偏食で愛想ナシの保護うさぎをお迎え 決め手は「じっと目を見てくれた」こと、新しい家族に「大事にされる喜び」を知る

岡部 充代 岡部 充代

 大阪市に暮らす中谷圭樹さん、裕美子さん夫妻にとって、ゴエモンくんは2代目のうさぎです。昨年10月に先代のドンちゃんを亡くし、間もなく出会ったのがゴエモンくんでした。

「うさぎならペットロスも少ないかと思っていたのですが、うさぎもなつきますし、9年近く一緒に暮らしたのでね。ドンちゃんが亡くなったときは2人で泣きました。ドンちゃんはペットショップで迎えたのですが、“保護うさぎ”の存在と譲渡会があることを知って、リバティさんを訪ねたんです」(裕美子さん)

 ゴエモンくんは元保護うさぎ。警察で保護され、愛護センター経由で『一般社団法人LIBERTY(リバティ)』(代表・藤田敦子さん)にやって来ました。リバティはうさぎについて正しい知識を広めようとパネル展や専門家を招いてのセミナーなど啓発イベントを開催しているほか、保護・譲渡活動も行っています。保護当時の名前は「しょうがくん」でした。

「引き取ったとき土色で、しょうがのような色をしていたので。汚れていたのもあったし、栄養状態も悪かったんでしょうね。センターにいるときも、うちに来てからも何も食べなくてかなり苦労しました。病院では異常なしと言われたので、恐らく精神的なものだったのでしょう。その頃のしょうがくんをひと言で表現すると『無』。警察に保護された経緯は分かりませんが、一度も大事にされたことがないんだろうな、という印象でした」(藤田さん)

 しばらくすると、人が見ていないときなら野菜を食べられるようになり、少しずつ環境にも慣れていきましたが、“偏食”は続き、牧草もお値段お高めのものしか食べなかったとか。「愛想もなかったから、なかなかご縁がなくて…」(藤田さん)、リバティ滞在期間は1年3か月に及びました。

新しい未来へ

 そんなしょうがくんに中谷夫妻から声が掛かったのは昨年11月のこと。他に気になる子がいて譲渡会に足を運んだそうですが、圭樹さんはしょうがくんの“目力”に引き込まれました。

「気になっていた子は触ろうとすると逃げたんです。でも、しょうがくんは我慢していたのか、大きくて特徴的な目を見開いて、歌舞伎の“見得”のごとく私をじっと見ていました。その目を見て、『この子、勝負しとるな』と思ったんです」(圭樹さん)

 その日は決めかね、2度目の訪問時もまだ最初の子が気になっていたそうですが、しょうがくんがリバティに引き取られた経緯などを聞き、「何とかしてあげたい」とトライアルを申し込みました。

「スタッフさんの一人が『この子は変わると思う』と言ってくださったんです。リバティのスタッフさんはボランティアの方含め、うさぎ1匹1匹のことを本当によく把握していて、丁寧に説明してくださいました。だから、その言葉も信用できたんです。しょうがくんは苦労してきたんだろうし、うちで新しい世界を見せてあげたいなと」(裕美子さん)

「もしかすると、私をじっと見ていたとき、『新しい未来がある』と感じていたのかもしれません」(圭樹さん)

好物は小松菜とりんご 

 11月27日にトライアルスタート。圭樹さんがゴエモンと名付け、専用スペースには歓迎のプレートも掲げられました。藤田さんから教えてもらった高級牧草などを食べ、新しい家族と問題なく過ごしていたゴエモンくん。ところが年明け1月11日、突然、眼振と斜頸の症状が見られました。

「仕事から帰ってケージを開けても出て来ず、見た目に分かるほど揺れていたので、慌てて病院へ行きました」(裕美子さん)

 診断結果はエンセファリトゾーン症。幸い、投薬で症状は治まり2月に正式譲渡となりましたが、「少し慣れかけていたのに、つかまえて強制給餌をしないといけなくて、私の姿を見ると逃げるようになってしまいました」と裕美子さんは残念そうに振り返ります。それでも時間の経過とともに中谷家に馴染み、リビングに出てきて走るようにもなりました。悪さは一切しないそうで、「ドンちゃんはいろいろ噛んだりしていましたが、ゴエモンは何もしません。おとなしくて本当にいい子です」(圭樹さん、裕美子さん)

 今では食欲も出てきて、一番好きなのは小松菜の葉っぱ。時に白菜や水菜も食べ、りんごも好物だそうです。ブラッシングなどのケアのため定期的にうさぎ専門ショップにも通うというゴエモンくんは、「大事にされるってこういうこと!」と気づいたに違いありません。

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