは「高温の環境下で体に適応障害が起きた状態」。人には体温を調節する機能があり、気温や運動によって体温が上がった際、皮膚の血流を増やしたり、発汗したりして熱を飛ばすことで体温を下げているという。

 体温が高い状態が続くと、体温調節がうまくいかず体に熱がこもったり、発汗による水分不足で細胞や臓器へ十分な血液が届かなくなったりする。頭痛や目まい、吐き気を引き起こし、重症の場合は意識を失い死亡することもある。

 熱中症発生のピークは梅雨明けの時期から7月の中旬ごろ。山田准教授は暑くなり始めの時期は冷房機器を使わない人が多いため「身体機能、生活習慣ともに暑さに適応できていない時期が一番危険だ」と警鐘を鳴らした。まさに今の時期が一番、注意しなくてはならない。

 熱中症=屋外、運動 という認識変えて

 熱中症にならないためにはどういった点に注意すればよいのか。山田准教授は「『熱中症は暑い屋外で激しい運動をしている人がなる』という印象を持つ人が多いと思う。まずはこの意識をあらためてほしい」と強調した。

 山田准教授によると、熱中症は約10年前までは多くが屋外で起こっていた。ここ数年は温暖化の影響もあってか屋内での熱中症が増加し、特に高齢者が暑い中でも冷房機器を使わずに熱中症になることが多いという。

 高齢者は若い人と比べると体温調節機能が鈍い上に、人によっては「屋内だから大丈夫」「10年前は7月に冷房機器なんて使わなかった」と思い込み、冷房機器を使わず、熱中症になってしまうケースがある。山田准教授は「熱中症は屋内で日常生活を送っているだけでも起こりうるということを認識しなければならない」と話した。

 一般的に言われる水分や塩分のこまめな補給ももちろん有効だ。しかし、まずはいつでも誰でも熱中症になりうるという、意識の部分から変えることが重要のようだ。

 症状が現れたら

 対策をしても、天候の変化や体調によっては熱中症になることがある。熱中症になってしまった場合の対処方法も知っておきたい。

 山田准教授によると、最も重要なのは症状が現れた時点で、一刻も早く暑い環境から離れること。屋外であれば屋内に入る、屋内にいるならば冷房機器を使ったり、水分を取ったりして体を冷やすことが重要。氷パックを血流が多い脇の下に挟むと、効果的に体を冷やすことがきるという。

 目まい程度なら軽症だが、頭痛や吐き気がする場合は中等症以上のため、山田准教授は医療機関での受診を勧める。自分で水分を摂取できなかったり、意識を失ったりした場合は迷わず救急車を呼ぶべきだと助言した。

 全国では体育の授業中に児童が熱中症で搬送されるケースがあった。文部科学省は体育の授業ではマスクを外すことを呼びかけ、山田准教授も「屋外、特に運動をする時はマスクを外した方がよい」と支持する。山陰両県で増加する新型コロナウイルス感染を防ぐためにマスクは有効だが「マスクはその場の環境に応じて適切な着け方をしていく必要がある」と話した。厚生労働省も屋外では人との距離(2メートル以上を目安)が確保できる場合や距離が確保できなくても会話をほとんど行わない場合はマスクをする必要はないとし、熱中症の防止を呼びかけている。

 山田准教授は「熱中症はどんな環境でも起こりうるもの。暑いと感じたらすぐエアコンを使い、油断せずに夏を過ごしてほしい」と念を押した。

 このほか、山田准教授は気象庁と環境省の「熱中症警戒アラート」が日本は気温30度前後で発令されるのに対し、イギリスは同様のアラートが25度で発令されることを教えてくれた。30度を超えると真夏日と呼ばれるが、気温は目安でしかなく、自分が暑いと感じたら我慢せずに対策をとることが重要になる。

 気温が高い日はできるだけ外に出ず、屋内でも暑ければきちんと冷房機器を使う。8月になればさらに気温が高くなることが予想されるため、できる範囲で対策し、自分や家族が熱中症にならないように気をつけたい。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース