体温調節機能が働かなくなる熱中症と、血管内に血栓ができる脳卒中。全く異なる病気ですが、症状に共通点も多いといいます。吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――夏など、暑い日が続くと注意が必要なのが熱中症です。改めて、熱中症とはどのような症状なのか教えてください。
気温の高い場所に長時間留まり、水分も取らずにいると体温がどんどん上昇します。するとめまいや頭痛、吐き気を催すことも。最終的には体温調整ができなくなり、意識を失って倒れてしまう。これらの症状をまとめて「熱中症」と呼びます。
――熱中症と脳卒中の症状はよく似ているといわれますが、本当なのでしょうか?
はい。どちらもぼんやりしたり、意識障害を起こしたりするほか、吐き気やめまいといった症状が出るのも同じ。一見似ているのです。
――では、どちらなのか見極める方法はありますか?
脳卒中では半身麻痺が発生しますが、熱中症では起こりません。なので、顔や腕のしびれ・麻痺、ろれつが回らない、力が入らないといった症状が出た場合は脳卒中を疑ってください。
――夏は汗をかくため、体内の水分が失われて「血液がドロドロになっている」と聞きます。
脳卒中は暑い夏または寒い冬に多いなど、季節が影響する病気なのでしょうか?
諸説ありますが、発症の頻度に季節は関係しないと言われています。ただ、脳卒中の重症患者が冬に増えることは事実。脳出血や心臓から来る血栓症などは急な気温の低下、つまり寒さによるものが多いのです。
――それでは、夏に脳卒中を予防するにはどのようなことに気をつければよいでしょうか?
熱中症と同じく水分補給です。「血液がドロドロになる」というのは、体内の水分が減少し、血液の濃度が濃くなっている状態。細い血管ほど詰まりやすくなり、血管の通りが悪くなるため血圧も低下します。すると、ますます血液が体全体に行き渡らなくなってしまうのです。
――高齢者の方には、夜に何度もトイレに行くのが嫌で、就寝前に水分を控える人も多いようですね。
はい。実は、寝ている間にもたくさん汗をかいているので、発汗量を上回る水分を摂取することが大切です。エアコンをつけていても、汗はかいているもの。枕元にペットボトルを置いておくのがおすすめです。
――汗といえば、屋外で働いている方などが扇風機の付いた作業服を着ているのを見かけることがあります。どのような効果があるのでしょうか?
風によって体温が下がるため、熱中症になるリスクは下げられると思います。ただ体温が下がるということは、汗をかいて水分は失われているわけです。だからこそ、こまめな水分補給を心がけてください。
◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科